10月2日、東京・両国国技館で最古の大相撲トーナメント大会『全日本力士選士権』が開催された。優勝したのは、なんと秋場所を全休した稀勢の里(31)。休場中もしっかり部屋で体を動かしていたそうで、その成果を見せつけるような動きで1回戦から勝ち上がり、決勝ではベテラン豪風を危なげなく寄り切った。
 実はこの大会、稀勢の里にとって大関だった去年に続いて2連覇となる。歴史ある大会でこの偉業を達成したのは双葉山、北の湖らに続いて8人目の快挙だ。

 「非常によかった。(休場中は)体全体を鍛えてきた。おかげで、だいぶ全身を使えるようになってきている。これからも、しっかりやれば、また相撲が取れると信じてやっていきたい」
 この半年、憂鬱な顔しか見せて来なかった稀勢の里は、こう久しぶりに声を弾ませた。二所ノ関審判部長(元大関若島津)も、「休んでいた割に、体はブヨンブヨンしていなかったね」とひと安心といった表情だ。

 しかし、この結果を手放しで信じるわけにはいかない。なぜなら、まだ秋場所が終わって1週間あまりということもあり、ほとんどの力士は本調子ではない状態。秋場所を優勝した日馬富士や、九州場所で進退をかける鶴竜らは1回戦で早々に姿を消し、千秋楽にその日馬富士に敗れて涙を飲んだ豪栄道も2回戦で敗退している。対戦相手も、千代の国、大栄翔、正代、朝乃山、そして決勝戦の豪風と平幕ばかり。
 「しかも、相撲内容はいずれも得意の左四つに捕まえて寄り切るというワンパターン。課題である左からのおっつけは、ほとんど見られませんでした。本番ではこんな簡単な相撲にはまずなりません、まだまだ安心できませんよ」(担当記者)

 そう言えば、秋巡業初日(10月5日)の千葉県八千代市巡業で、新鋭の朝乃山を相手に17番取り、15勝2敗と圧勝したが、左を封じられるとあっさり負けている。横審は、「先場所休んだので、今度は出なきゃ、という責任感だけで出るのは困る。横綱らしい結果を出せると思ったら出て欲しい」と厳しく注文をつけている。
 『全日本力士選士権』は、いわば鬼の居ぬ間の優勝などと言われている。本場所は横綱も崖っぷち、まさしく“(横)綱わたり”状態なのだ。