是枝裕和監督(写真:奥山智明)

写真拡大

 カンヌ国際映画祭で審査員賞を獲得した福山雅治主演の『そして父になる』、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞の『海街diary』など国内外で高い評価を得ている映画監督、是枝裕和。福山と再びタッグを組んだ新作映画『三度目の殺人』についてインタビューに応じ、「まったく新手のエンターテインメントだと思っています」と自信をのぞかせた。

 是枝監督のオリジナル脚本による法廷劇である本作は、福山演じる勝訴のためなら真実は二の次という勝利至上主義の弁護士が、役所広司ふんする容疑者の言葉に翻弄されて、思わぬ事態に巻き込まれていく心理サスペンス。これまでの是枝作品とはまるで違う後味や、観る者によって解釈が異なるエンディングが早くも映画関係者の間で話題になっている。

 これまで家族の細やかな心理描写を手がけることも多かった是枝監督はその理由を「人間のデッサン力を上げようと思っていたんです」と説明する。本作制作の始まりは「それが一区切りついたので、今度は少し社会性のあるモチーフをプロットに持ち込んでみようと思ったから」だという。

 そんな今作は殺人の前科がある三隅(役所)が、再び殺人容疑で起訴されたところからストーリーが始まる。三隅は犯行を自供しているために死刑はほぼ確定していたのだが、勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山)は無期懲役に持ち込もうとする。ところが接見室でガラスごしに三隅と向き合ううちに重盛は三隅の言葉に違和感を覚えていく……。

 謎が謎を呼ぶ展開の作品の仕上がりに、製作陣さえも「ザワザワしています」と笑う監督。「簡単なあらすじを見せた時は、みんな乗り気でした」と言うが、「ただあまりに悩み多い題材だったので、途中でどこに着地するのか僕自身がわからなくなった瞬間があったことは確かです」と続けた。

 常人の理解を超えた存在である犯人像を追求するうちに、自分でもわからなくなったという監督。「少しだけネタバレをすると」と前置きすると、「弁護士は殺人犯の弁護をする時、本当のことがわかるわけじゃない。自分の中でこうじゃないかと思うしかない」と説明し、この作品に含まれたテーマについて語った。

 確かに観る者によってさまざまな判断が可能なこの作品。わかりやすい映画が好まれる中、鑑賞後に法廷さながらみんなでそれぞれの意見を闘わせてみるのも新しい映画の楽しみ方の一つかもしれない。(取材・文:高山亜紀)