中国が運用してきた宇宙ステーション試験機「天宮1号」が、2018年1月の前後1カ月の範囲内に地球の大気圏に突入するという最新の予測が発表されました。天宮1号は2016年に中国政府によって「制御不能」が公表されて以来、徐々に高度を落としてきており、その最終落下地点はまだ「予測できない」という状況です。

Tiangong-1 Reentry | The Aerospace Corporation

http://www.aerospace.org/cords/reentry-predictions/tiangong-1-reentry/

China’s Out-Of-Control Tiangong-1 Space Station to Crash Back to Earth Early 2018

http://www.newsweek.com/china-tiangong-1-out-control-space-station-crash-earth-2018-666836

天宮1号は中国が2011年に打ち上げたもので、将来の本格的な宇宙ステーション建設のための実験機として運用が行われました。本体部分の全長が約10メートル、質量は8.5トンという機体で、実験装置室と物資保管室を持つことで内部で実験を行うことが可能となっていました。



軌道投入後は、後から打ち上げた宇宙船とドッキングする実験を繰り返し、実際に人が乗り込んで滞在する試験も行われてきた天宮一号でしたが、運用が停止されて以降は世界中の科学者から「制御が行われていないのでは」と指摘されるようになります。そして2016年9月には、中国政府が正式に制御不能状態にあることを認めています。制御が行われなくなった天宮1号は、軌道上にわずかに存在する薄い大気の影響を受けて徐々にスピードを落としており、地球の引力に引き寄せられて徐々に高度を落としています。

これまでにも何度か軌道高度の修正を繰り返してきた天宮1号でしたが、2015年12月の修正を最後に「放置状態」が続いてきたとのこと。もう人為的な対策が行われないことになると、そのまま高度を下げ続けることが避けられない状態です。



アメリカ政府からの資金を受けて運営されている非営利企業「The Aerospace Corporation」が発表した天宮1号の落下時期予測が以下のグラフ。高度350km前後の地球周回軌道から徐々に高度を下げてきた天宮1号は、このままのペースで落下を続けるとあるタイミングを境に一気に高度を落とし、そのまま大気圏へと突入します。実際に大気圏突入するタイミングはまだ明確にはわかっておらず、2017年12月から2018年2月のどこか、と予測されています。



大気圏に突入した天宮1号は、断熱圧縮による高温にさらされることで大部分が燃え尽きるものと考えられていますが、搭載されているロケットエンジンなどの大きな部品が燃え尽きることなく地表に落下する可能性が指摘されています。落下が予測される地域は南緯43度から北緯43度までという幅広いもの。また、大気圏突入時期がハッキリ判明しないと最終落下地点を特定することもできず、実際にその場所が判明するのは落下の6〜8時間前とも考えられています。

とりあえず「落ちてくること」だけはわかっているものの、いつ、どこに落ちるのかが良くわからないという事態となっている天宮1号の行方ですが、地表の3分の2が海洋をしめていることや、人口密集地の分布状況を考えると人や建物などに被害を与える可能性は低いと考えられています。また、大気圏突入時には、隕石のようなまばゆい光が10秒程度にわたって目視できる状態になると見られています。