雰囲気、舌鼓…なんて読む?日本語の乱れじゃない、意外とたくさんある「音位転換」で言葉が変わる

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「雰囲気」「舌鼓」なんて読む?

問題です。「雰囲気」、「舌鼓」の読みがなは?

正しくは「ふんいき」「したつづみ」ですが、「ふいんき」「したづつみ」と読んだ、という方もいらっしゃるかもしれません。普段何気なく使っている言葉の中にある覚え間違いは、ついうっかり見逃されているケースも少なくありません。

漢字の読みとは異なりますが、宮崎駿監督のアニメ『となりのトトロ』で、少女メイが「とうもろこし」を「とうもころし」、「おたまじゃくし」を「おじゃまたくし」と発音していたのを覚えている方もいるのではないでしょうか?

「最近の若者は日本語が乱れている!」とお叱りの声が聞こえてきそうですね。しかしこの現象は、単純に日本語の乱れや言い間違いとあっさり切り捨てることができるものではなく、実はある言語学的な法則によるものなのです。この法則を「音位転換」と呼びます。

「山茶花」「秋葉原」も音位転換!

「音位転換」とは、簡単に言えば発音しにくい音の並びが、より発音しやすい並びに入れ替わることです。日本語では「雰囲気」「舌鼓」の他にも、多くの言葉が「音位転換」によって仮名の位置が入れ替わり、そのまま定着しています。

例えば「山茶花」は、漢字をそのまま読もうとすると「さんさか」ですが、現在「さざんか」と読まれていますよね。

いわゆるオタク文化と家電の街として知られる「秋葉原」も、現在は当然のように「あきはばら」と読まれていますが、元は漢字を見たまま「あきばはら」でした。

これらの例は全て発音がしやすいように「音位転換」が起こり、いつしかそれが「正しい日本語」として定着した代表的なものとして、大学の日本文学科で教鞭を取る日本語学の教授なども頻繁に取り上げています。

法則としては、「さんさか→さざんか」のように語頭と語尾の仮名はそのままで、間の2文字が入れ替わるのが基本となっています。

日本語だけじゃない!外国語にも同じ現象が

音位転換は日本語だけに起こる現象ではなく、多くの言語に見られる現象です。

英語での音位転換の例は、「three」の「re」の母音字と子音字が入れ替わって「ir」となり「third」に、また「tax」の「ks」が「sk」と入れ替わり「task」に変化して定着したものなどが知られています。外国語の場合の音位転換の法則は、必ずしも日本語と同じとは言い切れない部分もあります。

しかし「日本語の乱れ」「言い間違い」と思われていたものが、このような言語学的に説明がつけられる法則に基づいているなんて、驚きですよね。どうやらこれからも、新たな「正しい日本語」が生まれていくかも知れませんね。