安全のためには当然の速度! 普通車も含めたマナーで解決すべき

 この11月から、新東名の一部区間の最高速度が110km/hに引き上げられた。だが、相変わらず90km/hのスピードリミッターを効かせながら走る大型トラックが追越し車線を占拠していて、110km/hなどまったく出せない! という声がある。「ゆっくりしか走れない大型トラックが邪魔!」というドライバーの声は、新東名に限らず全国の高速道路で聞かれる。

 そこで浮かぶのは、「大型トラックの制限速度は、もうちょっと引き上げられないのか?」という疑問だ。日本では2003年から、総重量8トンまたは最大積載量5トンを超える大型トラックは、90km/hで効くスピードリミッターの装着が義務付けられた(制限速度は80km/h)。あれがもうちょっとスピードを出してくれれば……とは、つい思ってしまうところだ。

 もちろん、2003年以前の“暴走トラックハイウェイ”状態を思い起こせば、大型トラックの速度リミッター反対! などとは言えない。当時の高速道路は、130km/h、あるいはそれをも超える速度で爆走する大型トラックだらけで、悲惨な追突事故が多発していた。総重量10トンもあるものが爆走すれば、そう簡単に止まれるはずがない。なにせ運動エネルギーは、速度の2乗に比例するのだから。

「でも100km/hくらいまでは平気では?」

 そう思われるだろうが、海外に目を向けても、大型トラックの制限速度は厳しく制限されている。ドイツ・アウトバーンの速度無制限区間でも、大型トラックやトレーラーは80km/h制限。130km/hまで認められているのは、総重量3.5トン以下の小型トラックまでだ。

 ヨーロッパはおしなべて「総重量3.5トン」を超えると、80km/hが上限になっている。つまり、重量制限は日本より厳しいのである。それでも「大型トラックが邪魔」という声が出ないのは、高速道路の車線数に余裕があることに加えて、マナーがいいからだ。大型トラックは通行帯規制が厳しいため、追越し車線に出てくることは滅多にない。欧米では貨物輸送は鉄道の比率が高く、そもそも大型トラックがそれほど走っていないこともあるが。

 一方日本では、片側3車線ある区間でもトラックに限らず、多くのクルマが中央の車線をのんびり走っていて、キープレフトがほとんど守られていない。これさえ守られれば、「大型トラックよ、もうちょっと速く走ってくれ!」などと思うこともないはずだ。

 こうしたマナーが形成されるには、じつは警察による指導や取締りが必須である。なんだかんだ言ってマナーは取締りによって作られる部分が大きいからだ。ドイツ・アウトバーンでキープライトが徹底しているのは、通行帯に関する取締りの厳しさの裏返しでもある。ほかにクルマがいなくなったら、300km/h出していても、走行車線に戻らなければ違反になり、取り締まられるのだ。