10月29日に行なわれるGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)は、現役の有力馬がズラリと顔をそろえ、豪華なメンバー構成となった。

 ただし、それら実績馬の多くが、不安要素を抱えているのも事実だ。GI通算5勝と「現役最強馬」の呼び声高いキタサンブラック(牡5歳)は、今春のGI宝塚記念(6月25日/阪神・芝2200m)で圧倒的な1番人気に推されながら、まさかの9着惨敗。今回はそれ以来のレースとなり、どこまで復調しているのか、読めない部分が大きい。

 その宝塚記念を制したサトノクラウン(牡5歳)も、それ以来となるおよそ4カ月の休み明け。いきなりハイレベルなGIを制すだけの底力があるのか、やや疑わしい。また、大物感あふれるオークス馬のソウルスターリング(牝3歳)も、前走のGII毎日王冠(10月8日/東京・芝1800m)で8着と凡走。こちらも、そこからの一変があるのかどうか、微妙なところだ。

 そうした状況を踏まえれば、先週の菊花賞に続いて波乱があってもおかしくない。”荒れる”展開を想定して、穴馬探しに徹するのも悪くないだろう。

 そこで今回も、過去10年の結果を参考にして、波乱の立役者を探し出していきたい。

“大荒れ”は少ないこのレースだが、ここ10年の間にも7番人気以下の伏兵が馬券圏内に何度となく突っ込んできている。そのパターンで多いのが、GI実績がありながら、近走の不振で人気が急降下していた馬の復活劇だ。

 2009年に7番人気で2着に入ったスクリーンヒーローは、前年のGIジャパンカップ(東京・芝2400m)の優勝馬。しかしながら、その後の成績はパッとせず、同年春のGI天皇賞・春(京都・芝3200m)で14着、宝塚記念でも5着と敗れて、人気を落としていた。

 2015年に10番人気ながら2着入線を果たしたステファノスも、その年の春に海外GIのクイーンエリザベス2世C(香港・芝2000m)で2着と好走していたが、前哨戦の毎日王冠で7着に敗れて人気は急落していた。

 さらに、2016年に7番人気で2着となったリアルスティールも、春には海外のGIドバイターフ(UAE・芝1800m)を制したものの、続くGI安田記念(東京・芝1600m)で11着と大敗。それ以来となるこのレースで評価が上がることはなかった。

 つまり、今回も狙い目となるのは、GIでの実績がありながら、近走の不振によって人気が急落しそうな馬である。

 浮かび上がるのは、マカヒキ(牡4歳)だ。


昨年、ハイレベルな日本ダービーを制したマカヒキ

 何を隠そう、昨年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制した馬である。しかし、昨秋に世界最高峰のレースと言われる凱旋門賞(フランス・芝2400m)に挑戦して14着と大敗を喫すると、帰国後も不振が続いている。今年に入って3走しているが、GII戦でも勝利を挙げられず、前走の毎日王冠でも見せ場なく、6着に敗れた。

 その走りから、さすがに今回は人気が落ちそうな気配。それでも、ダービーを制した東京の舞台で、叩き2走目となれば、復活の可能性はある。2012年には、やはり不振にあえいでいたダービー馬エイシンフラッシュが、5番人気で復活Vを遂げている。その再現が大いに期待される。

 一方で、改めて過去10年の”勝ち馬”を見てみると、波乱の結末として思い出されるのは、2011年のトーセンジョーダンだ。同馬は7番人気で優勝。1分56秒1という驚異のレコードタイムを樹立して、ファンの度肝を抜いた。

 そのトーセンジョーダンは、夏のGII札幌記念(札幌・芝2000m)を制すると、この舞台に直行。それまでにGI実績がなく、軽く扱われていたが、見事にその評価を覆(くつがえ)す激走を見せた。

 実はこのパターンは、12年前にもある。札幌記念を9番人気で制したヘヴンリーロマンスが、そのまま天皇賞・秋に直行。14番人気という低評価でありながら、強豪牡馬を相手に大金星を挙げたのだ。

 札幌記念を勝ちながら、人気の上がらない馬。そして、札幌から直行する馬――そんな馬が今年もいる。

 サクラアンプルール(牡6歳)である。

 昨年末にようやくオープン入りし、今年のGII中山記念(2月26日/中山・芝1800m)で2着と好走した同馬。前走の札幌記念(8月20日)では、GI経験豊富な馬たちを蹴散らして、ついに初重賞制覇を決めた。

 成長著しいサクラアンプルールだが、今春のGI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)では13着と完敗。GIでは力不足という評価のなか、さすがに今回も人気は上がりそうもない。

 だが、札幌記念を快勝して進化を遂げた馬が、そのまま通用するケースは過去の歴史が証明している。前走で下したメンバーを考えても、GIで存在感を示す能力は十分にあるはずだ。チェックしておいて損はないだろう。

 最後に、過去の好走馬の前走に注目してみると、やはり毎日王冠から経由してきた馬の強さが目立つ。過去10年のすべてのレースで、”毎日王冠組”が馬券圏内の3着までに必ず1頭は絡んでいる。

 この中には、穴を開けた馬も少なくない。それらに共通するパターンは、毎日王冠で好走しながらも、人気が上がらなかったケースだ。

 例えば、7番人気で2着となった2007年のアグネスアークは、毎日王冠で2着と好走していた。5番人気で戴冠を果たした2009年のカンパニーも、この重要なステップレースを勝っていながら、そこまでの人気にとどまった。

 2013年の勝ち馬ジャスタウェイも毎日王冠で2着と勢いに乗っていたが、本番では上位勢と差のある5番人気止まり。翌2014年の勝ち馬スピルバーグも毎日王冠で3着と奮闘したものの、天皇賞・秋では単勝オッズが10倍を超える5番人気と、伏兵の1頭に過ぎなかった。

 ならば、今年も狙うべきは、毎日王冠で上位入線を決めながら、伏兵レベルの評価にとどまる馬だ。

 面白いのは、サトノアラジン(牡6歳)。もし5番人気以下になったら、買いだろう。

 2走前の安田記念(6月4日)では7番人気で1着。前走の毎日王冠でも5番人気で2着と、人気の低さに反発して力強いレースを見せてきた。今回も豪華メンバーの陰に隠れて、人気上昇に歯止めがかかるようならば、ここ2戦のような反撃があっても不思議ではない。 大舞台での経験が豊富な実績馬に、夏場に力をつけてきた上がり馬。さまざまな役者がそろう注目の一戦は、どんな結末が待っているのか。秋の府中を彩るハイレベルな戦いから目が離せない。

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