秋の「スプリント王決定戦」となるGIスプリンターズS(中山・芝1200m)が10月1日に行なわれる。

 昨年の覇者レッドファルクス(牡6歳)をはじめ、今春のGI高松宮記念(3月26日/中京・芝1200m)を制したセイウンコウセイ(牡4歳)に、昨年の同レースを勝ったビッグアーサー(牡6歳)、さらには重賞を含めて目下4連勝中のダイアナヘイロー(牝4歳)など、スプリント界の頂点を決めるにふさわしいメンバーがそろった。

 ただ、実力馬が集ったとはいえ、ズバ抜けた存在はいない。スプリント戦線は長らく混迷の時代が続いていて、前述した面々も絶対視はできない。ということは、思わぬ「伏兵馬」の台頭も十分に期待できるわけだ。

 ならば、馬券戦略においては、オイシイ配当を狙いたくなるのが人間の心理。そこで、過去10年の成績をもとにして、この舞台で波乱を起こしそうな「穴馬」を探してみたい。

 過去10年の結果を振り返ってみると、最初に目につくのが「牝馬の強さ」だ。10年で4勝を挙げており、馬券圏内の3着まで見れば、10年間で牝馬が延べ12頭もいる。

 しかも、その中には人気薄で飛び込んできた馬が結構いる。8番人気で3着となったカノヤザクラ(2009年)や、9番人気で3着に入ったウキヨノカゼ(2015年)、同じく9番人気で3着入線を果たしたソルヴェイグ(2016年)らがそうだ。

 また、そういう穴を開けた牝馬には、ちょっとした共通点がある。「夏の上がり馬」であることだ。

 2011年に7番人気で3着に突っ込んできたエーシンヴァーゴウは、同年7月のGIIIアイビスサマーダッシュ(新潟・芝1000m)で3連勝を飾ると、その後もGIII北九州記念(小倉・芝1200m)で3着と健闘し、GIIセントウルS(阪神・芝1200m)では鮮やかな勝利を飾って本番に挑んだ。

 前述のウキヨノカゼも、同年7月の1600万条件を勝ってオープン入りを果たすと、続くGIIIキーンランドC(札幌・芝1200m)で連勝を決め、本番でも3着と上位に食い込んだ。

 それでも、これらの面々の人気が上がらなかったのは、今年と同じくメンバーが充実していて、「さすがにGIでは通用しないのではないか」と思われていたからだろう。が、何より勢いさえあれば、この舞台ではGI実績がなくても勝ち負けが期待できるのである。

 そして今年、牝馬で、勢いのある夏の上がり馬を探してみると、一番に目がいくのは冒頭でも触れたダイアナヘイローである。しかし、あくまでも穴馬という視点で考えるなら、ここで同馬を推すわけにはいかない。

 そこで改めて出走メンバーを見渡してみると、面白い存在がいることに気づく。ワンスインナムーン(牝4歳)である。


ワンスインナムーンが連勝の勢いに乗って波乱を起こすか

 7月に1600万条件を勝って、前走ではオープン特別の朱鷺S(8月27日/新潟・芝1400m)を快勝。この連勝中という勢いは無視できない。

 春の高松宮記念では16着に敗れたが、初のGI戦で経験不足だったことは否めない。その後、休み明けで連勝していることから、調子を取り戻したことはもちろん、春からのさらなるレベルアップが見込める。中山・芝1200mでの実績もあり、2度目のGIの舞台で一発あってもおかしくない。

 過去の結果に再び目を向けてみると、とある傾向があることがわかった。それは、同年春の高松宮記念で好走していた馬の人気薄での激走だ。

 2009年は、高松宮記念の覇者ローレルゲレイロが6番人気で優勝を飾った。さらに2014年には、高松宮記念で2着だったスノードラゴンが13番人気で大金星を挙げている。

 それぞれ、高松宮記念のあとのレースで大敗を喫するなどして、人気が急落していた。だが、本番では春のGIと変わらぬ実力を示したのである。

 今年も、それら2頭と似たような馬がいる。レッツゴードンキ(牝5歳)だ。

 同馬も今春の高松宮記念で2着と奮闘した。しかし、その後のGIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)で11着と大敗。加えて今回は、それ以来のぶっつけとなるため、人気落ちは必至の状況だ。

 とはいえ、過去の教訓に照らし合わせれば、この馬を狙わない手はない。休み明けでの好走歴もあり、巻き返す可能性は大いにある。

 最後に、スプリンターズSと言えば、やはり香港馬の存在を忘れてはならない。「スプリント王国」と言われるだけあって、激戦の本国での実績が乏しくても、日本に来ればトップレベルで通用してしまうケースがある。

 そのことを思い知らされたのが、10番人気で頂点に立った2010年のウルトラファンタジーだ。香港でのGI勝ちはなく、軽視された存在だったが、日本ではその実力をいかんなく発揮。香港馬のレベルの高さを存分に見せつけた。

 そんなウルトラファンタジーの再現を狙う香港馬が今回参戦する。ブリザード(せん6歳)である。

 こちらも香港でのGI勝利はなく、3着が最高成績。GIII勝ちはあるものの、それも1回のみで人気が上がる気配はない。だが、香港のスプリント界のレベルを考えれば、この馬でも通用する余地はある。

 そのうえ、かつてウルトラファンタジーを管理していたのは、今回の”刺客”ブリザードと同じイウ調教師。ウルトラファンタジーと比較して、この馬なら「勝算あり」と踏んでの出走かもしれない。穴党としては、狙いたくなる1頭だ。 混沌とするスプリント界において、はたして「絶対王者」に君臨するような馬が登場するのか。はたまた、あっと驚くような馬の激走により、戦国の様相がこのまま続くのか。瞬きする間もない、1分ちょっとの電撃戦を注視したい。

■競馬 記事一覧>>