秋の”古馬三冠”の初戦、天皇賞・秋(東京・芝2000m)が10月29日に行なわれる。

 先日、年内での引退を発表した「現役最強馬」キタサンブラック(牡5歳)をはじめ、今春の宝塚記念(6月25日/阪神・芝2200m)の覇者サトノクラウン(牡5歳)や、昨年の2着馬で、前哨戦の毎日王冠(10月8日/東京・芝1800m)を快勝したリアルスティール(牡5歳)など、国内外のGIを制した馬が8頭出走。さらに、ステファノス(牡6歳)、グレーターロンドン(牡5歳)など、初のGI勝利を狙う実力馬たちも魅力的なメンバーが顔をそろえ、ハイレベルな一戦となった。

 その豪華メンバーの中で、最も気になる存在と言えるのが、唯一の牝馬であるソウルスターリング(牝3歳)だ。


天皇賞・秋に挑むソウルスターリング

 この春にオークス(5月21日/東京・芝2400m)を勝って3歳牝馬の頂点に立ったソウルスターリング。秋を迎えると、3歳牝馬路線での戦いには見向きもせず、果敢に古馬GI戦線に挑んできた。

 しかし、休み明け初戦となる毎日王冠では、まさかの8着という結果に終わっている。古馬トップクラスが集う中で1番人気に支持され、スタートでやや後手を踏みながらも敢然と先手を奪ったが、直線では本来の伸びを欠いて馬群に沈んだ。

 多少の不利があったとはいえ、この負け方で同馬に対する評価が難しくなってしまった。圧倒的なレースぶり、スケールの大きさは誰もが認めるところだが、古馬一線級が相手となると、さすがにまだ力は及ばないのだろうか――。

 まずは毎日王冠の敗因は何だったのか、振り返ってみたい。先週の菊花賞では10番人気で2着に突っ込んできたクリンチャーに本命を打ち、見事に波乱のレースを仕留めた日刊スポーツの木南友輔記者はこう分析する。

「(ソウルスターリングが)毎日王冠で負けるとしたら、同じく負担重量の軽い3歳馬、ダイワキャグニー(牡3歳)あたりだと思っていたので、あの失速は想定外でした。開幕週で、前が残るはずの馬場。にもかかわらず、スローの流れから終(しま)いの伸び勝負という、ディープインパクト産駒向きの競馬になったことが、敗因と見ています。

 フランケル産駒で、瞬発力が武器のソウルスターリングであれば、(古馬相手にも)伸び負けしないと思っていたのですが……。そんな彼女でも、古馬のディープインパクト産駒のGI馬たちにはかないませんでした」

 確かに、毎日王冠の上位3頭はディープインパクト産駒が独占。それも、古馬のGI戦線で好成績を収めている実績馬ばかりだった。

 とはいえ、ここまではいいとしても、ソウルスターリングはディープインパクト産駒以外の馬にも先着を許して、掲示板にすら載れなかった。勝ったリアルスティールからはコンマ5秒差、2馬身以上離されての完敗だ。はたして、そこから巻き返しはあるのだろうか。

「巻き返しは可能と見ています」

 木南氏はそう語る。そして、さらにメンバーが強くなる本番でも好走は可能だと断言する。

「歴代2位の好時計だったオークスを制しているように、ソウルスターリングには自分から動ける機動力と時計勝負への強さがあります。前走は慣れない”逃げ”の作戦に出たことで、逆にペースを優先させてしまい、時計勝負へ持ち込めませんでした。

 また、一度使ったことで、今度は休み明けほどテンションが上がらず、落ち着いた状態でレースに臨める可能性が高いです。藤沢和雄調教師も『1回使って、ガス抜きができた』と言っていました」

 今度は叩き2走目。少なからず上積みが見込めるのは間違いないだろう。ただ、自身に向かないペースだったとはいえ、やはり最後に伸びを欠いたことは気になる。2400mのオークスを勝っているものの、以前、主戦のクリストフ・ルメール騎手は、「本質的にはそこまでの距離適性はないのではないか」という話をしていた。

 3歳牝馬同士であれば能力でカバーできたとしても、歴戦の強豪が相手となり、毎日王冠からさらに距離が延びる本番へ、不安は膨らむ。だが、その点についても、木南氏は次のように一蹴する。

「もう一度、パトロールビデオを見てほしいのですが、ソウルスターリングはゴール板を過ぎてからも、脚色は鈍っていないんですよ。このことから、毎日王冠は力を出し切っての敗戦ではないことがわかります。それに、ルメール騎手は『休み明け』という日本語を上手に使っていました。その言葉の裏には、『あくまでも前哨戦だから……』という強い思いが隠れているように感じます」

 ただ、天皇賞・秋における3歳牝馬の勝利は過去に1度もない。3歳牝馬がこの舞台に挑んでくることが非常に少ないこともあるが、3歳馬の出走が開放された1987年以降、牡馬を含めても3歳馬が勝ったのは、2002年のシンボリクリスエスと、1996年のバブルガムフェローの2頭だけ。天皇賞・秋でソウルスターリングが勝ち負けするのは、データ的に見てもかなり厳しい状況だ。

 それでも、木南氏はソウルスターリングを無視するべきではないという。

「今度はGIで負担重量も馬齢によるもの。(ソウルスターリングの)本当の真価が問われる一戦です。決して楽な戦いではないと思いますが、ダービーのレース後に藤沢和師とふたりでいるときに聞いたのは、『ソウルと(同厩舎の)レイデオロを一緒に走らせることはない』という話。理由は『どちらもクリストフに続けて乗せたいから』というものでした。その言葉をそのまま受け取れば、ルメール騎手がその鞍上でいる限り、ソウルスターリングを軽視することはできないでしょう」

 思えば、前述した天皇賞・秋を3歳で制した2頭は、ともに藤沢和厩舎の管理馬だった。さらに、3歳で2着に入った馬は過去に5頭いるが、そのうちペルーサ(2010年)とダンスインザムード(2004年)も藤沢和厩舎。しかも、ダンスインザムードは牝馬である。

「ダンスインザムードも、秋華賞で案外な競馬をしてから(1番人気で4着)、天皇賞・秋では2着と好走しました。それを考えれば……」(木南氏) 今年、悲願のダービー優勝を飾って、同一年でのオークス、ダービー制覇という快挙を果たした藤沢和調教師。これまでも数々の記録を塗り替え、輝かしい成績を残してきた名伯楽がこの秋、3歳牝馬による天皇賞・秋制覇という新たな歴史を刻むのか、大いに注目である。

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