例年、秋の古馬GI戦線に向けて、有力馬がその”叩き台”として臨むことが多いGII京都大賞典(10月9日/京都・芝2400m)。昨年はキタサンブラックが、一昨年はラブリーデイが、GI馬の貫禄をここでも示して、その後の栄冠獲得につなげてきた。

 今年はどうか。人気を集めそうなのは、GI天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)の2着馬シュヴァルグラン(牡5歳)と、昨年のGIジャパンカップ(東京・芝2400m)など、3度のGI2着があるサウンズオブアース(牡6歳)、そして同じ舞台で行なわれた年明けのGII日経新春杯(1月17日/京都・芝2400m)を制したミッキーロケット(牡4歳)といったところだろう。

 過去、京都大賞典は比較的堅い決着が多いだけに、これらの有力馬を買っておけばよさそうなものだが、前述のキタサンブラックやラブリーデイと違って、いずれもGI未勝利。他のメンバーを見ても、GI2着の経験を持つ馬はトータル6頭もいるが、今年はGI馬の出走がなく、絶対的な存在が不在で多分に波乱の要素を含んでいる。

 日刊スポーツの松田直樹記者は、今年のメンバーを見渡してこう語る。

「同じ週に行なわれる毎日王冠(10月8日/東京・芝1800m)は、GI馬が5頭も参戦。それと比較して、こちらは少し寂しいメンバー構成になったと言えます。また、こちらはGI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)より、その先にあるジャパンカップ(11月26日/東京・芝2400m)を意識した、長距離指向が強い馬たちがそろった印象です。

(馬券的には)2000年以降、連対馬の大半(34頭中24頭)が3カ月以上の休み明けでも結果を出していることから、今年も単純に長距離で実績を残している馬を探せばいいような気がしますが、”一枚落ち”のメンバーだからこそ、今年はむしろこの一戦に向けてしっかり準備してきた馬に魅力を感じます」

 中日スポーツの大野英樹記者も、今年の顔ぶれからして、過去の傾向どおり堅い決着で収まるかどうか、疑問を持っている。

「GIを勝てそうで勝てなかった馬たちが(人気の)上位を形成。その分、荒れるケースを想定したくなりますね。実績上位であることを含めて、『今回は(夏場に)使われた上積みがある』と藤岡健一調教師(栗東)が語るサウンズオブアースを1番手に考えていますが、同師が『年齢的な面がどうか』と歳を重ねての衰えを危惧しているのも気になりますし……。

 天皇賞・春では2着と激走したシュヴァルグランも、続く宝塚記念(8着。6月25日/阪神・芝2200m)では逃げの手に出て失速しました。”巻き返しの秋”を期待したいところですが、天皇賞・春があまりにタフなレースだったこともあり、そこからの回復度や現在の状態に関しては、実際にふたを開けてみないとわからない部分があります」

 確かに天皇賞・春で好走した馬たちは、勝ったキタサンブラック、2着のシュヴァルグランと、宝塚記念では惨敗(キタサンブラックは9着)。3着のサトノダイヤモンドも、期待されたフランス遠征で精彩を欠いて、凱旋門賞では15着と大敗を喫した。

 その他、5着アルバートも不利があったとはいえ、秋初戦のGIIオールカマー(9月24日/中山・芝2200m)で7着と馬群に沈んだ。とにかく、天皇賞・春の上位組は、ことごとくその後の成績が芳しくなく、消耗の激しいレースだったことをうかがわせる。

 それでも、7着だったゴールドアクターが宝塚記念で2着と挽回したように、天皇賞・春組でも比較的消耗の少なかった下位の馬たちなら巻き返しが期待できる。松田記者は、まさしくそれに該当する馬に注目する。

「天皇賞・春は8着だったトーセンバジル(牡5歳)です。GIII新潟記念(9月3日/新潟・芝2000m)を叩いて、今回は中4週での参戦となります。新潟記念では前残りの展開で本来の力を出し切れずに7着にとどまりましたが、それでも最速の上がりをマークして勝ち馬とはコンマ2秒差。悲観する内容ではありませんでした」

 着順はともかく、確かに新潟記念の走りからは天皇賞・春のダメージは残っていないように見える。松田記者が続ける。

「(トーセンバジルは)重賞ではこれまで、3着2回、着外5回と勝ち負けを演じるまでには至っていませんが、管理するのは狙ったレースでの勝負強さが光る藤原英昭厩舎(栗東)。その仕上げに関して、今回は食指が動かされます。

 もともと2000mより長い距離で好走を重ねてきた馬。京都外回りの2400m戦自体は初めてですが、スローからの決め手勝負となれば、勝機は十分にあります。久々を叩いた上積みも考えれば、実績馬を逆転する可能性も高いと思いますよ」

 大野記者も、新潟記念の出走馬から穴馬の名前を挙げる。

「ハッピーモーメント(牡7歳)が、かなり面白い存在だと思います」


叩き2走目で上昇ムードにあるハッピーモーメント

 適度な間隔を取りながら、メリハリのきいた使い方をする角居勝彦厩舎(栗東)らしく、今回は休み明け2戦目となるが、「そこが狙い目」と大野記者は強調する。

「春のGII目黒記念(5月28日/東京・芝2500m)では、13番人気で3着。このときも、休み明け2走目でした。その目黒記念以来となる新潟記念では9着に終わりましたが、勝ち馬からはコンマ3秒差。道中は前目につけて、最後にバタッと止まることもありませんでした。ひと叩きされて、開幕週の京都で、マイペースで先行して運べれば、侮れませんよ」

 今回のメンバーで先行しそうなのは、11カ月ぶりの出走となるカレンミロティックぐらいか。宝塚記念でハナを切ったシュヴァルグランも本来は好位抜け出しタイプ。人気どころが中団から後方でけん制し合うようなら、ハッピーモーメントがアッと言わせてもおかしくない。

 同じく、トーセンバジルとハッピーモーメントを穴馬に推すのは、デイリースポーツの大西修平記者だ。

「トーセンバジルは、前走の新潟記念7着という着順が嫌われて人気を落とすようなら、妙味があります。新潟記念では前残りのスローペースが合わなかっただけ。ひと叩きした効果は絶大で、攻めの気配も格段に良化しています。

(新潟外回りの2000mはコーナー2つだったが)コーナー4つのレースのほうが結果が出ており、距離延長とともに条件は好転。この相手関係なら、十分にやれそうな雰囲気があります。

 ハッピーモーメントは前走で伸び切れませんでしたが、休み明けでしたからね。勝ち時計が1分57秒9と、速い決着になったのも敗因かな、という気がします。久々の2000m戦でスムーズに流れに乗れず、なし崩し的に脚を使わされた印象があります。

 1度使われて、調教の動きからも良化が感じられます。京都コースも3勝を挙げている得意な舞台。距離が延びて、道中うまくためがきくようなレース運びができれば、一発あっても驚かないと思いますよ」「堅い」と言われる一戦だが、過去には3連単の配当が300万円を超える”大波乱”も起こっている。GI馬不在の中、今年は同様の結果も期待できるのか。その立役者となるのは、はたしてどっちだ。

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