日本独特の就活は、留学生にとって過酷な戦場だ(写真:IYO / PIXTA)

日本に留学する外国人の数は年々増えている。日本学生支援機構(JASSO)によると、2016年には 、17万1122人の外国人留学生が高等教育機関に在籍していた。これは、前年比12.5%の増加である。確かにこれは日本の大学にとっていい話かもしれない。しかし、こうした留学生のうち、日本に残って就職する人の人数はこれよりかなり少なくなる。

日本で就職しない理由はさまざまだ。たとえば、就労ビザの取得が難しいことや、就活の際に必要な特定ビザの取得がさらに困難なこと、多くの留学生が日本の生徒よりも6カ月後に卒業すること、留学生に期待される日本語能力が高すぎること、そして何より、単純に留学生にとって就活の情報が少なすぎることなどが挙げられる。また、多くの留学生たちはSNSやニュースを通じて入ってくる外国人差別や、超過酷労働の話に恐れをなしているのだ 。

留学生たちが感じる日本の「魅力」

にもかかわらず、卒業後、日本にとどまり、働こうと考える留学生も一定数いる。こうした留学生たちは、日本の何に惹(ひ)かれて残るのだろうか。

1つには、比較的安定した経済が挙げられる。国債はいまだに驚くほど高く、低成長の日々は終わりが見えないが、2020年東京オリンピックに向けて、対日投資が安定的に増えているほか、内需も比較的安定して推移すると見られている。こうした中、大学卒業者の就職率は、96.7%と高い水準となっている。

背景には、日本の労働者不足があるわけだが、日本の労働市場は多くの留学生の出身国より安定した状態にある。たとえば、私の出身国である英国では、昨年の学士号取得者のうち、高い技術や能力を必要とする仕事を得られたのは、わずか65.5%だった。一方、学士号取得者といえども、仕事の難易度が中級から低級程度の職を見つけた人は20%強となっている。

大学の新卒者が卒業後に親元に戻って、高校時代にやっていたアルバイトを再開させることも珍しいことではない。また、学生ローンがさらに増えようとも、自分に合った仕事を見つけるまでの時間稼ぎとして、大学院に行くことを選ぶ人も多い。

もう1つは、日本の企業において多言語を話せたり、グローバルな視点を持っている労働者を雇うことがブームになっているため、留学生がキャリアをスタートさせるには魅力的な市場となっている。2020年の東京オリンピックで、日本にスポットライトが当たることは間違いなく 、日本にとってもその存在感を世界で示す絶好の機会なのである。実際、日本で最も大きな英語の求人サイトGaijinPot.comをのぞくと、ITあるいは教育関係を中心につねに400以上のフルタイムの職が紹介されている。

また、1年を通じて、特に日本語と英語のバイリンガル卒業生のためのキャリアフェアが世界中で開かれており、近年は不動産、高級ブランド、電気通信といった分野からも初参加の企業も増えている。

たとえば、今年6月に開かれた「東京サマーキャリアフォーラム」では253の会社がブースを開き、6000人の学生が参加した。また、11月中旬に、米ボストンで開かれる世界最大規模の日本語・英語バイリンガル学生向け就職フェア「ボストンキャリアフォーラム」には、1万人以上の学生が参加するとみられている。供給も需要も固い。

では、留学生たち自身はどうなのだろうか。より大きな経済圏で働けるという魅力のほかに、多くの人はそれぞれ日本にとどまる個人的な理由があるようだ。

たとえば、チリ人と日本人の血を引くルナさん。流暢(りゅうちょう)な英語とスペイン語を話す彼女は、東京のトップレベルの公立大学卒業生である。日本の治安のよさ、便利さ、食べ物のおいしさのほかに、日本語を「完璧」にするために、日本で就活することを決めた。彼女の言葉を借りれば、「真のトリリンガルになるため」ということだ。

日本語能力への期待が大きい

中国語と日本語、そして英語のトリリンガルである清(キヨラ)さんも、日本のトップクラスの私立大学でビジネスマネジメントの学位を取得後、日本にとどまる予定だ。「私は日本の就活システムはとてもよくできていると思う。決められた締切日、予想できる面接の質問、そして面接やウェブテストに備えるためのテキストまである」と話す。また、清さんは、米国企業と比べて、日本企業は就活生に直接合否を伝えてくれる「親切さがある」 ことも評価している。

多くの留学生は、日本で勉強をしているうちに、日本に親近感を抱く。ヒェヨンさんは韓国出身だが、最近日本のトップクラスの公立大学で東アジア研究の学士号を取得した。彼女は現在、ゲームアプリを主に開発するITベンチャーで働いている。もともと漫画やゲーム 、ポップカルチャーに親しんでいたヒェヨンさんにとって、それは自然な選択だったといえる。

彼女もまた、GaijinPotやCraigslistといった外国人向けに求人情報を提供するサイトを利用した。「こうしたサイトは、私のように卒業してから何をしていいのかわからない人にはとても便利なサービス」と話す。

ただし、こうして日本で就職をしたいと考える留学生にとって、日本での就活は容易なものではない。たとえば、ヒェヨンさんもそうだが、留学生の多くは日本企業が高い日本語能力を求めていることを不安に感じている。

たとえば、有名私大出身のアレックスさんも、難しいことで知られるウェブテストと筆記テストが必須な金融業界への就職を希望しているが、「各企業が、基本的には同じことを聞いているにもかかわらず、それぞれに異なるエントリーシートやエッセーを出さなければならない」と困惑する。

「しかも、ウェブテストは日本語が母国語の人でも難しいと思われる問題が出題されていて、どうにもしようがない。何が目的でこんなテストをするのかもわからない。ウェブテストの結果に基づいてスクリーニングされるので、面接を受けることすらできない人も多い。幸運にもウェブテストを通過できた人よりも、その業界での経験があるような人たちが振り落とされるというケースも多い」

「多くの会社は“インターナショナルな人材”が欲しいと言っているが、彼らが主に探しているのは、平均よりも優れた英語能力を有している日本人の学生」とルナさんは指摘する。 確かに、本当に“グローバル”で”インターナショナル”な人と、単に上手な英語が話せるだけという人の間には大きな違いがある。

就活の行われ方にも疑問

真のインターナショナルな人材というのは、世界を探索し、違う文化を経験して、その知識やノウハウを日本に持って帰ってくるような人である。しかし、こういう人が、完璧な日本語能力を有していることはむしろまれだ。

多くの英語を話せる日本人も知っているとおり、語学はその言語環境に身を置けば、自然と上達する。日本企業が真のインターナショナルな人材を望むのであれば、留学生や帰国子女の日本語能力は、就活時には完璧ではないかもしれないが、いったん仕事を始めると、自然と語学能力は向上するということに気づいてほしい。

留学生は就活戦争を乗り切ろうという気持ちはあるものの、就活の行われ方に疑問を抱いている。たとえば、多くの留学生は9月に大学を卒業するが、これは日本の就活シーズンとまったく合わない。また、誰も彼もがリクルートスーツで活動をしないといけないことも理解しがたい。就活では履歴書や自己PRを通じて自らの個性を披露することを期待されるが、なぜ自分自身をいちばん表す洋服で個性を示してはいけないのか。自分の好きなスタイルで面接に臨んだほうが、よりリラックスした気分で自分のベストを出せるかもしれない。

また、日本企業が総じてゼネラリストを望む点も留学生を困惑させている。「なぜ日本企業は、特定の仕事に対する募集ではなく、応募者の専門も決めずに一気に雇いたがるのだろうか。『なぜこの会社を志願したのか』といった質問に対して、どんな仕事をするのか、どんな部門に入れられるのかもわからずに答えるのはとても難しい」とルナさんは話す。

が、それ以前に留学生が共通して直面している悩みは、「どこの会社に応募すべきか」を決めることだ。日本で勉強をするという選択さえ、すでにとてつもない人生の転換点だというのに、その次に何をするかを見極めるのは非常に難しいのだ。日本の言葉や文化、そして生活様式に自分を合わせるのに多くの時間と労力を費やしている留学生がわずか4年後に、人生の新たな決断をするのは容易なことではない。

キャリアセンターでは、レジュメのチェック、アドバイス、説明会や先輩とのネットワークや交流ができる。日本企業のリクルーターの考え方があまり想像できない留学生にとっては、とても有効な場所であると言えよう。特に、化学企業は大学で有力候補者に直接アプローチするので、そうした点においても、キャリアセンターは留学生にとってありがたい。

ここで頼りとなるのが大学側のサポートのはずだが、留学生は一様に「日本の大学からは、十分なサポートがなかった」と話す。特に、いわゆるエリート大学においては、修士号や博士号を取ろうとしている留学生のほうが、就活をしている留学生より優遇されていると感じたという。ほとんどの留学生は、キャリアセンターにおいてどのような種類の支援が提供されているのかどころか、 キャリアセンター自体がどこにあるかも知らなかった。

留学生で情報を共有できていない

前述のキャリアフォーラムは、留学生が仕事を見つける格好の場であるが、大学は留学生にこうした情報を提供していないことが多い。

有名私大に通っていたアレックスさんはこう話す。「就活の過程はとても長く厳しいものにもかかわらず、誰もが何をすればいいのかよくわかっていないように思う。しかも多くの留学生は、内定を受けてからも悩んでいるようだ。就活について役に立つアドバイスをしてくれる先輩もいなければ、学校がその役割を果たしてくれるわけでもない」と話す。

就活は、留学生にとって過酷な戦場だ。就活は日本に根付いたものであり、「留学生がそれに合わせるのが大変だから」という理由だけで変えるべきではない。そうした中でも、文化の違いや言葉の壁などを乗り越えて日本で職を得た留学生は、とても努力家で、情熱にあふれていると言えるだろう。そして、その恩恵を最も受けられるのは 、彼らを採用した企業ではないだろうか。真にインターナショナルでグローバルな人材を日本企業が望むのであれば、優秀な留学生が卒業後も日本にとどまるような仕組みを考え直してみてはどうか。まず、就活中に彼らが宿泊できる場所を提供することが、そのスタートになるかもしれない。