交際中のジェニファー・ローレンスを主演に迎えたダーレン・アロノフスキー「マザー!」キャスト陣 写真:Splash/アフロ

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 イタリアで開催中のべネチア映画祭も、いよいよ授賞式を控えすべてのコンペティション作品が上映を終えた。前半に話題を呼んだギレルモ・デル・トロの「The Shape of Water」に続き、後半もっとも評価の高かった作品は、「セブン・サイコパス」で知られるマーティン・マクドナー監督の「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」。ミズーリ州の田舎町で、娘を暴行、殺害された母親の、犯人探しの遍歴を描いたシリアスなドラマだ。母親役のフランシス・マクドーマンドの抑制の効いた演技がみごとで、女優賞の呼び声も高い。

 続いて好評なのが、フレデリック・ワイズマンがニューヨークの図書館にカメラを据えたドキュメンタリー、「Ex Libris The New York Public Library」。197分の長尺はいささか長さを感じさせるものの、ワイズマンらしい緻密な構成と描写に富む。ドキュメンタリーはもう一本、中国人美術家のアイ・ウェイウェイが難民問題を取り上げた「Human Flow」があるが、こちらは特に新しい発見や視野を感じさせるものに欠け、評価は分かれる形となった。

 さらに批評家の注目作であったダーレン・アロノフスキーのサイコ・ミステリー、「マザー!」と、アブデラティフ・ケシシュの「Mektoub, My Love: Canto Uno」も賛否両論となった。アロノフスキー作品は後半の、地獄絵的な凄まじい展開が、意外性に満ちている一方、いささかやりすぎという声も。もっともある意味ではいかにもこの監督らしい作品と言える。ケシシュは3時間の大作ながら、繰り返しの描写が多く、覗き見趣味的な挑発的映像が論争を呼んだ。

 斬新で革新的な作品が集まるオリゾンティ部門では、ダミアン・マニベルと五十嵐耕平監督による日仏合作の「泳ぎすぎた夜」が上映された。雪に囲まれた東北地方で、6歳の少年の日常をシンプルに、詩的に綴るなかで、親子の絆や家族のあり方を静かに見つめる。ベネチアには主人公役の古川鳳羅も監督ふたりに同行し、人気を集めた。(佐藤久理子)