総勢18頭の出走馬が出揃い、枠順も決定して、あとは本番を待つばかりの今年のGI凱旋門賞(ロンシャン・芝2400m)。エネイブル(牝3歳、父ナサニエル)が2番枠、ユリシーズ(牡4歳、父ガリレオ)が1番枠、ブラムト(牡3歳、父ラジサマン)が4番枠と人気どころは内枠に集中した。

 また、5頭出しのクールモア勢も名手ライアン・ムーア騎乗のウィンター(牝3歳、父ガリレオ)が8番枠、アイダホ(牡4歳、父ガリレオ)が7番枠、オーダーオブセントジョージ(牡5歳、父ガリレオ)が9番枠。有力馬とペースを握る馬が概(おおむ)ね真ん中から内の枠を引いたことになる。13番枠のサトノダイヤモンド(牡4歳、父ディープインパクト)と5番枠のサトノノブレス(牡6歳、父ディープインパクト)の日本勢がこれにどう挑むか、序盤の展開が大きくレースに影響を及ぼしそうだ。

 枠順発表の結果を受けて、前評判はエネイブル中心の空気が強まっている。しかし、一筋縄でいかないのが凱旋門賞の歴史。昨年も、終わってみればまさかのクールモア勢1〜3着独占で、波乱の結果となった。ならば今年、波乱を呼ぶとしたらどの馬か。地元や英国で活動する記者たちに”オススメの穴馬”を聞いてみた。


フォワ賞勝ち馬、チンギスシークレットは過小評価? 穴馬として注目!

「エネイブルが中心と見られるのは、仕方がないわよね」

 そう肩をすぼめるのは、フランスの競馬専門紙『パリチュルフ』の女性記者、マリーポーリーン・ガローさん。

「GIを4連勝の内容がパーフェクト。特に”キングジョージ(キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、7月29日/アスコット・芝2400m)”で古馬牡馬の超有力どころを相手に楽々と勝ってしまうのだから、これに逆らうのはちょっと勇気がいると思います。ただ、そうした馬でも簡単に勝てないのが凱旋門賞です」

 そう分析するガロー記者が穴馬として名前を挙げたのは、ドイツのチンギスシークレット(牡4歳、父ソルジャーホロー)だ。前哨戦のGIIフォワ賞(9月10日/シャンティイ・芝2400m)では、サトノダイヤモンドらを相手に勝利を収めている。

「意外に軽視されているけれど、前走のフォワ賞の内容もかなりいいものでしたし、その前にドイツで勝ったレースも、かなり価値のあるものでした」

 チンギスシークレットは3走前のGIIハンザ大賞(7月1日/ハンブルク・芝2400m)では、昨年のジャパンカップで6着となったイキートス(牡5歳、父アドラーフルーク)を下し、2走前のGIベルリン大賞(ホッペガルテン・芝2400m)では昨年の英国GIエクリプスSの勝ち馬ホークビルを破ってGI初制覇を果たしている。勢いではエネイブルにも負けていない。ブックメーカーでは12〜13倍のオッズをつけている。

 チンギスシークレットを推す記者は他にもいる。

「ニエル賞(9月10日/シャンティイ・芝2400m)を勝ったクラックスマンが出走していたら、当然のように人気になっていたはず。そう考えると、同じだけの評価を集めてもおかしくないのにこのオッズはオイシイだろ?」

 そう話すのはイギリスを中心に活動する競馬ジャーナリスト、ティム・キャロル記者だ。母国だけでなく、ドバイやオーストラリアなどでもテレビで解説を行なっている。

「ここ数戦で勝った相手がイキートスやホークビルなど、いい馬ばかり。フォワ賞のサトノダイヤモンドにも、馬場適性や仕上がり途上だったとはいえ、あれだけの差をつけた。つまりは、チンギスシークレットはブックメーカーのオッズほど人気上位馬に見劣りはしていない、と思うんだ。

 シャンティイで一度結果を出したことも大きいし、渋りそうな馬場もこの馬に大きく味方するんじゃないかな」

 期せずして、2人続けてドイツ調教馬の名前が挙がったが、最後に”穴馬”という意味合いでは意外な名前を挙げるのが、イギリスの老舗競馬メディアである『レーシングポスト』のパリ駐在を務めるスコット・バートン記者だ。

「今年は4頭の争いだと思います。エネイブルはもちろん、ユリシーズ、ブラムト、そしてここにサトノダイヤモンドが加わります」

 なぜ、あえて不安点が多く、ブックメーカーの評価も徐々に下がっているサトノダイヤモンドなのだろうか。

「確かにフォワ賞では正直失望したところもありました。しかし、あれが彼の本来の走りではないことは、日本のファンもご存知でしょう?」

 バートン氏はさらに、追い切りの動きの印象も付け加えた。

「併せたサトノノブレスだって、菊花賞で2着、ほかに重賞で何度も勝っているような馬で、一介の格下の調教パートナーとは違います。そのサトノノブレスも、ものすごく状態を上げています。オルフェーヴルが(帯同馬の)アヴェンティーノに楽に先着したようにはいかなくて当然。むしろ、いい意味でハードな調教ができたのではないでしょうか。馬場への適性にしても、言われるほど悪いとは思いません。この馬がしっかりと調子を上げてきた今なら、前走がウソだったかと思うような走りを見せてくれるはずです」

  しかし、日本のJRAオッズではやはりサトノダイヤモンドは人気を集めてしまいそうだということを伝えると、おどけるように答えた。

「そうかもしれませんね(笑)。では、皆さん、今からフランスに来るといいでしょう。ちゃんと飛行機代も稼げて、日本馬が勝つところも見られますよ」

 バートン氏とは2週前にも顔を合わせたが、そのときもサトノノブレスの好調ぶりを強く語っていた。決してリップサービスではない記者の本音に、ひと口乗ってみるのも一興かもしれない。