24日に行なわれた競馬のG1有馬記念は、引退が決まっていたキタサンブラックが勝利し、日本競馬史上最多タイとなるG1での7勝目を挙げた。

26日放送、関西テレビ「キタサンブラックからの贈り物」では、JRA歴代賞金王に輝いてレースから去った日本一のサラブレッドに携わった人々が想いを語った。

調教師の清水久詞は、4年前に初めてキタサンブラックを見たとき、「まさか勝つなんていう気持ちはそれほどなかった」と明かした。今ほどボリュームがある馬ではなかったからだ。実際、キタサンブラックのデビューは同世代の馬に比べると遅く、3歳になってからの2015年1月だった。

才能を開花させてからも、キタサンブラックは一流馬が集まるグランプリで勝てなかった。かつての経験から「馬の体つきを見て判断する」という信念を持つ清水調教師は、長距離のレースでこそ持ち味が発揮できると確信。菊花賞への出走を決断する。疑問の声もあった中で菊花賞を制し、清水やオーナーの北島三郎に初のG1制覇をもたらした。

そして2016年、キタサンブラック武豊騎手と出会う。当時、落馬による負傷から本来の騎乗ができない状況にあった武にとって、もがき続けていたときに舞い込んできたチャンスだった。

「はっきりとしたコンビもいなくて、厳しい一年になるかなと思ったところでこうやって声をかけてもらって、この馬は大きいですね。僕の騎手人生にとってもね」

春の天皇賞では、一度は最終直線で抜かれながらも逆転勝利した。「根性あるからね、ひるまなかった」と称賛した武は、キタサンブラックに「競馬のシンプルなところを改めて感じた」と明かす。

「馬自身がすごいシンプルに、ただ走って、レースも正攻法というか、速く走れば先頭でゴールインできるんでしょって感じの走りをしてくれる」

年度代表馬に選ばれ、名実ともに現役最強馬の座を手にしたキタサンブラックは、2017年も順調に勝利を続けていたが、6月の宝塚記念でまさかの惨敗。年内での引退が決まった。

「自分で馬を見て、体を見て、育てていく」。敗戦を通じて原点に立ち返った清水の調教で、キタサンブラックは10月の天皇賞で復活を遂げる。史上5頭目となる天皇賞の春秋連覇を果たすと、万全の状態でクリスマスイブの有馬記念へと臨んだ。

最後の恩返しとして「なんとしても勝たせたい」というホースマンたちの想いに応え、キタサンブラックはクリスマスイブの日に行なわれた有馬記念を制し、引退に華を添えた。

最後まで見事に駆け抜けたキタサンブラックに、武は「最高のプレゼントですよ。こうやってみんなと喜べるっていうのがね。キタサンブラックがみんなを笑顔にしてくれたので。最高のプレゼントをいただきましたね」と感謝する。

清水調教師も「良い財産ですから、今後調教師を続けていくうえで、どこかで必ずこの経験が生かされるときが来ると思いますので、しっかり忘れないようにしておこうと思います」と笑顔で語った。