吉村市長の9月25日のツイート。慰安婦像が公有地に設置されれば「姉妹都市の信頼関係は消滅する」としている

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全米各地で設置が進む慰安婦像をめぐり、サンフランシスコ市と大阪市の姉妹都市関係が危機を迎えている。サンフランシスコ市内の私有地に慰安婦像と碑文が設置され、設置されているスペースを市に寄贈する話が持ち上がっている。これが実現すれば、結果的に公有地に慰安婦像が設置されてしまうことになる。大阪市の吉村洋文市長はこれに反発し、「単なる日本批判」だと反発。仮に公有地に慰安婦像が設置されれば姉妹都市関係を見直すとする書簡をエドウィン・M・リー市長に送った。リー市長は返信の中で、姉妹都市見直しの検討に「大きな落胆」を表明する一方で、「地域に対して応えていくのが私の責務」だとして寄贈の申し入れを受け入れた結果慰安婦像が公有地に移管される可能性を否定せず、両者の主張は平行線をたどっている。

慰安婦像がある展示スペースが市に寄贈される可能性

慰安婦像は中国系の団体が設置し、2017年9月22日に除幕式が行われた。慰安婦像は公園内の展示スペースにあるが、団体はこのスペースを市に寄贈する方針だ。これを受け、吉村市長は9月29日付で、慰安婦像とともに設置された碑文の記述には

「不確かで一方的な主張があたかも歴史的事実として刻まれた」

ものであるとして、

「歴史の直視ではなく単なる日本批判につながるものではではないかと大いに懸念している」

とする公開書簡をリー市長に送った。その中では、

「私自身、長年培った良好な姉妹都市関係の継続を切に望んでいるが、もしサンフランシスコ市の意思として、公有地への慰安婦像及び碑の移管がなされることになると、大変残念ではあるが姉妹都市関係を根本から見直さざるを得ない」

と警告している。

姉妹都市終了検討に「大きな落胆」

一方のリー市長は10月2日付で返信を発信し、大阪市が4日に公開した。返信では、姉妹都市関係終了の検討に

「大きな落胆を覚えている」

と表明。これまでの姉妹都市関係の意義を強調しながら、関係が終了してしまえば

「両市の市民が強固な協調の将来を築くことができるよう、懸命な努力をしている人々が不利をこうむることになれば、それは恥ずべきことではないかと思料する」

とした。慰安婦像については「民間資金によるプロジェクトとして、9月22日に除幕された」ことが触れられているだけで、大阪市の主張に対する特段の反論や論評はない。ただ、

「公選の職にある者として、たとえ批判にさらされることがあろうとも、地域に対して応えていくことが私の責務である」

とあり、寄付の申し出を受け入れることを示唆する内容だ。

両都市の姉妹都市関係は17年で60年目の節目にあたる。リー市長の返信を受け、吉村市長の対応が注目される。ただ、日本政府や大阪市は、2025年国際博覧会(万博)を大阪に招致することを目指している。強硬姿勢を国際社会に印象付けた場合、招致活動にも影響する可能性もある。