動きに切れがあり、調子の良さを窺わせた乾。この日は流れの中でトップ下に入ってプレーするなど神出鬼没だった。(C)Getty Images

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 日曜日のリーガ・エスパニョーラ10節、エイバルvsレバンテの一戦で、日本代表MF乾貴士がチームの全得点に絡む活躍を見せた。
 
 前半、攻撃陣の連携がチグハグで好機を創出できなかったエイバルは、守備を固めるレバンテに効率良くカウンターを決められ、2失点を喫してしまう。降格圏一歩手前の17位に沈み、いよいよ周辺に不穏な空気が漂ってきたホームチーム。全国紙『Mundo Deporitivo』によると、ホセ・ルイス・メンディリバル監督はハーフタイムに「もっと早くサイドに散らしてテンポを上げろ!」と選手たちに指示したという。この檄が功を奏したのか、後半のエイバルは別チームのように躍動した。
 
 その急先鋒となったのが、5-3-2システムの中盤左サイドに陣取った乾だ。
 
 まずは51分、左サイドから中央への鋭い仕掛けでFKを獲得。ゴール前20メートルの位置からDFアナイツ・アルビージャが鮮やかな一撃を蹴り込み、1点を返す。攻撃にアクセントを加えるべくメンディリバル監督がカードを立て続けに切ると、り、74分だった。左サイドからエリア内に颯爽とドリブルで持ち込んだ乾が、相手守備者3人を引き付けながら右足を一閃! 敵GKラウール・フェルナンデスの好守にいったんは阻まれるも、こぼれ球をFWシャルレスが押し込んで同点に追いついた。
 
 怒涛の攻勢で一気に逆転弾を狙いにいったエイバルだったが、一歩及ばずドローで終了。スペイン各紙はMVP級の働きでチームを牽引した乾を称えた。
 
 スポーツ紙『Marca』は、「この試合の前までリーガ9試合で3点しか奪えず、ここ4試合無得点だったエイバルを救ったのがイヌイだ。前半から孤軍奮闘が目立ち、1点目は彼が獲ったフリーキックからで、2点目の中央への仕掛けはまさにパーフェクト。エイバルの救世主だ!」と評した。
 
 小見出しに「イヌイの才能が異彩を放つ」と打ちながら、そのハイパフォーマンスを伝えたのが全国紙『EL PAIS』だ。「左サイドから中央へ水平に仕掛けるイヌイのドリブルを、レバンテの守備陣は最後まで防げなかった。(2点目は)イヌイがそんなレバンテに対し、天罰を与えるかのような完璧なドリブル。ショットも力強く、弾いた球を詰められたラウールを責めるわけにはいかない」と綴った。
 
 そして、『Mundo Deportivo』は「まさしく悪魔のようなドリブルでレバンテの守備網を切り裂いた。ゲームを通して存在を示したイヌイに、エイバルは感謝しなければならない」と記している。
 
 とはいえ、ホームで勝ち切れなかったのは痛恨だった。これでリーガは6戦白星なしの2分け4敗と、いまだ降格圏付近を彷徨っている。
 
 エイバルと乾の苦闘は、この先もまだまだ続きそうだ。