撮影の合間に談笑する藤竜也とルー・ユーライ

写真拡大

 名優藤竜也と、中国人俳優ルー・ユーライが共演する日中合作映画「CHEN LIANG」撮影現場がこのほど、報道陣に公開された。物語の舞台となる山形・大石田町で、藤とルー、共演の松本紀保、近浦啓監督が顔をそろえ、現地で募集したエキストラとともに、和やかな雰囲気で撮影が行われた。

 近浦監督の長編デビュー作。第70回ロカルノ国際映画祭、第42回トロント国際映画祭短編部門で上映された「SIGNATURE」に続く物語で、家族の期待を背負い、日本企業に技能実習生としてやってきた中国人青年チェン・リャンが主人公。劣悪な労働環境に絶望して研修先から失踪し、不法滞在者となったチェンは、借金返済のためにリウという他人になりすまして山形の小さなそば屋で働き始める。そこでそば職人の弘と出会い、人生に一筋の光を見出していくというストーリーだ。

 撮影監督は、是枝裕和、河瀬直美ら国際的に活躍する名監督の作品で知られる山崎裕。美術監督を2016年に紫綬褒章を受章し、「リップヴァンウィンクルの花嫁」(岩井俊二監督)、「あん」(河瀬直美監督)などを手掛けた部谷京子が務める。

 藤は撮影のおよそひと月まえから山形入りし、地元の名店の店主からそば打ちを学んだ。「20日間くらいノンストップで土日も関係なく、ふたりの先生に指導していただきました。この時間でそば屋のおやじ並みになるのは無理だろうと言われたのですが、60キロぐらいのそばを打ち、何とか認めていただけた。一生懸命やった甲斐がありました。そばがちゃんと打てれば、他の芝居については何も考えません。おやじがおやじとして、若い彼(チェン)と会話するだけでいいんです」と、役作りについて語る。

 物語の舞台となるそば屋「ゆら」での撮影前日に、近隣の住民を招き、模擬営業を実施した。藤が、店主の弘として自身で打ったそばを茹で上げ、娘の香織役を演じる松本が接客。そば処として知られる大石田の舌の肥えた住民は、藤のそばに太鼓判を押し、藤も差し入れをつまみながら交流するなどあたたかな時間が流れた。

 ルーは、ベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた「孔雀 我が家の風景」に出演、自身で作品も監督する多才な俳優で、繊細な感性を思わせる謙虚な佇まいが印象的だ。「中国でも良く知られている藤さんと共演できてうれしい」「不法滞在という要素は単なるバックグラウンドで、この作品の人と人の関係性が好き。チェン・リャンと弘は親子のよう」と述べる。撮影の合間に、藤と英語や漢字の筆談でコミュニケーションをはかり、お互いを分かり合おうとする姿は、劇中の弘とチェン・リャンの姿そのものだった。

 報道陣に公開されたのは、「ゆら」で弘がそばを仕込み、香織が、リウ(チェン・リャン)に、出前や掃除について説明する開店前のシーンだ。俳優、スタッフ共にベテラン勢が揃った現場で、撮影は快調に進む。「ゆら」全景を捉えるカットでは、ファインダーを覗く山崎が、干された洗濯物により生活感を出すよう指示する場面も。細部まで物語の設定のリアルさを追求する名匠の視点に驚かされる。

 物語の舞台となるそば屋「ゆら」は、空き家となっていた古民家を改装し、地元でよく見られる菜園も一から作り上げた。部谷は「家に張りめぐらされたトタンの雪囲いが、東京から来た私から見ると廃墟のような感じを受けましたが、同時にその雪囲いに守られているということも感じた。冬になれば雪に閉ざされた生活があり、その厳しさの中から、この土地の優しさ、あたたかさがあるのだと思った。今回の映画は夏だけなので、囲いを全て取り払うことからはじめ、『ゆら』を作り上げました」と述懐する。

 台湾・高雄映画祭で出会った中国のフー・ウェイ監督との親交がきっかけで、中国の文化、映画人との交流に刺激を受け、本作を企画したという近浦監督。「例えば今の東京のコンビニで多くの外国人の方々が働いているように、国籍的に日本人だけで成立する物語は少なくなってきていると思う。そういった越境するような映画、これまでの中国人の友人との交流から、中国の方と一緒に映画を作ってみたいと思った」と明かす。俳優、スタッフに全幅の信頼を寄せ、1シーン1カットの撮影にこだわり、画作りは「場の雰囲気を優先させたい」と語る。9月下旬からは中国・河南省で現地のスタッフと撮影に臨む。「未知のことだらけですが、映画で文化交流ができれば」と意気込みを語った。

 「CHEN LIANG」公開は2018年。