寝すぎで頭痛になる原因とは?|すぐに解消したいときの対処法

寝すぎたときに、「疲れが取れるどころか、突然に頭痛に襲われてしまって1日憂鬱…」ということはありませんか? 寝すぎで起こる頭痛のタイプごとの対処法を東京頭痛クリニックの篠原伸顕(しのはらのぶあき)院長に伺いました。
目次
寝すぎにより起こる頭痛のメカニズム寝すぎによる頭痛の解消法寝すぎてしまう原因寝すぎの予防法
寝すぎにより起こる頭痛のメカニズム
寝すぎによる頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛の2つが考えられます。それぞれどのような症状で、なぜ起こるのかを確認していきましょう。
片頭痛
寝すぎによる片頭痛の症状
目の奥や頭の側面、ときには頭の全体に、脈を打つような強い痛みが現れます。
頭をえぐるよう、刺すようと表現されることもあります。
痛みは急に出てくることが多く、1日中続いているのではなく、治まったり、痛くなったりと繰り返し出てきます。数分から数十分ほどの間、痛みが強くなり、1日に5回以上繰り返すことがあります。薬を飲まなければ数時間から72時間にわたって、変動する痛みに悩まされます。頭を左右に振ったり、おじぎをしたり、運動したりしたときなど、頭を動かす動作に伴って痛みも強くなるのが特徴です。頭痛と同時に吐き気や嘔吐がある場合があります。
全体の2割程度の人に、頭痛を感じる前、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、まぶしい光や視野を横切るギザギザした線が見えることがあります。光や音、匂いなどに過敏になることも特徴です。
寝すぎによる片頭痛の原因
寝すぎると、睡眠中に優位になる副交感神経の働きが活発になり、頭蓋骨の中の血管が拡張します。
血管が広がると、血管の周りにある三叉(さんさ)神経が圧迫され、刺激を受けます。この刺激が大脳に伝わり、痛みとして認識されることで片頭痛が起こります。
心臓の脈に合わせて周囲の神経に刺激が伝わるので、拍動に合わせてズキズキと痛みが生じてきます。目を覚ますと、交感神経が優位になって、心臓の拍動が早まり、血管がさらに広がって三叉神経が刺激され、痛みが強くなります。
緊張型頭痛
寝すぎによる緊張型頭痛の症状
頭を締め付けるような鈍痛が起こります。痛みは、後頭部の下の方から、次第に頭全体に広がっていき、時間をかけて強くなっていきます。
痛みの頻度はまちまちで、1日のうちに終わる痛みが月に10回以上起こる場合、1〜15日間痛みが続く場合、15日以上継続的に痛みが続いていく場合があります。
片頭痛とは異なり、頭を左右に振ったり、おじぎをしたり、運動したり、頭を動かす動作によって痛みが強くなることはありません。また、吐き気を感じることはあっても、実際に吐くことがありません。
寝すぎによる緊張型頭痛の原因
寝すぎで緊張型頭痛が起きるのは、寝る姿勢が悪いため筋肉が緊張し、こめかみ辺りの筋肉である側頭筋、肩甲骨当たりの筋肉である僧帽筋(そうぼうきん)などがこわばって固くなってしまうことからです。頭痛とともに肩こりを同時に感じる場合もあります。
精神的なストレスから、筋肉が緊張し緊張型頭痛を起こしてしまう場合もあります。ストレスをためやすいのは、生真面目な人や律儀な人、不安や心配事を抱えている人だといわれています。
寝すぎによる頭痛の解消法
寝すぎに伴う頭痛が起きたときはどのように解消したらよいのでしょうか? 頭痛のタイプごとに解消法を確認していきます。
片頭痛
片頭痛は、脳内の広がった血管を収縮させると解消されます。具体的には以下の3つです。
首の後ろを冷やし、両耳の後ろをもむ
首の真後ろのくぼんだところ「盆の窪(ぼんのくぼ)」と呼ばれるところを冷やすのが有効です。冷却シートや冷えたタオル、氷嚢(ひょうのう)などを使うと良いでしょう。盆の窪は揉むと片頭痛が悪化するので避けましょう。両耳の真後ろの頭蓋骨と首の筋肉の境目を揉むと、痛みがやわらぎます。
薄暗く静かな涼しいところで休む
片頭痛の痛みが起きているときには、光や音などに過敏に反応しやすくなるので、明るいところや、騒音があるところは避けて、薄暗く静かなところでゆっくりと休みましょう。さらに、片頭痛は、体温が高くなると痛みが悪化するため、外の気温が高いときは外出を控え、室内の涼しいところで過ごしてください。
起床後にカフェインを摂取する
片頭痛は脳内の血管が広がることが症状の原因となるため、血管を収縮させるカフェインを摂ると痛みが軽減します。起床後にコーヒーや紅茶などを1杯飲みましょう。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、筋肉の緊張をほぐすような解消法が有効です。
寝る姿勢を変え、筋肉をほぐす
寝る姿勢を良くすると、緊張した筋肉がほぐれやすくなります。枕を低くしたり、布団の歪みを直したりして、寝る環境を整えましょう。
また、マッサージや鍼灸を受けて血流を良くすると、筋肉の緊張がほぐれ、痛みがやわらぐことがあります。
運動を取り入れ、入浴で休息を
筋肉が緊張しているのをほぐすためには、適度な運動が効果的です。ウォーキングやランニングなどを行うことで、筋肉の緊張がほぐれます。さらに就寝の1時間ほど前までに、湯船に浸かって、筋肉をじんわりと温めると、こめかみや肩などの筋肉がほぐれて、緊張型頭痛が軽減されます。
解消法を試しても頭痛が改善されない場合や、病気の可能性がある場合は医療機関を受診してください。
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寝すぎてしまう原因
寝すぎてしまうのは、適切な睡眠時間が確保できていなかったり、睡眠の質が悪かったりするためかもしれません。ここでは、寝すぎてしまう原因について解説します。
睡眠時間が不足している
平日の睡眠時間が不足していると、休日はなかなか起きられず、寝すぎてしまうことがあります。寝だめは睡眠不足の解消になりません。
睡眠の質が悪い
コーヒーやお茶に含まれるカフェインを摂りすぎたり、就寝前にスマートフォンを見てブルーライトを浴びたりすると、脳が覚醒したまま眠りに入ることになり、睡眠の質が下がります。ほかにも、夜にコンビニエンスストアのように明るいところで光を浴びてしまうなど、入眠前に覚醒を司る交感神経が活発になるような行動をとると、入眠が妨げられ、深い眠りにつくことができなくなります。このように、睡眠の質が下がると十分に疲労回復ができず、いつまでも眠気が続いて、寝すぎてしまいます。また、カフェインの利尿作用によって、知らず知らずに睡眠中に脱水傾向になることで、身体に疲れや倦怠感を感じ、起きるのが辛くなって、寝すぎているという可能性があります。
過眠症状が出る病気
ロングスリーパーではないのに、頻繁に10時間以上も眠ってしまうことが続く場合、寝すぎは病気の症状かもしれません。うつ病、糖尿病といった病気の可能性があります。
うつ病
非定型うつ病と呼ばれるタイプは、夕方や夜間にひどい倦怠感を感じ、過眠傾向に陥ります。非定型うつ病とは、「気分の落ち込み」が2週間以上続き、以下の症状が2つ以上みられる場合のことを指します。
糖尿病
糖尿病の場合、睡眠時間が5時間以内の睡眠不足の人が多くなる一方で、睡眠時間が長くなり、寝すぎてしまう人もいます。糖尿病の症状である、のどの渇き、痛みやしびれ、によって眠りが妨げられ、睡眠の質が下がります。これにより、眠気が残って、寝すぎにつながってしまいます。
寝すぎの予防法
寝すぎによる頭痛を起こさないためには、ぐっすり眠り、スッキリと起床できる状態を保つことが大切です。最適な睡眠時間をとったうえで、普段からできる睡眠の質を上げる方法を紹介します。
最適な睡眠時間とは?
最適な睡眠時間は人によって異なります。ここでは、最適な睡眠時間を知る方法を紹介します。
起床して4時間後の眠気を確認
起床から4時間に眠気が残っているかどうかをチェックしてみてください。頻繁にあくびが出たり、身体にだるさを感じたりしているようなら、まだ眠気があるという目安になります。本来であれば、起床から4時間後は最も頭が冴えているはずの時間帯です。眠気は「睡眠が不足しているので眠りなさい」というサイン。ここで眠気があるようならば、睡眠時間が足りていない可能性があります。
自然に目覚める時間をチェックする
目覚まし時計をかけたり、人に起こしてもらったりせず、自然と目覚めるまで眠ります。最初の1、2日はそれまでの睡眠不足の影響などで、目覚めは悪いかもしれませんが、3日目以降は、自分の本来必要としている睡眠を取れたタイミングで目が覚めます。その時の睡眠時間が最適な睡眠時間の目安です。夏休みなど決まった時間に起きなくてもよい、1週間を選んで調べてみましょう。
睡眠ログで、就寝時間と起床時間を記録する
「睡眠ログ(睡眠記録帳)」を活用して、自分の睡眠時間を客観的に目で見えるようにするのも良い方法でしょう。起床時間と就寝時間を日々記録しておけば、睡眠時間を明らかにできます。さらに、目覚めた時にどれくらいすっきりしたかの「目覚めの良さ」と「日中のパフォーマンス」も記録することで、どれくらいの睡眠時間の時に、自分が満足できる睡眠を取れたのかを振り返ることができます。目覚めの良さと日中のパフォーマンスは主観的に○×△で書き記しておくだけでも参考になります。3日記録をとるだけでも睡眠の課題が発見できるでしょう。目覚めの良さやパフォーマンスのよい日の睡眠時間が、自分に合った最適な睡眠時間といえます。
睡眠の質を上げる方法
運動を習慣にする
適度な運動は、血行を良くして、冷え性や肩こりを軽くし、疲労回復につながります。1日に30分ほど、ウォーキングなどの軽い運動を習慣にすると良いでしょう。運動が難しい時には、就寝の1時間前に軽い体操やストレッチをすると、筋肉がほぐれ、血行が良くなり、体温が上昇します。いったん上がった体温が、徐々に下がってくるときに、眠気が訪れるので、スムーズな入眠と、深い睡眠を得やすくなります。
仮眠をとる
日中に眠気があるときには、午後の3時までに20分から30分ほど仮眠を取ることもよいでしょう。夜の睡眠時間の不足を補いつつ、疲労の回復にもつながります。
夜はぬるめのお湯につかる
夜の入浴のときに、ぬるめのお湯に浸かりましょう。熱いお湯に浸かると、睡眠前に身体が覚醒してしまいます。理想的なお湯の温度は38度〜40度ほどです。全身浴でも半身浴でも構いません。体温をいったん緩やかに上げると、湯上がりには体温が徐々に下がっていき、入眠しやすくなります。また、筋肉もほぐれて、疲れを軽減する効果もあります。
寝室を快適な環境にする
カモミールやラベンダー、シダーウッドの香りをかぐと、気持ちが落ち着くのでスムーズな入眠に効果的です。さらに、寝室を暗くすると、夜間に増えてくる睡眠ホルモン・メラトニンの分泌が促され、入眠しやすくなります。快適な寝室の温度は16〜26度、湿度は50%前後といわれています。布団の中は33度、湿度は55%を目安に調節すると快眠しやすくなります。
参照
『ハリソン内科学第5版』デニス・L・カスパーほか編 ,福井次矢ほか監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
『カプラン臨床精神医学テキスト第3版』ベンジャミン・J・サドックなど編著 ,井上令一監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
『家庭の医学』主婦の友
photo:Getty Images
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