秋の古馬GI戦線を前にして、その前哨戦となる重賞が東西で開催される。関東では10月8日にGII毎日王冠(東京・芝1800m)が、関西では10月9日にGII京都大賞典(京都・芝2400m)が行なわれる。

 果敢に古馬戦線に挑む3歳馬や、初のGIタイトルを目指す上がり馬、さらに実績豊富な実力馬など、それぞれのレースに多彩なメンバーが顔をそろえた。そのなかでも注目したいのが、復活に向けて牙を研ぎ、毎日王冠に臨む昨年のダービー馬マカヒキ(牡4歳)である。


昨年の凱旋門賞で惨敗して以来、パッとしないマカヒキ

 ちょうど1年前、今年はサトノダイヤモンドが挑んだ凱旋門賞(シャンティイ・芝2400m)に出走。そこで14着と大敗して以来、やや低迷している。帰国後初戦のGII京都記念(2月12日/京都・芝2200m)では、1番人気に推されながら3着。今年からGIに昇格した大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)でも2番人気で4着と、大崩れはしていないものの、「ダービー馬」の看板を背負う馬としては、いささか物足りない成績が続いている。

 ダービー馬はダービーで燃え尽きてしまうのか――。

 過去を振り返ってみても、ダービー馬のその後の成績が振るわないことは少なくない。最近でも2014年のダービー馬ワンアンドオンリーは、古馬になってからは未勝利。グレード制が導入された1984年以降、シンボリルドルフからマカヒキまで33頭のダービー馬のうち、実に21頭もの馬が古馬となってから勝利できていないのだ(3歳時に引退した馬も含む)。

 単に早熟であったり、ダービーですべてを出し切ってしまったり、その後にライバルが台頭したり、その理由はさまざまだが、ある意味”ダービーの呪縛”のようなものが存在するのかもしれない。はたして、マカヒキはこの”呪縛”から逃れることができるのだろうか。

 デイリー馬三郎の吉田順一記者は、マカヒキは3歳春の時点で、すでに”ある部分”においての完成度が高かったという。

「皐月賞やダービー時においては、き甲(馬の首と背中の境あたりの膨らんだ部分)の抜け具合やお尻の形からすれば、(マカヒキは)まだ成長段階にありました。しかし、他馬に比べると、馬体のバランスがよく、トモ腰の完成度はかなり上回っていました。それが、デビューからの3連勝、皐月賞2着、ダービー1着という好成績につながったのだと思います。

 当時、しのぎを削っていたディーマジェスティやサトノダイヤモンド、リオンディーズ、エアスピネルなどと比べても、四肢の運びがきれいで、ブレない走法が際立っていました。立ち気味のつなぎ(蹄から球節の間)が生かされて、速い脚が使える利点となっていたのも事実でしょう」

 ライバルたちと比べても、完成度が高かったというマカヒキ。それでも、成長の余地は残していて、実際に秋を迎えても成長曲線は上向きにあった。フランス遠征初戦のGIIニエル賞(シャンティイ・芝2400m)では楽勝した。

 ここまではよかったが、凱旋門賞での惨敗から歯車が狂ってしまったようだ。吉田記者が再び語る。

「前哨戦のニエル賞は勝ちましたが、本番では大惨敗に終わってしまいました。それまでは、負けても最後は一番脚を使っていたことから、走ることへのコンプレックスは生まれなかったのですが、こうした馬が惨敗すると、その結果から馬の精神面が崩壊してもおかしくありません。

 そこから立ち直るには、勝利で自信を取り戻すしかないのです。が、復帰初戦の京都記念ではまったく伸び切れず、失望に包まれての3着。トモが少しこじんまりと映って完調手前だったとはいえ、最後はフワッとしていて闘争心を発揮できていませんでした。あれは、凱旋門賞ショックを払拭できていないことを意味していたと思います。また、ダービーと同じ体重だったということは、(トモ以外の)他の部分に緩さがあったことの証拠です。

 ひと叩きされた大阪杯では(馬体は)全体的にボリュームが出て、上積みを感じさせるシルエットでしたが、結果的には勝ち負けできるポジションで競馬ができず、見せ場も作れないまま4着に敗れました。とはいえ、前々の決着で勝ち馬からコンマ4秒差。ここまで詰め寄った末脚には多少の希望が見えたと思います」

 大阪杯のあとは、宝塚記念に向かうと見られていたが、早々にこれを回避することを決定。放牧に出されて、秋に向けて備えることになった。吉田記者は「この決断が、”呪縛”を解くための、オーナーと調教師の英断だった」と言う。

「春にあのままズルズルとレースを使って負け癖をつけてしまうと、”復活”の道がなくなることは、過去に数多くのダービー馬が証明しています。しかしマカヒキは、惨敗の凱旋門賞からおよそ1年で2戦しかしていません。そのことが、この馬の”変われる”動機づけになるのではないでしょうか」

 今回、マカヒキはダービーと同じ距離の京都大賞典ではなく、1800m戦の毎日王冠に駒を進めてきた。そもそも、全姉のウリウリが短距離からマイル指向の馬だったことから、ダービー時点でもマカヒキへの距離不安は囁かれていた。そういう意味では、この距離短縮は復活への好材料になるかもしれない。

 そんな好材料を生かすためにも、気になるのは現在の状態である。1週前の追い切りでは、今回から手綱を取る内田博幸騎手が関東から栗東まで駆けつけて感触を確かめたというが、その走りはどうだったのだろうか。吉田記者がその様子を伝える。

「今回のマカヒキの体つきは、大阪杯のときほどトモのボリュームはありませんが、京都記念のときよりは上です。年齢を重ねたことで前駆体系になって、血統的なものからか、(体系的には)マイラー色が濃くなってきた印象を受けます。皮膚の薄い上々の質感で、高速馬場に対応できるスカッとしたフォルム。仕上げに抜かりはありません。

 気性面も春2戦に比べると、首や耳の向きが違って明らかに集中力が増しています。これは3歳の春先と同様の仕草で、馬体と気配ともに春以上と判断していいでしょう。

 ウッドチップと坂路でメリハリのある調教が施され、今までにないくらい時間をかけて(レースに向けて)しっかりと準備をしてきています。稽古ではいつも動くタイプで、好調時と遜色ない走りを見せていました。放牧先での調整もケチをつけようがなく、馬体と動きからは十分に力が出せそうな雰囲気が漂ってきています。ここで、結果の伴った”完全復活”は見られなくとも、復活にメドが立つ走りはできそうですよ」“ダービー馬の呪縛”を打ち破り、もう一度頂点に立つ走りを見せられるのか。マカヒキの”再出発”に注目である。

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