日本発宇宙ベンチャー「ispace」 が101.5億円を調達、月面輸送サービス商用化めざす


日本の宇宙ベンチャー 「ispace」は、産業革新機構など計12社を引き受け先とする第三者割当増資を完了したと発表しました。調達額は101.5億円で、これをもとに「月周回」および「月探査」ミッション、および2021年以降の月面輸送サービス商用化を目指すとしています。

ispaceは、2010年に設立した日本発の宇宙スタートアップ企業です。グーグルが主催する月面探査レースGoogle Lunar X Prizeに参加する「HAKUTO」チームの運営も担っています。

今回の調達額は「宇宙スタートアップのシリーズAラウンドとしては世界最高額」だといい、産業革新機構をリードインベスターとして、日本政策投資銀行、TBSホールディングス、コニカミノルタ、清水建設、鈴木、電通、リアルテックファンド、KDDI、日本航空、凸版印刷が出資社に名を連ねます。

●「人は貧乏になるために宇宙に出るのではない」

同社が目指すのは、第一に目指すのは高頻度な月面輸送サービスの実現です。そのために「着陸船の月周回軌道への投入」と「着陸船の月面軟着陸」という2つのミッションを、それぞれ2019年末、2020年末までに実施するとしています。

収益化の方針はこうです。月面には「水」が存在し、これを電気分解して「液体水素」と「液体酸素」を生成、これを燃料とするガス・ステーション構想が現実化するなど、月資源の探査ニーズが高まっているといいます。

そのニーズを汲み取り、ispaceは2021年以降、月面や月周回軌道に「1か月に1回」という高頻度で調査物資を輸送する商用サービスの開始を目指すとのこと。その際、単なる輸送に限らず、パートナー企業のロゴを探査機に掲示したり、人類史上初の月面でのプロジェクトマッピングを展開するなどして、企業のマーケティングやブランディングに活用できるサービスも計画。さらには、月面における放射線量や地形などといった観測値を提供するデータビジネスの展開も視野にいれているといいます。

「人間は貧乏になるために宇宙に出るのではありません。宇宙に経済を作ることが重要で、その最初のきっかけになるのが資源開発です。地上でも資源のあるところに人が集まり、街ができ、経済が回っていきます。そういったことが今後宇宙でも起こるだろうと。それを実現するために、まず宇宙での輸送体系を変えようと思いました。そのために月面に行って探査できる仕組み、それも年数回ではなく、1か月に1回という高頻度で安定的な輸送システムを我々が作り上げて、世の中に提供するということをやっていきたいと考えています」(ispace 代表取締役社長 CEOの袴田武史氏)


▲ispace 代表取締役社長 CEOの袴田武史氏



発表会では着陸船のプロトタイプモデルも披露。「アポロや中国が作っているような大きいものではなく、小型で機動性の高いものを目指しています」とのこと。

また、長期的な事業展開については「月面資源を軸にした民間の宇宙ビジネスシステムを構築し、その先にある人類が宇宙で生活できる持続的な人類社会の創造を目指します」と袴田氏は語りました。