ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 今年も有馬記念(中山・芝2500m)がやってきました。

 毎年触れているように、「ホースマンの夢」である日本ダービーが、競馬関係者にとって最大目標のレースとなりますが、馬券を買うファンにとっては、1年の「総決算」となる有馬記念こそ、最も勝ちたいレースであり、このレースに勝って気持ちよく1年を締めくくりたいのではないでしょうか。

 普段は馬券を買わない方々も注目する”ドリームレース”。まさしく師走の風物詩と言えますね。

 ただ今年は、有馬記念のあとにも競馬開催日があって、しかもGIレースが組まれているため、少し拍子抜けの感があります。反面、有馬記念で今年の競馬が終わるわけではないので、例年とは違って「これが最後……」というプレッシャーを感じることなく、馬券を購入できるのではないでしょうか。

 やはり、1年最後の馬券は的中させて年を越したいもの。ゆえにこれまでは、その年の最後のGIである有馬記念においては、どうしても守りの馬券を買ってしまう方が多かったかもしれません。そういう意味では、今年は有馬記念のあとにGIがまだあるので、思い切った勝負ができそうですね。

 さて、今年の有馬記念(12月24日)。話題の中心は、ここでラストランとなるキタサンブラック(牡5歳)です。

 二冠馬ドゥラメンテと同世代で、故障に泣いた同馬に代わって、古馬王道路線を牽引してきました。人気も常に上位に推され、今年も大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)から前走のジャパンカップ(11月26日/東京・芝2400m)まで、出走したGI5戦すべてで1番人気でした。

 そして、今回の有馬記念のファン投票でも、2位サトノダイヤモンドに4万票以上の差をつける断トツの1位でした。これで、昨年の宝塚記念からグランプリレースのファン投票では4戦連続で1位を獲得。自他ともに認める”スターホース”と言えるでしょう。

 ただ、これだけの実績を上げて、人気に応える走りを見せているのですが、僕はどうしても「この馬は強い!」と思えたことがないんです。それがまた、この馬の強さなのかもしれませんが、”絶対的な強さ”というものはずっと感じていませんでした。枠順やペースなど、いつも何かに恵まれたレースをしているように見えてしまうんです。

 実際にこの秋も、出遅れて「万事休す」と思われた天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)では、インを突いたことが功を奏しましたが、あれは決して狙いどおりではなく、一か八かのギャンブルだったと思います。実力があるからこそできる芸当とはいえ、ラッキーだったことは間違いなく、”運”に恵まれた面が多分にあったことは確かでしょう(まあ、出遅れた”不運”とで相殺という見方もできますが……)。

 続くジャパンカップですが、昨年は1000m通過が61秒7と、世界的な高額賞金レースとしては考えられないようなスローペースとなり、キタサンブラックが快勝しました。しかし今年は、1000m通過が60秒2。それでも速いとは思いませんが、ある程度流れたことで結果は変わって、キタサンブラックは3着にとどまりました。

 もちろん、極悪馬場で激走した疲れもあったかもしれませんが、「1強」と称されるような強い馬であれば、それでも勝つのだと思います。

 だからといって、「弱い」と言っているわけではありません。ラストランを勝利で飾る可能性は大いにあると思っています。ファンの多い馬ですから、勝ったほうが喜ぶ方も多いだろうし、感動的なフィナーレとなるでしょう。そんなことを思えば、応援したい気持ちは十分にあります。

 しかしながら、キタサンブラックは過剰人気になるでしょうから、その分、他の馬のオッズは高くなるわけです。馬券的な旨味を考えると、他の馬に食指が動いてしまいますよね。

 ライバル視されているのは、まずはジャパンカップでキタサンブラックを破ったシュヴァルグラン(牡5歳)。この馬もまた、オーナーが”大魔神”こと佐々木主浩氏ということもあって、人気のある馬です。

 ただ不思議と佐々木氏が持つ馬は、ヴィルシーナやヴィブロス、そしてシュヴァルグランも、GIを勝つときは意外と過剰人気にならないことが多いんですよね。そして今回も、ジャパンカップを制した直後のわりには、人気にならない雰囲気となっています。

 ジャパンカップが初のGI制覇であること、また同レースではキタサンブラックにマイナス要素が多かったことで、再び逆転するのは難しい、と見られているのでしょうか。

 確かに前走のジャパンカップでは、シュヴァルグランは枠順もよく、展開もドンピシャで恵まれた部分は多かったと思います。しかし、恵まれたから勝った、ということではありません。それまでも、不運があって勝てなかったことが多々ありましたから。

 それこそ、3着に敗れた昨年のジャパンカップはそのいい例です。大外枠によるコースロスが大きく、内容的には勝ったキタサンブラックと遜色なかったと思います。

 そう、この2頭は枠順や流れひとつで勝敗が分かれるほどの、差のない存在だと、僕は見ています。

 そんな2頭を脅(おびや)かす馬はいるのか……。

 期待がかかるのは、スワーヴリチャード(牡3歳)でしょうね。

 ジャパンカップでは、今年のダービー馬レイデオロが前述2頭に割って入ってきました。そのダービーでレイデオロに迫ったのが、スワーヴリチャード。前走のアルゼンチン共和国杯(1着。11月5日/東京・芝2500m)を見る限り、レイデオロ同様、夏を越して大きく成長したようですし、大仕事をやってのけても不思議ではありません。

 さて、今回の「ヒモ穴馬」ですが、今年は4頭出走する牝馬の中で、ルージュバック(牝5歳)を取り上げたいと思います。


有馬記念に挑むルージュバック。悲願のGI制覇なるか

 3歳時にもこの有馬記念に参戦し、そのときは10着に敗れています。それから2年ぶりの挑戦で、今回は違った結果を残してれくるのではないか、と見込んでいます。

 前述したとおり、一昨年の3歳時にも有馬記念に出走したルージュバック。牝馬でありながら、昨秋も毎日王冠(1着)から天皇賞・秋(7着)、ジャパンカップ(9着)と古馬王道路線に果敢に挑んできました。結果こそ出ていませんが、それだけの能力を秘め、陣営の期待度が高いということでしょう。

 そして今秋も、牡馬混合のGIIオールカマー(9月24日/中山・芝2200m)から始動し、見事な勝利を挙げました。その後、今年は王道路線ではなく、牝馬限定のエリザベス女王杯(11月12日/京都・芝2200m)に駒を進めて、悲願のGI制覇へ期待が高まりましたが、結果は9着と大敗を喫してしまいました。

 とはいえ、牝馬限定戦特有の、先行勢に有利な遅いペースにハマッてしまっただけで、その能力はまったく出し切っていないと思います。もしかすると、この馬は牝馬限定の緩い競馬よりも、牡馬一線級相手の厳しい競馬のほうが、力を発揮できるのかもしれません。

 今回の鞍上は、勝ったオールカマーと同じ北村宏司騎手に戻ります。オールカマーでは、好位の内で我慢して、直線で内から伸びて差し切るという、今までに見せたことがなかったレースぶりで快勝しました。

 これは、手が合う証拠だと思います。大外から豪快に伸びてくる昔のイメージを払拭し、オールカマーと同じ内容の競馬が再びできれば、強力牡馬相手でも一発あると思いますよ。

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