宇宙飛行士が宇宙空間に放り出される恐怖……というのは映画や小説で繰り返し描写されてきましたが、現在チャールズ・スターク・ドレイパー研究所(以降、ドレイパー研究所)は、宇宙服に搭載する「家(宇宙船)に帰るボタン(Take Me Home)」を開発しています。また、この研究にはNASAが出資しています。
 
このTake Me Homeはその名の通り、緊急時などに押せば自動で宇宙船のような安全な場所へと宇宙飛行士をガイドしてくれます。現在の宇宙服にもガスによる推進装置「SAFER」が搭載されているのですが、その利用が難しく習得にも時間がかかるのは、なんとなく想像がつくと思います。
 
しかしTake Me Homeが実現すれば、宇宙服からSAFERが必要なくなるかもしれません。また本人だけでなく宇宙ステーションの他のクルーからも操作できるであろうこのボタンは、より宇宙飛行士の安全を高めることも期待できそうです。
 
ただしTake Me Homeの開発も簡単ではなく、特に宇宙飛行士の位置の把握が課題になるそうです。そこで現在は、カメラによる画像認識や星を利用したスタートラッカー、それにGPS信号を利用した位置把握が想定されています。現時点ではTake Me Homeがいつごろ実用化されるかなどは明かされていませんが、なんとも興味深い技術ですね。
 
Image Credit: NASA
■New ‘Take Me Home’ button could guide astronauts to safety during spacewalks
https://www.theverge.com/2017/12/5/16737728/nasa-spacewalk-astronaut-space-suit-automatic-return-system
(文/塚本直樹)