トロフィーを抱え喜びをあらわにする三島有紀子監督

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 血のつながりにとらわれない家族の姿を、浅野忠信・田中麗奈の共演で描く映画『幼な子われらに生まれ』が、今月初旬までカナダで開催されていた第41回モントリオール世界映画祭で、最高賞グランプリにつぐ審査員特別グランプリを見事受賞した。その吉報をうけ、メガホンを取った三島有紀子監督が、11日、東京・テアトル新宿に来場。壇上でトロフィーを受け取り「今日初めて(トロフィーを)見るんです。すごく、うれしい。モントリオールには(都合で)行けなかったので、ここで授賞式をやらせてもらった感じです」と喜びのあいさつを行った。

 撮影所に向かう通勤途中で、受賞第一報を知ったという三島監督は「朝のラッシュ時に『受賞です』って突然メールが来て、『なに? なに?』と思っていたら次に電話で。周囲の人たちがいそいそ歩いている中、ひとり立ち止まって『えーっ!』ってさけんでいました」と明るい笑顔を見せた。

 『しあわせのパン』『繕い裁つ人』などで知られる三島監督が本作で描くのは、再婚した中年サラリーマンの信(浅野)を中心に、信の現在の妻・奈苗(田中)と連れ子の娘、身勝手で暴力的な妻の元夫(宮藤官九郎)、信の前妻(寺島しのぶ)と実の娘、そして新たに授かった命をめぐって、家族の新たな関係を模索する物語だ。直木賞作家・重松清の小説を原作に、『ヴァイブレータ』などの荒井晴彦が脚本を担当。「浅野さん演じる信が、いろいろな異質な人と出会い、それによって彼という人間の本質がむきだしにされていく。そこが面白いと思いましたし、大切に描いた部分です」と三島監督は語る。

 第41回モントリオール世界映画祭で、現地観客の反応はどうだったかと聞かれると、三島監督は「映画祭の映写技師の方がわたしたちのスタッフに『あなた方の映画が一番観客が入っているよ』と教えてくれたそうです。海外向けの本作タイトルを『DEAR ETRANGER』としたんですが、『親愛なる異質な人へ』という意味と、DEARが英語、ETRANGERがフランス語で、異なる言語をミックスした点も、この映画の内容にすごくフィットしていると評価していただきました」と振り返った。

 さらに「わたし自身もそうですが、正解を見つけられず、それでもとにかく必死に生きている姿というのは、とても美しい姿だと思うんです。専業主婦の奈苗さんにしても、新しい命を迎えることがすべてでなく、悩みを抱えていたことがわかるシーンを、原作に加えて脚本の荒井さんに書き足してもらいました。次回作も、北海道の開拓村で力強く生きる女性を描くつもりです」と穏やかだが力のこもったコメントで次の構想も語り、充実の表情を見せていた。(取材/岸田智)

映画『幼な子われらに生まれ』は全国公開中