中心馬不在――今年の3歳クラシック最終戦となるGI菊花賞(10月22日/京都・芝3000m)は、そんな言葉がぴったりな状況となっている。

 GI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)を制し、休み明けのGII神戸新聞杯(9月24日/阪神・芝2400m)も圧勝したレイデオロは、早々に古馬GI戦線への参戦を表明。菊花賞をパスして、GIジャパンカップ(11月26日/東京・芝2400m)へ向かう。

 加えて、ダービー2着のスワーヴリチャードも調整遅れなどもあって別路線に進み、同3着のアドミラブルも故障して不出走。さらに、GI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)の覇者アルアインは、前哨戦となるGIIセントライト記念(9月18日/中山・芝2200m)で上がり馬ミッキースワローに完敗を喫した。血統面から距離不安も囁かれ、絶対的な存在とは言えなくなっている。

 まさに”核”となる馬がいない菊花賞。おまけに、舞台はどの馬にとっても未知の距離となる3000m。そうした状況を踏まえれば、波乱の気配を感じるのは無理もないことだろう。

 とすれば、ここは穴狙いに徹すべき。過去10年の結果を振り返りながら、今年の穴馬候補をピックアップしていきたい。

 過去10年の穴馬を見ると、前走で1000万条件を勝ち上がったばかりの馬の好走パターンが目立っている。

 例えば、2009年に8番人気で勝利を飾ったスリーロールスは、前走で1000万条件の野分特別(阪神・芝1800m)を圧勝して本番へ。他にも、2010年に13番人気で3着に突っ込んできたビートブラック、2014年に7番人気で3着に入ったゴールドアクターが1000万条件の前走を勝って、その勢いのまま菊花賞でも好走した。

 要するに、おおよそ菊花賞で人気の中心となるのは、直前のトライアル戦で上位入線を果たしてきた馬たちだが、そうでなくても古馬混合の1000万条件を勝ち上がってきた馬であれば、十分に通用するということだ。ならば、人気薄のそうした馬たちを狙わない手はない。

 そこで、今回のメンバーを見てみると、前走で1000万条件を制してここに挑む馬が4頭いる。どの馬も魅力的ではあるが、前述した過去3頭の実績を再度チェックしてみると、いずれも春の時点で重賞やオープン戦に出走。そこから自己条件に戻って、2戦以内で1000万下を卒業している。

 この観点で見ると、2頭の馬に絞り込まれる。トリコロールブルーとクリノヤマトノオーである。

 トリコロールブルーは、春にGIIスプリングS(5着。3月19日/中山・芝1800m)、GII青葉賞(7着。4月29日/東京・芝2400m)と、2度の重賞出走経験がある。その後、休養を挟んで前走では1000万条件の日高特別(9月2日/札幌・芝2000m)を快勝。そこから、この舞台へ挑む。

 クリノヤマトノオーも、5月にオープン特別の白百合S(2着。5月27日/京都・芝1800m)に出走。トリコロールブルーと同じくその後は休養に入って、9月の500万条件を快勝すると、前走の1000万条件・清滝特別(10月8日/京都・芝1800m)でも連勝を飾って、大一番へと駒を進めてきた。

 2頭とも、春の時点ではトップクラスに及ばなかったものの、ひと夏越して力をつけて戻ってきた。その勢いは、過去の歴史を見ても大きな武器となる。また、春にトップクラスと戦ってきた経験も、長丁場の特殊なレースで生かされるはず。この上がり馬2頭の大駆けがあっても不思議ではない。

 ところで、過去10年の菊花賞を今一度振り返ってみると、「今年と似ているのではないか」という年がある。オウケンブルースリが勝った2008年である。

 この年も、ダービー馬ディープスカイが神戸新聞杯を快勝したあと、今年のレイデオロと同じように古馬GI戦線へ。ダービー3着で、神戸新聞杯でも2着と力を示したブラックシェルは、故障して菊花賞を回避した。さらに同年の皐月賞馬キャプテントゥーレも、同レース後に故障して戦列を離れていた。

 その他、春のクラシック上位組は休養後の状態が今ひとつだったり、血統的な不安を囁かれたりしていた。代わって、押し出されるようにして1番人気となったのが、オウケンブルースリだった。

 同馬は、夏の条件戦を連勝。神戸新聞杯で3着に入って、菊花賞出走の権利をつかんだ。春のクラシックには出ていないものの、春の実績馬が不在の中、夏の上がり馬で、神戸新聞杯でダービー馬らと接戦を演じたことが評価されての1番人気だった。

 そして今年も、有力馬が次々に回避していく中で、夏場に条件戦を連勝し、神戸新聞杯でダービー馬に次いで2着となったキセキが1番人気になりそうなムードにある。2008年と非常に近い状況だ。

 その2008年の結果を見てみると、オウケンブルースリが見事人気に応えたものの、2着には15番人気のフローテーションが飛び込んできた。その結果、馬連は1万7820円の高配当となっている。

 フローテーションは、春のクラシック2戦で惨敗し、休み明けの神戸新聞杯でも12着と大敗を喫した。そのため、菊花賞でも人気にはならなかったが、2歳時にはオープン特別を勝っており、3歳春にはGIIで2着になるなど、実力があることを随所で見せていた。

 しかも、同馬は父がGI天皇賞・春(京都・芝3200m)を勝っているスペシャルウィークで、母父がステイヤー産駒を多く出しているリアルシャダイと、生粋の長距離血統だった。菊花賞で番狂わせ起こす”要素”を存分に持ち合わせていたのだ。

 では、今年はそんな馬がいるのか。フローテーションと似たような雰囲気が漂うのは2頭いる。ウインガナドルとプラチナヴォイスだ。


古馬混合の重賞でも好走しているウインガナドル

 ウインガナドルは、重賞勝ちがないゆえ、今回もそこまで人気は上がらないだろう。しかしながら、GIIIラジオNIKKEI賞(7月2日/福島・芝1800m)で2着と好走。前走でも、古馬相手のGIII新潟記念(9月3日/新潟・芝2000m)で4着と健闘している。

 ちなみに、古馬相手の重賞で好走してきた馬は、菊花賞でも好結果を残している。2007年に6番人気で2着となったアルナスラインと、2016年に9番人気で2着に食い込んだレインボーラインだ。ともに、前走は古馬相手の重賞で3着と奮闘していた。

 また、フローテーション同様、ウインガナドルは血統的な魅力もある。父は長距離巧者の産駒が多いステイゴールドであり、母父は名ステイヤーのメジロマックイーン。三冠馬オルフェーヴル、2012年の菊花賞馬ゴールドシップと同じ”黄金配合”なのである。

 一方のプラチナヴォイスは、よりフローテーションに似ている。春のGI戦で惨敗を繰り返してきたこと、それでも2歳時にはオープン特別を勝ち、今春のGIIでは3着と好走して能力の高さを早々に示していたことなどはほぼ同じ。さらに、休み明けの前哨戦でも敗れ、かなり人気を落としそうなのもフローテーションと一緒だ。

 血統を見ても、母父は菊花賞と天皇賞・春を制しているマンハッタンカフェ。長距離戦では無類の強さを見せてきた。プラチナヴォイスは、その血を受け継ぐステイヤーの可能性もある。

 かつて大波乱を起こしたフローテーションに似た、ウインガナドルとプラチナヴォイス。当時と同じような状況にある中、どちらかがフローテーションの再現を果たしてもおかしくない。 本命不在の大激戦のうえ、展開すら読めない3000m戦の死闘。淀の舞台を騒然とさせるような意外な馬が、最後に大輪を咲かせる可能性は十分だ。

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