ひろゆき氏が実践している「おカネのマイルール」とは?(写真:ko-yan / PIXTA)

誰もが知っていることですが、日本の人口が減り続ける中、日本はこれからどんどん変化していきます。こうした中で、幸せに生きていくには、個人の生き方や考え方もシフトしていかなければいけません。

おカネについてもそうです。たとえば、「年収1000万円以上あれば幸せだ」という幻想があります。どうせ働くなら、給料のいいところがいいよね、できれば1000万円以上欲しいよね、というあれです。ただ、地方なら別ですが、都内だと年収1000万円ではそんなに豪華な暮らしはできないのが現実です。

結婚して子どもが2人いて、2人とも大学に入れるとなると、そんなに可処分所得を作ることができません。年収1000万円なのに貯金が全然ない、という人も珍しくありません。一方で、僕と同世代の40代男性の平均年収は400万〜500万円でしょうから、むしろ1000万円稼いでいるという人は少数派なのです。

「ここまで貯めれば安泰」はもうない

そこで、僕は「経済と幸せを切り離して考えよう」ということを提案しています。それにはまず、「おカネとの付き合い方」をちゃんと考えることが必要になります。つまり、「おカネは使えば減るし、貯めておかないとあとで困る」という感覚を持つことが大事ですし、それを熟知したうえでおカネを使うことが大事です。

今後は、「どれだけおカネを貯めれば将来安泰か」という基準も変わってきています。15年ほど前、おカネを貯めてマンションを買って、その賃貸料で暮らすことが「労働からの卒業」と言われていたことがありました。ある程度の年齢まで働き、資産を作って回す人生というのは、とても夢があるように聞こえます。

しかし、少子高齢化が進むにつれて、「ここまでおカネを貯めたら労働者としての生活は卒業して、ゆっくり生活できる」というラインはどんどん遠ざかっていきます。今は高齢者が「将来安泰だから若い人や次世代の人を支援する側に回ろう」と言えなくなっている世の中なのです。

こうした中、安心できるまでがむしゃらにおカネを稼ぐことより、「今の生活で満足できるように考え方を変える」ほうが、幸せになるには手っ取り早くないでしょうか。というのも、僕は自分がいくら稼ごうと、月5万円の生活を崩したことがありません。そして、それで十分幸せを感じているのです。

そこで今回は、僕が実践している「おカネのマイルール」について、最近出した『無敵の思考』をもとに紹介してみたいと思います。

ルール1 欲しいと思った1カ月後に買う

食費や家賃は別にして、衣服や、外食、携帯のアプリといったものは、それが本当に必要だったら1カ月後も必要だと感じるわけです。つまり、1カ月待って必要だったら、そのときに買えばいい。

かといって、1カ月、ただただ我慢を続けるのはしんどいですよね。なので、その間は、いろいろ調べてみてはどうでしょうか。たとえば、自転車が欲しくなったら、自転車にはどんな機能やブランドがあるのか、それを安く手に入れる方法がないのかを調べまくる。そうやって情報収集をしていれば、1カ月なんてあっという間に経ちます。

欲しいものは「知識として」手に入れよ

ただ、僕の経験では、いろいろと調べていくうちに、「これは買う必要があるのか?」と思い至り、結局は買わないことがほとんどです。ということで、「欲しい」と思ったら、なんでも1カ月待つということをするだけで、モノに対する考え方は随分改善します。

人間であれば誰しも「欲しい」という欲望があるでしょう。しかし、それを「満たす」ことは永遠にできません。たとえば、高級自転車を10万円で買ったとしても、「もっといい機能のもの」「新しいデザインのもの」というように、その願望は止められません。それを満たし続けた人とそうでない人で、得られるものの差はそこまでありません。

そこで、そのときにぜひ試していただきたいのが、「知識として手に入れる」ということです。10万円の自転車に乗りたいのであれば、お店に行って実際に試乗してみる。そうすると、「だいたいこんな感じか」という知識が得られます。つまり、必ずしも買って所有することが、満足の本質ではありません。

ルール2 「自分にごほうび」をしない

社会人になると、「おごって満足する人」に遭遇することがあります。自分の精神的な満足のためにおカネを使うタイプの人です。ただ、こうした精神的安定や満足感を得るためにおカネを使う、ということをやめてみると、案外、おカネを使う機会が少ないことに気がつきます。

こうしたおカネの使い方の中でも、特に愚行だなと思うのが、「自分にごほうび!」というやつです。外食もこれに入るかもしれませんね。人におごるのであれば、もしかしたらめぐりめぐって自分にメリットがあるかもしれません。しかし、自分にごほうびをしたところで、給料が増えることはありません。

つまり、「自分へごほうび=損失」です。そして、その損失は簡単に埋めることができません。仕事やプライベートでイヤなことがあるたび、自分のためにおカネを使っていると、生活コストがどんどん高くなっていきます。絶対にやめるべき習慣のひとつですね。

カネで問題を解決するのはまずい

また、「人に迷惑をかけたら、おカネを払う」という人も少なくありませんが、これもやめるべき習慣です。生きている以上、必ず人に迷惑をかけます。それは人間である以上、お互い様ということです。それなのに、迷惑をかけるたびにおカネを払っていると、どうなるでしょう。「僕は迷惑を感じた」と主張した人がトクをして、我慢している人は損し続けることになります。

しかし、迷惑の度合いは人によって違います。問題をおカネで解決しようとすると、人と対等な関係でいられなくなります。特に相手が友達であれば、迷惑をおカネで償うというのは絶対にしてはいけないことです。問題をカネで解決するような関係は、もはや友人関係とはいえません。相手がビジネス上の付き合いでなければ、おカネを絡めることはしないほうがいいでしょう。

ルール3 おカネを使いたくない「分野」を決める

まず「これにおカネを使いたくない」という分野を決め、その分野での支出を徹底的に減らす努力をしてみましょう。

僕の場合は、「家賃」と「交通費」にはおカネを使いたくありません。たとえば家を探すとき、あなたならどういう基準で探しますか? 僕は、まず住みたい地域を決めたら、そこでいちばん安い物件を見に行きます。そこがダメだと思えば、その次に安い物件を見に行きます。それを納得するところまで機械的に繰り返します。「なんか疲れたし、面倒だから、このへんでいいか」という妥協はしないようにしています。

こうした「おカネを使いたくない分野」は誰にだってあるはずです。そこでの節約の努力は絶対に怠らないようにしましょう。どんな分野が節約の対象になるのかわからない人は、おカネを払うときに、そこに「愛情」が含まれているかどうかを考えてみてください。

たとえば、「アップルの考え方が好きだからiPhoneユーザーだ」という人は、それは愛情におカネを払っていることになります。自分がおカネを払っているときに、その対象に愛情を感じるときだけ、気持ちよく、堂々と支払えばいいのです。

さて、ここまで3つのマイルールを紹介しました。ここまで読んだところで、「そんなにセコセコ生きて、幸せなわけがないじゃないか」と感じる人も少なからずいると思います。そこで最後に、おカネがあるかないかにかかわらず、「これで幸せに生きることができる!」とルールを2つ紹介しましょう。

根拠のない自信は崩されにくい

幸せのためのルール1 根拠のない自信を持つ

僕は生きるうえでつねに、「根拠のない自信」を持っています。多くの人は、年収や学歴という自信の裏付けとなる明確な根拠を持っていると思います。たとえば、東京大学を卒業して大企業に入った人がいるとします。その人は明確な根拠があるから自信があるのですが、会社をクビになってしまったら、その瞬間にとんでもなく不幸を感じてしまうかもしれません。

一方、「根拠のない自信」を持っている人は、根拠がないのだから、拠り立つものもありません。その自信というのは、崩しようがないのです。

『錯覚の科学』(文藝春秋)という本の中で、ある心理実験が紹介されています。それは、正しいことを言う弱気な人と、間違ったことを自信を持って言う強気な人がいた場合、人はどちらに従うのか、という実験です。

誰かが間違ったことを自信満々に言っているとき、中には「あれ、こいつ間違っているな」と気がつく人もいるのですが、それでも自信を持っている人に対抗しようとしません。結果、正しいことを言っているのに弱気な人より、自信を持っている人のほうが、物事を思いどおりに進めることができるのです。

自分の思いどおりに物事を進められる人のほうが、人生で幸せを感じる瞬間が増える可能性が高い。これこそ、僕が「根拠のない自信を持つ」というのは、楽しく暮らすうえで重要な要素だと考える理由です。それでも根拠のない自信を持つのは難しいというのなら、その根拠は「僕は逆上がりができる」くらいのことで十分だと思います。

幸せのためのルール2 自分の時間でものづくりをする

冒頭でも述べたように、楽しさや幸せを「おカネを使うこと」によって感じる人は、一生幸せになれません。この考え方だと、幸せを感じ続けるためにおカネを使い続けなければならないので、アラブの石油王でもないかぎり、多くの人には限界があるからです。「これさえ買えば、幸せになれる」ということを、多くの広告はうたっているわけですが、それを追い求めるうちは絶対に幸せになれません。

そこから抜け出す方法のひとつが、「クリエーターになる」ということです。「絵を描いて幸せ」や「写真を撮って幸せ」「文章を書いていて幸せ」ということは、おカネをかけなくても幸せになれる手段です。こうした「幸せを感じられること」「夢中になれること」がある人は、それをやっているときは幸せを感じられるわけです。おカネではなく、それに費やす時間があればあるほど、幸せを感じられる。

「週末クリエーター」だっていい


一方、おカネをかけなくては幸せになれない、と思い込んでいる人は、それを得るために必要な時間と、そのためのおカネと両方が必要になります。そして、そのおカネを得るために、さらに働くという時間も必要です。単に時間があれば幸せな人に比べると、ものすごいコストがかかるわけです。

ものづくりやクリエーターというのは、別に本業でなくてもかまいません。本業で好きなものを作れる人というのが、いちばん幸せでしょうが、仕事終わりや休日にやったっていいわけです。「趣味が散歩です」という人もわりと多いですが、おカネではなく時間をかけて楽しめるのであれば、それも立派なものづくりかもしれませんね。

以上、僕が考える、誰でもすぐ始められる「おカネ」と「幸せ」のマイルールを紹介しました。おカネは腐らないので、将来のために貯めることができます。だから僕は、たくさんのおカネがあっても迷わず貯金します。おカネは、知り合いや家族が病気になったり、自分が事故にあったり、そういった突発的に必要なときのためにとっておくものだと考えているからです。

こうした基本を改めて考え直し、自分なりのルールを設ける。それに従って生きていくことができれば、おカネのあるなしにかかわらず、幸せな人生を送ることができるのではないでしょうか。