「不作」と言われた昨年と打って変わって、関係者の間では「今年の2歳牡馬は逸材が多い」という評判だ。パソコン競馬ライターの市丸博司氏も、2歳牡馬のレベルの高さに舌を巻く。

「現状では、セックスアローワンス(※性別による負担重量差)を加味していないとはいえ、牝馬のトップより高いTF指数(※市丸氏が独自で編み出したデータ指数)をマークしている牡馬が22頭もいます。これはすごい状況で、今年の2歳牡馬はかなりレベルが高いと言えます」


3戦無敗で重賞の東スポ杯2歳Sも制したワグネリアン

 そうなると、今週末の朝日杯フューチュリティS(12月17日/阪神・芝1600m)、年末のホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)と、ふたつの2歳GIもハイレベルな戦いが期待できそうだ。

 そんな大一番を前にして、現時点における2歳牡馬『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、来春のクラシックを目指す2歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランキング付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。注:あくまでも来春のクラシックの有力馬を占うもので、朝日杯FSの予想ではありません。


 ここまで重賞を2勝した馬はいないものの、重賞勝ち馬はそれぞれのレースで高いパフォーマンスを見せている。その中でも、圧倒的な存在感を示しているのが、東京スポーツ杯2歳S(11月18日/東京・芝1800m)を快勝したワグネリアン(父ディープインパクト)。デビュー3戦3勝を決めて、堂々の1位となった。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「ヘンリーバローズ(父ディープインパクト)との壮絶な叩き合いを制した新馬戦。超スローペースとはいえ、上がり3ハロンでマークした32秒6という時計は出色のものでした。その後、オープン特別の野路菊賞(9月16日/阪神・芝1800m)、続く重賞の東スポ杯2歳Sと、ともに長い直線でしっかり伸び切って楽勝。その強さは際立っています。今後について陣営は、年内のGI2戦はパスして、クラシックの王道路線とも言える、弥生賞→皐月賞→ダービーというローテーションを示唆しています。

 ディープインパクト産駒で、450kg台と大型馬ではないものの、勝負どころでスパッと動けず、パドックでもテンションが上がるタイプ。馬体も、キ甲が抜けておらず、トモ高でバランス面にも良化の余地がありますが、逆に言えば、3戦3勝の実績がありながら、心身ともにまだ伸びしろが相当あるということ。そこも、大きな魅力です。東スポ杯2歳Sで、すでに輸送はクリア。クラシックの勝ち方を知っているオーナー(金子真人ホールディングス)と調教師(友道康夫)が選択した、4カ月の休養がいい方に向けば、世代屈指の決め脚を武器にして、来年のクラシックを席巻する可能性は大いにあります」

土屋真光氏(フリーライター)
「ヘンリーバローズを相手に勝った新馬戦が、最もタフなレースでした。以降は、レースを重ねるごとに経験を積んで、勝ち方に余裕が出てきているように思えます。すでに完成度の高い馬なので、疲れを残すことのある2歳GIをあえてスキップ。消耗を避けて、来年のクラシックに備えるといったレース選択からも、陣営の期待の大きさがうかがえます」

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「2歳戦では過去に見たことがないような高いTF指数を、東スポ杯2歳Sでマークしました。現状では、間違いなく世代トップ。順調に使っていけば、クラシック候補と断言できる器です。次走は弥生賞とのことなので、この馬への挑戦権をかけた戦いが、今後は繰り広げられていくのでしょう」


 2位は、デビュー2連勝で重賞のサウジアラビアロイヤルC(10月7日/東京・芝1600m)を制したダノンプレミアム(父ディープインパクト)。新馬戦では1800m戦を圧勝していて、距離への適応力もありそうだ。

市丸氏
「ステルヴィオ(父ロードカナロア)を破ったサウジアラビアRCでは、好スタートから2番手を進んで、直線に入って抜け出すと、そのまま押し切り勝ち。そつのないレースぶりは、見事のひと言です。馬場状態が超高速だっただけに、レコードを記録したタイムについては優秀とは言い切れませんが、このくらいのレースができるなら、今後もかなりやれるでしょう。これから距離を伸ばしても難なくこなすことができれば、クラシック候補の仲間入りは確実です」

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「初戦の阪神・芝1800m戦を4馬身差で快勝し、続くサウジアラビアRCは2番手から抜け出し、レコードで勝利しました。どちらも好位から抜け出す競馬で、レースセンスの高さが大きな武器。距離は長くてもよさそうな印象があって、未知の魅力があります」

 3位も、2戦2勝のオブセッション(父ディープインパクト)が入った。芝2000mの新馬戦を勝ったあと、2戦目は500万特別のシクラメン賞(12月2日/阪神・芝1800m)を完勝。豪快に突き抜けて、後続に4馬身差をつけての勝利だった。

吉田氏
「ある程度前が引っ張ってくれたこと、そして路盤硬化が大きかったこともありますが、シクラメン賞で記録した1分45秒6というレコードタイムは破格。高速馬場に、ディープインパクト産駒の血が騒いだこともあるのでしょう。

 ただ、同馬は510kg超えの大型馬。全姉のパーシーズベストも軽さや切れよりも、ストライドを伸ばして長く脚を使うタイプでした。こうした馬格や血統背景、さらに舌がハミを越して走ることからすれば、反応が機敏なタイプではなさそうです。それでいて、レコードを記録できたのは、いかにもこの馬向きの、よどみないラップを刻む展開だったからでしょう。これから、緩急がつく流れでの対応力も身につけば、主役級の活躍ができると思います」

本誌競馬班
「シクラメン賞で4馬身差の圧勝。その走りからは、大物感が漂います」

 4位は、5ポイントで3頭がランクインした。タワーオブロンドン(父レイヴンズパス)、ヘンリーバローズ、レイエンダ(父キングカメハメハ)である。

市丸氏
「タワーオブロンドンは4戦3勝。京王杯2歳S(11月4日/東京・芝1400m)では残り200mでスピードに乗ると、先に抜け出したカシアス(父キンシャサノキセキ)、アサクサゲンキ(父ストーミーアトランティック)を問題にしませんでした。

 血統的にはスピード系ですが、上がりの瞬発力を見ると、もう少し距離が長くても楽にこなしそう。少なくとも、マイルまでは守備範囲でしょう」

吉田氏
「ヘンリーバローズは、新馬戦でワグネリアンと熾烈なマッチレースを展開。ハナ差及びませんでしたが、仕上がり度やスローの上がり勝負での適性などを考えれば、負けてもこちらの評価が上でもいいぐらいでした。

 ただし、全兄は5戦4勝と底を見せることなく引退した大器シルバーステート。その上の兄姉もそうですが、素材はいいものがあっても、脚もとに不安を抱える血筋なのかもしれません。あまり(レースの)数を使うことなく、クラシックを戦えるのなら、チャンスは十分にあると思いますが……」

木南氏
「ダービー馬レイデオロの全弟レイエンダ。新馬戦を勝ったあとに故障してしまいましたが、あくまで来年のダービーを念頭に置いて評価すると、(自分の中では)この馬が最上位かな、と思います。

 今年のクラシックではオークス(ソウルスターリング)とダービー(レイデオロ)を制した藤沢和雄厩舎。その勢いは衰えることなく、この2歳世代もオブセッション、タワーオブロンドン、ファストアプローチ(父ドーンアプローチ)、フラットレー(父ハーツクライ)、ゴーフォザサミット(父ハーツクライ)と、タレントが豊富です。なかでも、今年のダービーのちょっと前、『レイデオロか、その弟(レイエンダ)は種牡馬にしなくてはいけない』と藤沢和師は言っていました。初戦の末脚は大物を感じさせる、それでした。現在は軽度の骨折で戦線離脱中ですが、それでも期待せずにはいられません」 この他にも、素質馬がそろう2歳牡馬。今後を占う意味でも、朝日杯FS、ホープフルSのGI2戦は見逃せない。

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