現役最強馬キタサンブラック(牡5歳)が、いよいよラストランを迎える。

 3歳クラシック戦線から、常にチャンピオンシップ路線を突き進み、積み重ねてきたGIタイトルは6つ。大きなアクシデントもなく、いつしか同世代の二冠馬の存在すら霞んでしまうほどの名馬へと成長していった。

 この秋は、天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)から始動し、ジャパンカップ(11月26日/東京・芝2400m)、そして有馬記念(12月24日/中山・芝2500m)と、秋の”古馬三冠”に臨んで引退というプランを打ち立てて最後の戦いに挑んだ。

 初戦の天皇賞・秋は、超のつく不良馬場。さらに、出遅れという不運に見舞われた。だが、そうした困難にめげることなく、”ライバル”サトノクラウン(牡5歳)以下をねじ伏せるようにして見事な勝利を飾った。

 続くジャパンカップは、自身の持ち時計を1秒以上更新する走りを見せた。しかしながら、シュヴァルグラン(牡5歳)の完璧なレース運びと、今年のダービー馬レイデオロ(牡3歳)の勢いある走りの前に屈して、3着にとどまった。

 はたして、最後の有馬記念では有終の美を飾ることができるのか――。


有馬記念で引退するキタサンブラック

 過去2年も有馬記念に臨んだキタサンブラック。一昨年の3歳時が3着で、昨年の4歳時が2着だった。順番でいけば、今度は1着になる番ではある。

 有馬記念の年齢別成績を見てみると、過去30年では3歳馬11勝、4歳馬10勝、5歳馬8勝、6歳馬1勝。3、4歳馬に比べると5歳馬はやや分が悪いが、過去5年では5歳馬が2勝していて、いずれもこの有馬記念が引退レースだった。

 また、キタサンブラックは今年、天皇賞の春秋制覇を遂げている。これまでに、同年の天皇賞・春秋制覇を果たした馬は4頭いて、その4頭はいずれもその年の有馬記念に出走。その成績は、1勝、2着2回、着外1回となっている。

 一方、過去30年において、天皇賞・秋の勝ち馬で、その後のジャパンカップで負けたあと、有馬記念に出走した馬は12頭(※ジャパンカップ1着入線から降着のブエナビスタは除く)いる。その成績は、2勝、2着2回、3着1回、着外7回と、あまり振るわない。

 キタサンブラック自身の状態についてはどうか。ここまでの臨戦過程から推察してみると、若干不安がある。今年の宝塚記念(6月25日/阪神・芝2200m)では、まさかの9着惨敗。それは、春のGI戦線における激戦の疲れが出たものと見られ、この秋もかなりタフなレースが続いているため、最後にもうひと踏ん張りできる体力が残されているのか、という心配があるからだ。

 この春は、異例とも言える坂路3本というハードな追い切りも行なっていたが、この秋はそこまでの本数をこなすことはなくなった。無論、体力面を考慮してのことだろうが、年齢的な衰えもあって、それだけ激しい追い切りを消化できる状態ではなくなっているのかもしれない。

 キタサンブラックのラストラン。取り捨ての判断はさすがに難しい。

 デイリー馬三郎の吉田順一記者は、まずキタサンブラックのローテーションに着目し、こう語る。

「大阪杯→天皇賞・春、天皇賞・秋→ジャパンカップ、ジャパンカップ→有馬記念など、古馬の主要なGI戦線は中3週で行なわれることが多く、それに合わせた基本的なルーティンについては、厩舎サイドも作りやすいというメリットがあります。そして、キタサンブラックは前走から中3週でレースに臨んだ実績が過去に6回あり、その戦績は次のとおりです。

◆3歳時=スプリングS1着、皐月賞3着
◆4歳時=天皇賞・春1着、有馬記念2着
◆5歳時=天皇賞・春1着、ジャパンカップ3着

 以上、6戦3勝、2回1回、3着2回と、好成績を残しています」

 つまり、ジャパンカップから中3週で臨む有馬記念については、ローテーション的には悪くないということ。むしろ、過去の戦績からすれば、いい結果が期待できるという。

 加えて、吉田記者は前走のジャパンカップへ向けての調整についても、「結果的に有馬記念にいい形でつながることになる」と断言する。

「中3週でレースに臨んだ過去6戦のうち、前走のジャパンカップだけ、当週と1週前の2本の追い切りで挑みました。それ以外は、前走から2週後の週末から追い切りを開始して、ウッドチップコースでの追い切りを3〜4本消化するのが基本でした。そうしたことを踏まえれば、前走のジャパンカップはかなり特殊な状況でレースに挑んだわけです。

 それも、この秋3戦の最大目標が有馬記念だからです。

 秋の”古馬三冠”レースは、すべて関東圏で行なわれ、中3週で続きます。”ホーム”で戦える関東馬に比べて、その合間に長距離輸送がある関西馬の消耗度は相当なものです。その点を考慮すれば、天皇賞・秋から目いっぱい仕上げられないのは当然のこと。実際、天皇賞・秋に向けては、個人的には80〜85点ぐらいの、ゆとりある仕上げに見えました。

 ただ、スピードや切れを求められない力のいる道悪競馬になったことで、その”ゆとり”がプラスに転じました。結果を考えれば、うれしい誤算とも言える底力での勝利でしたが、仕上がり途上でタフな競馬を強いられた分、ジャパンカップには暗雲が立ち込めました。そこで陣営がとった策が、追い切り開始日を遅らせて、疲れをとることに重点を置いた調整過程だったのです。

 その結果、ジャパンカップでは状態を上げることができず、現状維持から少し落ちた状態で出走し、3着に終わってしまいました。しかし、このときに一度緩めたことが、最後の有馬記念に向けては功を奏するのではないかと思っています」

 現にジャパンカップ後の調整は、従来の”必勝パターン”で行なわれているという。

「今回は、レースから2週後の週末から調教を開始。3〜4本の追い切りで挑む、中3週での”黄金のルーティン”を実践しています。ラストランに向けて、清水久詞調教師も『悔いのない仕上げをする』と公言。今年の天皇賞・春を制したときと同様、坂路は微調整でしか使わず、ウッドチップコースで豊富な運動量を施して馬体をシャープに作っています。

 これこそが、長丁場でのスピード勝負に対応する仕上げと言っていいでしょう。1週前の時点で、余分な筋肉がついていないスカッとしたシルエットを見せており、今季一番の状態で出走できることは疑いありません」 ここ数年にわたって、日本競馬界を牽引してきたキタサンブラック。『今年の漢字』である「北(キタ)」の選定の一因にもなった。最後に自ら盛大な”祭り”を祝って、スタンドを埋め尽くすファンから大喝采を浴びる姿を見届けたい。

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