日本からサトノダイヤモンド(牡3歳、父ディープインパクト)、サトノノブレス(牡6歳、父ディープインパクト)の2頭が出走するGI凱旋門賞(10月1日/シャンティイ競馬場、芝2400m)。これまでも、多くの日本の名馬を退けてきた欧州の厚い壁だが、今年も強力なメンバーが揃う見込みだ。


1番人気が予想されるエネイブルは3歳牝馬

 目下、ブックメーカーを含めた下馬評の1番人気は、現在4つのGIを含む5連勝中のエネイブル(牝3歳、父ナサニエル)だ。3歳になって2戦目の準重賞チェシャーオークス(5月10日/チェスター・芝2300m)を勝利すると、ここからGIの連勝街道をまっしぐら。しかも、2着馬との着差が、英国オークス(6月2日/エプソム・芝2400m)が5馬身、アイリッシュオークス(7月15日/カラ・芝2400m)が5馬身半、古馬初対戦のキングジョージ此クイーンエリザベスS(アスコット/芝2400m)が4馬身半、ヨークシャーオークス(8月24日/ヨーク・芝2400m)が5馬身と、それぞれの勝ちっぷりが圧倒的で、1番人気も十分うなずける。

 すでに距離もこなしており、有利とされる3歳牝馬だけに死角を見つけるのが難しい。あえて不安を挙げるとすれば、負担斤量が、3歳牡馬が56.5kg、3歳牝馬が55kgとなり、古馬との差が0.5kg縮まったことだ。


 また、ローテーション面でもヨークシャーオークスから直行で凱旋門賞を制した馬は前例がない。かつて、ジャパンカップにも参戦したユーザーフレンドリーもヨークシャーオークスを勝って、凱旋門賞でも2着となったが、その間に英セントレジャーも勝ってからの出走であった。

 もうひとつ、6戦5勝のエネイブルが唯一敗れたのが、硬い馬場で行なわれた今年4月のニューベリーでの条件戦(芝2000m)だったことだ。父ナサニエルも現役時代は硬い馬場を嫌って、凱旋門賞を回避したことがある。昨年のような高速決着が予想される場合には、疑ってかかるのもありだろう。

 2番手と目されているのは、イギリスのユリシーズ(牡4歳、父ガリレオ)。3歳だった昨年の夏以降に徐々に頭角を現し、今年に入って、英GIエクリプスS(7月8日/サンダウン・芝2000m)、英GIインターナショナルS(8月23日/ヨーク・芝2080m)と2つのGIを制している。当初は2000m路線を進むと見られていたが、ここにきて凱旋門賞に矛先を向けてきた。

 ただ、この馬に関しては距離と馬場という2つの死角がある。これまでのパフォーマンスからベストは2000mで、2着とはなったものの”キングジョージ”では前出のエネイブルにあっさりとちぎられている。また、硬い馬場もあまり向くとは思えない。昨年秋もGIブリーダーズCターフ(2016年11月5日/サンタアニタ・芝2400m)に出走したが、距離と高速決着の適性の差から、勝ったハイランドリール(牡5歳、父ガリレオ)から約6馬身差をつけられて、4着に敗れている。


 3番手グループは、フランスのブラムト(牡3歳、父ラジサマン)、昨年の凱旋門賞で2、3着となったアイルランドのハイランドリールとオーダーオブセントジョージ(牡5歳、父ガリレオ)の3頭。

 ブラムトはGI仏2000ギニー(5月14日/ドーヴィル・芝1600m)とGI仏ダービー(6月4日/シャンティイ・芝2100m)を勝ち、今年のフランス3歳二冠馬となった。凱旋門賞の距離は初経験ながら、馬場を経験しているアドバンテージは大きい。ただ、後方一気の鮮やかな勝ちっぷりが目立つが、その実は出遅れによるもので、改善されなければ序盤の位置取りが明暗を分けやすい凱旋門賞においては致命的といえる。また、父ラジサマンは現役時代、マイル志向の強かった馬だけに、やはり距離には不安を残す。

 ハイランドリールについては、もはや説明は不要だろう。日本国内での馬券発売が始まった昨年の凱旋門賞以降、香港ヴァーズ(2着、2016年12月11日/シャティン・芝2400m)、ドバイシーマクラシック(7着、3月25日/メイダン・芝2410m)と、日本で発売された国外レースにもっとも多く出走している。

 しかも、凱旋門賞と香港ヴァーズともに2着と結果も残している。今年の欧州中距離戦線でも、英GIコロネーションC(6月2日/エプソム・芝2400m)、英GIプリンスオブウェールズS(6月21日/アスコット・芝2000m)を勝利しているように、依然能力に衰えはない。しかし、ドバイシーマクラシックや前走の”キングジョージ”(4着)の敗戦から、渋った馬場ではまったくパフォーマンスを発揮できないことも明らかになっている。


 オーダーオブセントジョージはどうか。欧州の長距離GIをこれまでに3勝。コテコテのステイヤーという印象ながら、高速決着だった昨年の凱旋門賞で3着と、大半の予想を覆す走りを見せた。もちろん、豊富なスタミナの裏づけがあるように、渋った馬場も問題なくこなす。凱旋門賞を勝ち切れるほどかというと疑問符がつくが、前走のGI愛セントレジャー(9月10日/カラ・芝2800m)では2着馬に9馬身差をつける圧勝で、昨年以上にパワーアップした感もあるだけに、一発は十分にあり得る。

 その次のグループがサトノダイヤモンドを含む面々で、ここにフォワ賞を勝利したドイツのチンギスシークレット(牡4歳、父ソルジャーホロウ)、アイルランドのウィンター(牝3歳、父ガリレオ)とカプリ(牡3歳、父ガリレオ)、そしてフランスのザラック(牡4歳、父ドバウィ)が含まれる。

 チンギスシークレットは目下3連勝中で、2走前のGIベルリン大賞(8月13日/ホッペガルテン・芝2400m)で待望のGI初勝利を収めた。前走のフォワ賞は伸びあぐねるサトノダイヤモンドとは対照的に、重馬場を完全に味方につけての勝利。それだけに本番も重馬場なら有力候補になるが、硬い馬場だとしても評価を下げないほうがいいかもしれない。というのも、ドイツ調教馬は高速馬場でもいきなりフィットすることが決して珍しくないからだ。2011年に凱旋門賞を制したデインドリームもそうだった。むしろ良馬場で人気を落とすようなら妙味だろう。


 ウィンターとカプリは、ともにハイランドリールらと同じクールモアの所属。マイル〜中距離路線に向かうと思われたウィンターがこちらに向かってくるからには、それなに勝算があってのことだろう。とはいえ、やはり成績面からは距離には不安が残る。

 一方のカプリは、前走のGI英セントレジャー(9月16日/ドンカスター・芝2920m)を2カ月半ぶりの実戦ながら勝利。その前走は愛ダービー(7月1日/カラ・芝2400m)で、この2つのレースを制したのは47年ぶりの快挙となった。こちらも人気の盲点となりそうだが、特筆すべきは、母の父アナバー、母の母の父リナミックスというフランス向きの血統に、父は無敗で英国ダービーを制したガリレオという配合。秋はこれが2戦目で、上積みという点でも期待ができる。 ザラックの母は鮮やかな末脚で凱旋門賞を制したザルカヴァという良血。そのため、デビュー時から高い期待を集めていたが、初GIタイトルとなったのが今年7月のサンクルー大賞(7月2日/サンクルー・芝2400m)と、ブレイクまでに時間を要した。ここに来ての本格化とも考えられるが、今回はそのサンクルー大賞から3カ月ぶりのぶっつけ。人気先行のきらいもあるため、その点は割引で考えたい。むしろ、同じサンクルーを舞台にした5月のGIガネー賞(サンクルー・芝2100m)でザラックに勝利したクロスオブスターズ(牡4歳、父シーザスターズ)に一発の魅力を感じる。

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