ホームレス社会復帰に関心を
東京都と特別区(23区)が整備したホームレスの自立支援のための10番目の施設「千代田寮」が完成し、同寮を含めると10施設で1029人が、都の支援を受けながら社会復帰に向けての準備ができるようになった。貧困や生活問題を専門とする日本女子大学の岩田正美教授にホームレス問題について聞いた。
――「千代田寮」など施設の意義は?
行き場所のないホームレスが、落ち着いたところで相談できるという点で評価できる。路上や公園などから相談センターに向かうのとは違った効果が期待できるのは確か。ただ、地域によって路上生活者数にばらつきがあり、入りやすいところとそうでないところがある。
長期間ホームレスをしている人よりも、野宿経験の浅い人の方が施設を利用する傾向にある。何年も路上生活している人は自己努力をし、収入を得る術を持っている人が多い。一時保護センターや自立支援センターなどに行っても成功する保証はないので、自分の居場所を人に取られたり、仕事を休むことで収入を得る道が閉ざされたりする危険性のあるシェルターには魅力を感じないのだろう。
――長期間ホームレスをしている人に対する施策は?
臨時就労と安価なアパート提供で自立を促す「地域生活移行支援事業」は、長期のホームレス経験者にも魅力的なようだ。半年間はわずかながら就労の機会を与えられる。
――施設やアパートに入った人の社会復帰の状況は?
一時保護センターから自立支援センターを経由して社会復帰するのは入所者の25%程度。しかし、社会復帰後の仕事がうまく行かないなどの理由で再びホームレスになる人もいる。
ホームレスになるのは「仕事がない」ということだけが理由ではなく、「社会的ネットワークの欠如」が原因で、学歴の低い人、未婚の人、離婚経験者などがホームレスになる確率が高いと言われている。社会復帰した人が他人や社会とのつながりを保てるよう、フォローアップが必要。社会がもっと関心を持つことが重要。
――関心とは?
欧米などでは宗教団体がバックアップしたり、企業が多額の寄付をしてホームレス問題に取り組んでいる。また、イギリスのチャールズ皇太子は、この問題に関心を持ち、ホームレスのところを訪ねたりもしている。
日本でも企業、社会、個人が参加し、解決できれば素晴らしい。もう少し目を向け、多様なプログラムが用意されればと思う。ホームレスにも、いろいろな人がいるのだから解決策も多様であるべき。
――就労自立実績が上がっているとの報告がある一方、ホームレス数にあまり変化がないようだが?
いろいろな統計があるが、ホームレスの平均年齢は、10年前も今も、約55歳でほぼ変化していない。社会復帰が進んでいないというより、繰り返し供給されていると考えられる。ニートやフリーターなどの問題と共通する部分もあるが、家族などを含め、社会とのつながりの切れる50代でホームレス化するという説もある。【了】
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ホームレス自立支援施設完成
――「千代田寮」など施設の意義は?
行き場所のないホームレスが、落ち着いたところで相談できるという点で評価できる。路上や公園などから相談センターに向かうのとは違った効果が期待できるのは確か。ただ、地域によって路上生活者数にばらつきがあり、入りやすいところとそうでないところがある。
――長期間ホームレスをしている人に対する施策は?
臨時就労と安価なアパート提供で自立を促す「地域生活移行支援事業」は、長期のホームレス経験者にも魅力的なようだ。半年間はわずかながら就労の機会を与えられる。
――施設やアパートに入った人の社会復帰の状況は?
一時保護センターから自立支援センターを経由して社会復帰するのは入所者の25%程度。しかし、社会復帰後の仕事がうまく行かないなどの理由で再びホームレスになる人もいる。
ホームレスになるのは「仕事がない」ということだけが理由ではなく、「社会的ネットワークの欠如」が原因で、学歴の低い人、未婚の人、離婚経験者などがホームレスになる確率が高いと言われている。社会復帰した人が他人や社会とのつながりを保てるよう、フォローアップが必要。社会がもっと関心を持つことが重要。
――関心とは?
欧米などでは宗教団体がバックアップしたり、企業が多額の寄付をしてホームレス問題に取り組んでいる。また、イギリスのチャールズ皇太子は、この問題に関心を持ち、ホームレスのところを訪ねたりもしている。
日本でも企業、社会、個人が参加し、解決できれば素晴らしい。もう少し目を向け、多様なプログラムが用意されればと思う。ホームレスにも、いろいろな人がいるのだから解決策も多様であるべき。
――就労自立実績が上がっているとの報告がある一方、ホームレス数にあまり変化がないようだが?
いろいろな統計があるが、ホームレスの平均年齢は、10年前も今も、約55歳でほぼ変化していない。社会復帰が進んでいないというより、繰り返し供給されていると考えられる。ニートやフリーターなどの問題と共通する部分もあるが、家族などを含め、社会とのつながりの切れる50代でホームレス化するという説もある。【了】
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