藤川球児も松坂世代の1人(写真:時事通信フォト)

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 CS開幕直前の10月13日、「巨人・村田修一が自由契約選手へ」というショッキングなニュースが球界を駆け巡った。

 1980(昭和55)年生まれの村田は、いわゆる「松坂世代」の一人だ。過去に2度も本塁打王に輝いた、世代屈指のスラッガーに対する戦力外通告。この出来事は、「松坂世代の終わりの始まり」を示唆しているように思う。彼らは今、世代交代の波に、完全に飲み込まれようとしている。

 村田をはじめとする松坂世代の選手たちはかつて、球界の中心を担う存在だった。ソフトバンク・和田毅(最多勝2回、最高勝率)、巨人・杉内俊哉(最多勝、最優秀防御率、最多奪三振など)、阪神・藤川球児(セーブ王2回など)、ヤクルト・館山昌平(最多勝)、オリックス・小谷野栄一(打点王)……村田以外にもタイトル保持者が目白押しだ。

 そして、何より大将格の松坂大輔本人が、MLB・レッドソックスでワールドチャンピオンにまで上り詰めている。

 そんな最強世代の勢いに衰えが見え始めたのは、“大将”松坂が右肘にメスを入れた2011年辺りからだろう。

 松坂の後を追うように、相次いで海を渡った和田と藤川も、メジャー移籍直後にトミー・ジョン手術を経験。ソフトバンクから巨人に移籍した杉内も、在籍1年目こそ活躍したが、以降は股関節の痛みに悩まされ、現在もケガのために2シーズンにわたって一軍のマウンドから離れている。

 その結果、これだけの顔触れが揃いながら、名球会入り(通算2000安打、200勝、250セーブのいずれかを達成)した選手は1人も誕生していない。最も近い位置にいるのが、1865安打の村田と、225セーブの藤川だが、現在のチーム内の立場や役割から考えると、このまま達成できずに終わる可能性も十分に考えられる。

 松坂世代と呼ばれるプロ野球選手は合計94名(外国人選手除く)誕生した。しかし今季開幕時点で、現役選手は育成契約を含めても僅か19名。このオフには江草仁貴(広島)、上本達之(西武)などが引退を表明した。来季開幕時にはさらに少なくなるだろう。

 今季、チーム内でレギュラーとしての地位を保っているのも、和田、藤川、小谷野の3選手のみ。史上最高の世代と評されたタレントたちは、このまま徐々に波に飲まれていくのか。それとも最後に抗う姿を見せてくれるのか。

 カギを握るのは、やはり松坂の存在だろう。「昭和55年会」を結成してオフに様々な活動をしてきたように、彼らの横のつながりは強い。中には「松坂世代」と呼ばれることに抵抗を示す選手もいたが、「仲間に入れてもらえて嬉しいくらい」と語る和田のように、その一員であることを誇りに思う選手が多かった。

 高校時代、投手だった村田は松坂と対戦して「投手では一流になれない」と悟り、打者への転向を決心した。松坂は彼らにとって、それほどの象徴的な存在だったのだ。

 日本球界に復帰してから、わずか1イニングしかマウンドに立っていない男に、仲間を鼓舞するほどの復活を期待するのは酷なのか。かつて松坂はこう語っている。

「周囲からの重圧がなくなったとき、感じなくなったときは、選手として終わりかもしれない」

 高額年俸に見合う活躍ができていない現状への批判は多い。ただ、そういう批判も含めたファンの関心がまだ残っていることも事実だ。

 松坂世代の瀬戸際──。もちろん、最後に抗うための時間はそれほど残されていない。

●文/田中周治(スポーツジャーナリスト)

※週刊ポスト2017年11月10日号