秋の「マイル王決定戦」となるGIマイルCS(11月19日/京都・芝1600m)。かつては、堅い決着で収まるレースとして有名だったが、過去10年で1番人気が勝ったのは2回だけ。しかも、2009年のカンパニーを最後に、2010年から7年もの間、1番人気の勝利はない。

 こうした傾向に加えて、日刊スポーツの松田直樹記者は「現在の日本マイル界には傑出馬が不在」だと言う。

「この春の安田記念(6月4日/東京・芝1600m)は、1着〜5着までがすべてクビ差。9着までがコンマ5秒以内に収まる大接戦でした。『絶対王者』と言われたモーリスが引退してからは、マイル戦線に抜けた存在は出てきていません。そのモーリスを破ったロゴタイプも、安田記念で2着になったあと、先日引退を発表。春の『女王決定戦』となるヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)を制したアドマイヤリードも、目の外傷で戦列を離れてしまいました」

 まさに今年のマイルCSはまれに見る混戦模様。波乱ムードがプンプン漂っている。

 そんな状況にあって、デイリースポーツの豊島俊介記者は、人気を集めそうな面々の危うさを指摘し、自らの狙い目についてこう語る。

「絶対的な主役が不在のマイル路線。今回人気が予想されるイスラボニータ(牡6歳)やエアスピネル(牡4歳)は、GIで勝ち切れない面が気になります。『春のマイル王』サトノアラジン(牡6歳)も、展開や枠に左右されるタイプ。とすれば、今年はフレッシュな3歳馬狙い、という作戦が面白いと思いますよ」

 確かに、イスラボニータは3年前の皐月賞馬だが、その後のGIは8戦して2着2回、3着3回、着外3回と未勝利。エアスピネルも古馬になってマイル戦線に転じ、重賞で2勝しているものの、取りこぼしが多く、安田記念も5着。昨年の3歳クラシック(皐月賞4着、ダービー4着、菊花賞3着)と同様、GIではやや力不足の印象がある。

 また、サトノアラジンも前走の天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)で18着と惨敗。苦手な道悪馬場で、そのダメージを最小限に抑えるレースぶりだったとしても、負けすぎの感は否めない。

 さらに、現在の京都競馬場の馬場が、サトノアラジン向きかというと疑問だ。その馬場状態を踏まえて、今の京都ではどんなタイプが適しているのか、デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。

「馬場造園課が嘆くほど、今の京都競馬場は芝の凸凹がひどく、馬場の傷みは相当なものだそうです。それでも、乾燥して路盤が硬くなると、芝の凸凹も気にならず、それなりに速い時計がマークされますが、一瞬の切れ味だけでは戦えない舞台となっています。スピードとパワーのバランスが重要で、ポジショニングで言えば、逃げ、先行馬に加え、好位や中団の内から脚を伸ばしてくるタイプがよさそうです」

 これらの要素を鑑(かんが)みて、記者たちから高い評価が集まったのが、逃げ馬マルターズアポジー(牡5歳)だ。



今の京都の馬場が合いそうなマルターズアポジー

「こういうときこそ狙いたいのが、人気薄の逃げ馬。マイル転向初戦となった関屋記念(8月13日/新潟・芝1600m)では、同型のウインガニオン(牡5歳)を制してハナに立ち、そのまま1馬身4分の1差をつけて押し切りました。以前から、マイル以下のレースで先手を奪うダッシュ力は光っていましたが、重賞を勝ち切るあたりに地力強化がうかがえます。前走の京成杯AH(9月10日/中山・芝1600m)こそ、直線の坂で止まって4着に終わりましたが、直線平坦の京都なら、粘り込みが期待できそうです」

 そう言って、松田記者がケレン味のない逃げに一発を託せば、吉田記者もそれに同調して、自らのペースで突き進むマルターズアポジーの大駆けに期待を寄せる。

「馬場を考慮すれば、前で踏ん張れる組で、なかでも単騎逃げならしぶといマルターズアポジーが狙い目。テンのダッシュ力が抜群で、この顔ぶれでもハナを奪えそうなのは強みです。外にもたれながらも勝ち上がった関屋記念が示すとおり、追って味があるわけではなく、色気をもってペースを落とすのはナンセンス。その辺は、長らくコンビを組んできている武士沢友治騎手なら百も承知でしょう」

 松田記者と吉田記者からはもう1頭、ペルシアンナイト(牡3歳)の名前が挙がった。

「なんといっても、鞍上がミルコ・デムーロ騎手。激戦のエリザベス女王杯でもモズカッチャンを勝利に導きました。ペルシアンナイトにしても、ダービーで敗れたあとは早々にマイル路線に矛先を向けて、休み明けの富士S(10月21日/東京・芝1600m)を叩いてマイルCSというローテンションには好感が持てます。

 その前走の富士Sは5着にとどまりましたが、久々のうえ、不良馬場、初の古馬相手とハンデが多くあって、先着されたメンバーとの勝負づけは済んでいません。3歳馬の伸びしろや上積みを考えれば、逆転の目は十分。モズカッチャンと同じハービンジャー産駒で、ここで一気に世代交代があっても不思議ではありません」(吉田記者)

「混戦のときこそ、頼りにしたいのが騎手の腕。M・デムーロ騎手は、今春の安田記念で3着、スプリンターズS(10月1日/中山・芝1200m)で史上3頭目の連覇を遂げたレッドファルクス(牡6歳)の主戦ジョッキーですが、今回はペルシアンナイトに騎乗します。今年もすでにGI5勝を挙げて、オークスからGI9戦連続で3着以内を確保している勝負強さはピカイチ。このコンビで2着に入った皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)以上の結果を残してもおかしくありません」(松田記者)

 一方、先述のように「3歳馬狙いが面白い」と話す豊島記者は、同じ3歳でも、サングレーザー(牡3歳)とレーヌミノル(牝3歳)を推奨する。

「サングレーザーは、以前は折り合い面に難しさを抱えていましたが、それを克服し、今ではしっかりと末脚を使えるようになっています。前走のスワンS(10月28日/京都・芝1400m)でも、厳しい位置から差し切って重賞初V。混戦を勝ち切るだけの根性も秀でています。走りを見る限り、決して道悪がいいというわけでもなさそうで、良馬場なら一気に頂点に立つ可能性も十分にあります。

 レーヌミノルも『牝馬三冠』を戦い終えて、ようやくこれからは適距離への出走が可能となります。馬体と走法から、やはりマイル以下の距離がベストと見ます。こちらは晴雨兼用で、天気は不問。距離短縮で一発があっても驚きません」 混迷深まる戦国状態のマイル戦線。群雄割拠の中から抜きん出て、天下統一を果たすのはどの馬か。注目のゲートインまで、まもなくである。

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