お顔、お名前、ご意見、お利息などなど、相手に対して敬意の意を込めて付ける「お・ご」は最も身近な敬語と言えますが、お電子マネー、おトイレなどは誤りではないのでしょうか。今回の無料メルマガ『仕事美人のメール作法』では、著者の神垣あゆみさんがそんな疑問をあっさり解消、さらに「れる」「られる」の注意点についても記しています。

お電子マネー

お電子マネー「XXXX」へのクレジットカードチャージにおけるポイント付与に関するお知らせ

上記の文例は、クレジットカード会社からのお知らせとして実際にメールで受けとったものです。「お金」「お札」「おつり」など、金銭を示す言葉に、美化語の「お」が付くケースはありますが、金銭に代わるものとし普及している「電子マネー」にまで「お」は必要でしょうか。

相手に関するものに、尊敬の意を込めて付ける「お・ご」があります。

相手の体や持ち物:お顔、お名前、お住まい相手の動作:お買い上げ、お手柄、ご意見相手に関わること:お徳用、お利息、ご預金

「お電子マネー」という表記も「お客様の電子マネー」という意で相手(=客)への敬意を表すために使われているのかもしれませんが、言葉として違和感があります。したがって

電子マネー「XXXX」へのクレジットカードチャージにおけるポイント付与に関するお知らせ

として、相手(メールの受け取り手)に失礼にはならないと考えます。

余談ですが「おビール」「おトイレ」など外来語に「お」を付けた言葉も散見します。外来語にも「お」は付かないのが原則です。

いらっしゃりました

当日は、50名以上の方が会場にいらっしゃりました。

上記の文で気になるのは、文末の「いらっしゃりました」です。「来る」の尊敬語は「いらっしゃる」ですが、それを過去形にすると「いらっしゃりました」ではなく「いらっしゃいました」です。したがって、上記の文例は

当日は、50名以上の方が会場にいらっしゃいました。

「来る」の尊敬語「いらっしゃる」にさらに尊敬の「られる」を付けて「いらっしゃられる」とするのは二重敬語となり、NGです。「言う」の尊敬語「おっしゃる」を「おっしゃられる」とするのも同様に二重敬語です。「おっしゃる」の過去形は「おっしゃった」で、「おっしゃられました」とするのも間違いです。

響きが丁寧だからと、すでに敬語になっていることばに「れる」「られる」を安易に使わないように気をつけましょう。

ご覧になっていただきました

では、次の文例はどうでしょうか。

ご来場いただいた皆様に展示をご覧になっていただきました。

「ご覧になっていただく」は、「見る」の尊敬語「ご覧になる」と謙譲語「いただく」がミックスされた「二重敬語」では? と、思っていたのですが、違いました。

これは「敬語連結」といって、2語以上をそれぞれ敬語にし、接続助詞「て」でつなげたもの。

来場者に「展示を見てもらった」ということを伝えたい場合、「見てもらう」の「見る」の尊敬語「ご覧になる」+接続助詞「て」+「もらう」の謙譲語「いただく」の連結で「ご覧になっていただく」。

その過去形は「ご覧になっていただきました」です。

「ご来場いただいた皆様」の後、「ご覧になっていただきました」と「いただく」が続くので、「ご来場の皆様に」に変更し、

ご来場の皆様に展示をご覧になっていただきました。

とします。

この一文の主語は(例文には書いていませんが)「主催者である私たち」です。

展示を見てもらった「私たち」が立てる相手は、「ご来場の皆様」つまり、お客様。展示を見たのも「ご来場の皆様」。

ここでは、尊敬語でも謙譲語でも立てる対象が「ご来場の皆様」で一致しているため、「ご覧になっていただく」は「二重敬語」ではなく「敬語連結」に当たります。

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出典元:まぐまぐニュース!