VRが開くコンセプトカーの未来! もはや実車がなくても搭乗、運転体験ができる時代へ

次世代のモビリティを目指した自動運転やEVなど最新のテクノロジーや、ここでしか見られないコンセプトカー、日本初公開のモデルなどが一堂に会している。
中でも人気なのが「コンセプトカー」だ。
しかし、会場内の展示車両は市販モデルであれば車内に入ることができるが、ステージ上に展示されているコンセプトカーはさすがに内装を見たりすることはできない。
そんなコンセプトカー展示の常識を覆したのが「フォルクスワーゲン」ブース「I.D. CROZZ」だ。
I.D.は同社が今回披露した電気自動車のコンセプトカー。
懐かしいワーゲンバス「タイプ2」をイメージした「I.D.BUZZ」などを展示していた。

ところが、SUVタイプの「I.D.CROZZ」は、展示車両がないのだ。

なにもない円形のブースにVRとしてヴァーチャル展示されているという、なんとも不思議な展示である。。
このVRを体験するにはHTCの「VIVE」のヘッドセットを装着して行う。
コンパニオンからVRについての簡単な説明を受けて、ヘッドセットを装着すると外の景色が広がり、そして目の前にI.D.CROZZが現れる。

コンパニオンの指示に従って、VR空間の中でドアのボタンを右手で押すとドアが開き、内装を確認することができる。CGとはいえ、開くドアを思わずよけようとするほど、空間がリアルでよくできている。
先ほど開けたドアを閉め、リアル世界が見えないのでコンパニオンに案内されながら、しゃがみ込んでタイヤやホイールを観察したり、車両の前後を確認したりコンセプトカーの外観を一通り体験できた。
まさにヴァーチャル空間の中にコンセプトカーが展示されている斬新な見せ方だ。
続いて、車内を体験するため何の変哲もない椅子に座り、またヘッドセットを装着する。目の前にはI.D.CROZZの車内空間見える。
すると、助手席側のドアが開き女性が乗り込んできて、フランクに話しかけてくるのだ。
このVRは、同乗する彼女(彼)とドライブを楽しむというストーリー仕立てになっており、会話の中からI.D.CROZZの特徴や車内の操作をレクチャーしてくれる。
たとえば、
I.D.CROZZが走り出し自動運転に切り替わるとハンドルが収納され、目の前の空間が少し広くなる。助手席の女性からドライブが物足りないのは音楽がないからだということで、音楽の操作方法を教えてくれる。タッチパネルを触って聞きたいジャンルを選ぶことができた。
また、天井を見上げてサンルーフの明るさを変更する操作や、車内の照明なども教えてくれるなど、まるでわかりやすい取扱説明書のような体験が楽しめた。途中で飛び出してきた人に対して自動ブレーキが働くなど、演出も良くできている。
目的地に着くと、そこでVR試乗体験が終了し、VRのヘッドセットを外すと目の前にはモーターショーの会場という現実戻される。なんともこれも不思議な感覚である。
こうした取り組みはポルシェブースでも行われており、今回発表となった「カイエン」がVRで体験できる。
こちらは、車内のインテリアを一通り見た後、ドアを開けて実際に椅子から立ち上がって車外へでる。次にカイエンのエクステリアや空力、ドライブトレインなどが立体的な資料映像として観ることができる。ドライブトレインやシャシーやヘッドライトの分解パーツそれぞれを展示するとなると大がかりなスペースが必要となるが、VRなら移動に使う車一台分の空間があればどんな見せ方でもできる、そんな可能性がそこにはあった。
VRであるため触っても手触りがないのだが、見たい角度から覗いたり近づいてじっくり見たりなど、従来のコンセプトカー展示よりも、コンセプトを身近に感じることができた。
VRによる展示は、通常の車両展示よりも来場者の回転効率はよくないかもしれない。
しかし誰にも邪魔されずにじっくりとコンセプトカーを体験できるのは良い試みだ。
また、VRは、操作を覚えるためのツールとしても相性が良いことがわかった。
VRはゲームやカタログ的な使い方のほかに、様々な教習、そしていざというときに役立つ災害時の対策用など、もっと普及してほしい分野である。
執筆 mi2_303