Facebookは、広告主やエージェンシーの広告バイヤーがFacebookへの投資を最大限に活かす方法だとして、「Watch」タブ内の広告購入の売り込みを勧めている。

本記事の執筆にあたってインタビューを行なった6人のエージェンシーの広告バイヤーによると、アドブレイク(Ad Breaks:プログラマティックなミッドロール広告)しか選択肢がなかったFacebookのWatchタブに、プレロール広告が導入されはじめているという。そしてこれは、インスタグラムやFacebookのオーディエンスネットワークが導入された当初に販売されていたのと、まさに同じ手法で売られているという。

「彼らは、これらの両方をうまく活用することで最良の結果をもたらすことができると主張している」と、ニューヨークに拠点を構えるエージェンシーのメディア部門のトップは語る。「その真の狙いは、広告商品同士が共食いするようなことはないと、私たちに思わせるところにある」。

プレロールという選択肢も



別のバイヤーが米DIGIDAYに語ったところによると、広告主にとってFacebookの広告インフラはすでになじみ深いものになっているため、Watchタブはいわば「チェックをつければすぐに掲載できる追加広告枠」として位置付けられており、すでにFacebookで広告枠を購入している広告主にとって、導入が簡単になっている(2017年8月からは、ニュースフィードとのセット購入だけではなく、インストリームでの広告掲載だけに限定する選択肢も加えられているが、Facebookの担当者は、お得なニュースフィードとの抱き合わせ販売の売り込みをかけてきている)。現在このプラットフォームでは、YouTubeと似た手法で、Watchタブ内の番組の冒頭にプレロール広告を挿入する試みがはじまっている。米DIGIDAYのインタビューに答えてくれたふたりのバイヤーは、プレロール広告が使える選択肢があるのは魅力的だという。「Watchタブでの視聴者の体験は(テレビと比べて)大きく異なる」と、バイヤーのひとりは語った。Facebookは、それをプレミアムなものとして位置づけているにもかかわらず、複数のバイヤーが、視聴者はアドブレイクを最後まで見ないのではないかと心配している。Facebookが長らく拒否してきたプレロール広告は、まだ確信を持てていない広告主の不安を和らげる役割を担っている。

3人目のバイヤーによると、Facebookはエージェンシーに対して、「全体の広告費を500万ドル(約5.5億円)まで増額し、さらに大きな契約の一部として考えるように求めてきたという。

また、Facebookはエージェンシーに対し、視聴者は長編動画を共有し、より頻繁に見る傾向があると伝えているという。このプラットフォームでの売り上げを分けあっているFacebookとパブリッシャーにとってのマネタイズのチャンスは、適切なアドブレイクを見つけるところにある。そしてこれは、広告主にとっては非常に魅力的なことだ。Facebookは単に魅力的な番組を制作して既存のオーディエンスをマネタイズすれば良いし、それが素晴らしい統合アイデアか、または適切なアドブレイクであるならば、バイヤーにも売れるのだ。

パブリッシャーを選べない



ミッドロール広告の尺はだいたい5~15秒だが、Facebookによればその広告の70%が最後まで視聴されており、大多数が音声をオンにして見ているという。

現在、その広告は標準的なオーディエンスベースの購入手法で売られているため、ブランドは視聴者の興味や地域、またそのほかの特性に応じたターゲティングが可能となっている。エージェンシーが抱えている不満のひとつは、たとえば「スポーツ」や「料理」といった(あらかじめ決められた)ワードにもとづいた広告購入しかできないことだ。ふたりの広告バイヤーによると、特定のパブリッシャーとのあいだでのみ広告購入ができるようにFacebookに繰り返し要求しているという(Snapchatの「ディスカバー(Discover)」では、その選択肢が提供されている)。あるバイヤーによると、これこそがプレミアムらしさを感じさせる要素であり、Facebookはこれをスケールしにくいという理由で提供に後ろ向きなのではないかと予想している。

Facebookは動画内のアドブレイクで得られた広告収入の45%を取っている。これは理論上の話だが、多くの場合、Facebookは毎月の番組制作資金としてパブリッシャーに提供した金額を回収してからパブリッシャーへの分配をはじめているからだ。WatchタブでのCPMはニュースフィードよりも高いが、これはおそらく分配率を調整するためであろう。

以前米DIGIDAYで紹介した記事にもあるように、パブリッシャーはFacebookにスポンサーシップ販売を要求している。満足のいく収益が得られていないパブリッシャーは、現在プログラマティックで売られているミッドロールのアドブレイクの先を行こうとしているのだ。

テスト環境としても不満足



もうひとつの不満として、動画を店舗販売やブランド認知などのビジネス目的で最適化できないことが挙げられている。このことは、Facebookからブランドの商品ページに移動出来る、動画以外の広告の利用を拡大させている。

「Facebookのプラットフォームでの私たちの課題は、Watchタブ内限定で広告を出すことでニュースフィードを使用するよりもブランド認知を促進でき、満足の行く結果が得られることを証明するためのテスト環境を構築することだ」と、別のバイヤーは語る。「そして、ニュースフィードだけよりも、Watchタブと合わせて導入したことによるインパクトの大きさに確証を持てるようなテスト環境が必要だが、まだこれは実現できていない」。

また別のバイヤーによると、Facebookはかなりの数のWatchタブ向けの番組の売り込みをかけてきたが、これといってしっくりくるものはなかったという。「コンテンツの統合や、広告を入れる番組を選ぶなんて危険なゲームにあえて参加する必要はない」と、彼は語る。また、あるエージェンシーのトップによると、FacebookがWatchタブをプレミアムなものとして位置付けていたとしても、そこにはクオリティ面での確証が持てないという。Facebookがブランドを取り入れる番組の売り込みをかけてきているというバイヤーもいるが、それらはテストケースに過ぎない。

いまだ、初期の実験段階



Facebookに番組のスポンサー契約を提供する予定はあるかどうか尋ねたところ、スポークスマンの回答は、2017年12月の時点で提供しているのはミッドロール広告に対してのみであり、APIまたはアドマネージャーを通じて購入できるとのことだった。

エージェンシーはまた、たとえばNFLのスーパーボウルのような特別なイベントの期間中に、Watchタブ内のすべてのプレミアムなスポーツ関連のパブリッシャーのミッドロール広告のすべてを買収できるような機会を求めている。そうすることでSOV(Share of Voice:広告投入量シェア)を100%保障できるのだ。さらに彼らは、パブリッシャーが躍起になって取ろうとしているスポンサーシップ契約にも興味津々だ。

「彼らはまだ、初期の実験段階にいる。これを乗り越えることができれば、Watchタブで大儲けすることができるだろう」と、ひとりの広告バイヤーは語った。

Shareen Pathak(原文 / 訳:Conyac)
Sahil Patel contributed reporting