旭山動物園/北海道産動物舎では2種類のカラスを展示している/(C)旭川市旭山動物園

写真拡大

動物園というと、ライオンやホッキョクグマなど、そこに行かなければ見られない動物を飼育・展示しているイメージがありますよね。しかし! 旭山動物園では、普段よく見るあの動物も展示されているんです。

旭山動物園/ハシブトガラス/(C)旭川市旭山動物園

それは、カラス。どこにでもいる、あのカラスです。

「なんで動物園でカラス?」と思いません? 私も、正直「しょっちゅう見てるし、わざわざここで見なくても」なんて思いました。何より怖いんですよねぇ……。人並みに、後頭部付近に低空飛行をかまされて恐怖で襲撃にあった道を歩けなくなった思い出もありますし、ゴミ捨て場を闊歩する貫禄ある姿に気圧され、道を譲ることもしばしば。

でも、むやみに怖がるのはお互いのためになりませんからね! 彼らの習性を知り、共存について考えるため、このちょっと珍しい展示が行われているのです。

旭山動物園では、旭川市内で有害鳥獣駆除として捕獲された個体を旭川市から譲り受け、展示。種類はハシブトガラスとハシボソガラスで各一羽ずつ。そう、カラスにも種類があるんです。

どちらのカラスも日本全国に生息していますが、都心や市街地に多いのがハシブトガラスで、農耕地や河川敷に多いのがハシボソガラス。また、ハシブトガラスはくしばしが太く、おでこが出っ張っていて、ぴょんぴょん跳ねながら歩くのが特徴。一方、ハシボソガラスのくちばしは細く、おでこは平たくて、スタスタ歩くのが特徴です。

攻撃性が強いのはハシブトガラスのほうで、人を襲うカラスの多くがこの種類なのだそう。ただ、年中人を襲っているわけじゃなく、繁殖期(6〜7月ごろ)、自分の巣に近づいてきた人間に対して行っているんです。

ちなみに、カラスが得意なのは巣作り。木の枝や皮、動物の毛のほか、ハンガーやビニールひもなど人間が普段使うものも利用しながら丈夫で温かい巣を作るそう。旭山動物園でも、送電線から撤去された巣(ハンガーなどの金属類を使用しているのでショートする恐れがあるんです)を展示しているので観察してみては? カラスの古巣は鳥たちに人気で、特に自分で巣を作ることができないチゴハヤブサ(2017年10/31現在、旭山動物園では展示していません)にとっては、とても重要なものなのだとか。

また、カラスは自然界で「スカベンジャー(腐肉食者)」という役割を担っているそう。生き物は当然いつか死ぬわけで、誰かが片付けない限り、死体があふれていきます。カラスは、そんな死体をきれいに食べてくれる、いわば自然界の「掃除屋さん」。“厄介もの”と考えてしまいがちですが、カラスがいるから成り立っていることはたくさんあるわけです。

カラスが展示されているのは、北海道産動物舎。園内でじっくり特徴を見比べて、近所で出会ったときに「これはハシブトかな?」なんて思って眺めると、「怖い」「嫌い」以外の興味も湧いてくると思いますよ。

※写真提供:旭川市旭山動物園

【北海道ウォーカー/出村聖子】