8月22日、最下位に低迷するチームの成績不振の責任を取り、ヤクルト真中満監督が今シーズン限りでの退任を発表した。

 まだ残暑の厳しい神宮球場――31人のヤクルトファンに「次期監督は誰がいいか?」という質問をしたところ、3人の偉大なOBの名前が挙がった。

高津臣吾(現ヤクルト二軍監督)…13人
宮本慎也(野球解説者)…12人
古田敦也(野球解説者)…6人


就任1年目の2015年にはチームを14年ぶりリーグ制覇に導いたヤクルト真中監督

 3人が望まれた理由は様々だが、高津氏を推す理由を聞くと、”二軍監督”と”投手陣強化”という2つのキーワードが浮かぶ。

「来年となると、高津さんですね。(二軍のある)戸田で試合を見る機会が多いのですが、チームを任せられる安心感があります。チームカラーも知っていますし、私としてもそのカラーは変わってほしくない。それを継承したうえで、若手たちを伸ばしてほしい」(48歳/女性)

「小川淳司さん、真中さんと二軍監督で経験を積んで、それから一軍監督というのが最近の路線ですから。こんなに早くとは思わなかったですが……」(33歳/男性)

「強かった時代の選手ですし、やはり投手陣の強化が課題ですので。明るく、楽しく、強い。そういう雰囲気のチームにしてほしい。正直言うと、真中さんに続投してもらいたかったので、三木肇ヘッドコーチの監督もありと思っています」(21歳/男性)

「高津さんが有力というニュースが出ていますが、異論はないです。とにかく今年は故障者が多かったので、そこを何とかしてほしい」(30歳/男性)

「投手陣がしっかりしてくれば上位も見える。守りからリズムをつくるチームを目指してほしい」(18歳/男性)

「高津さんは投手出身ですので、とにかく投手陣の強化を期待したい」(18歳/男性)

「今年、一軍の故障者の影響を受けているなかで、現在、二軍で3位という実績があり、BCリーグ(新潟アルビレックス)での監督経験もある。今年はランナーが出てもつながらず、得点できない場面が多かったので、長打を打てる選手を育成してほしい。2013、14年のような打線とまでは言わないけど、ボコボコと点が取れるチームになってほしい」(21歳/男性)

 続いて、宮本氏を推す声はこんな感じだ。

「そろそろ帰ってきてほしいけど……ないでしょうね。本人にその気がないみたいなので。宮本さんに限らず、新監督になられる方の課題は、ケガへの対策ですよね。チームが安定しない。『ヤクルトならこの9人』というカチッとしたものがほしい」(26歳/男性)

「宮本さんがいいんだけど、その気がないというか、監督候補から外れているみたい。真中監督を継承するという意味では、三木さんもあり。真中監督の采配には疑問もあったけど、古田さんの方が腑に落ちないことが多かった。『ここで交代?』みたいな」(29歳/女性)

「現実的に勝てるかどうかはわかりませんが、現役時代からの人望、そしてキャプテンシーをまた見たい。ヤクルトは伝統的に打撃のチームですが、投手力や守備力を含めた、総合力のあるチームづくりを目指してほしい」(46歳/男性)

「宮本さんの野球理論なら勝てるチームになれると思います。現状の低迷を打破できるのは、宮本さんしかいません」(43歳/男性)

「”守備の人”と言われながらも2000本安打を達成し、野村ID野球も受け継いでいる。主力が揃えばリーグ1位を争う打線になると思いますし、そこに小技や堅実さをミックスした野球を見せてほしい」(26歳/男性)

「現役時代のプレースタイルから想像すると、接戦に強い感じがします。ホームランが多い方が楽しいけど、僅差の試合で勝てる野球を見せてほしい」(33歳/男性)

「細かい野球を知っているし、今のチームに足りないと感じる厳しさがある。レギュラーと若手が横一線でスタートして、野村(克也)さんのときのように強いチームにしてほしい」(40歳/男性)

「高津さんもいいけど、やっぱり宮本さんですね。今までのようにベンチが明るいチームにしてほしいと思う一方で、ゆるい部分を締めてほしい気持ちもあります。他球団と比べれば、フワフワしている感じがあるので……。それがヤクルトのいいところではあるんですけど(笑)」(33歳/女性)

 そして古田氏を待望するファンには「熱」を感じた。

「古田さんしかいない。ファンにもう一度戻ってくるって約束したんだから。弱いチームを再生してくれるのは古田さん。3位とか4位で引き継ぐのは大変だけど、6位なんだから。これ以上下がることはないし、やりやすいと思うよ(笑)。オレとしては2年目ぐらいから這い上がってくれればいいと思ってる。フロントも4〜5年は我慢してほしいよね」(50代/男性)

「ヤクルトファンになったきっかけが古田さんですからね。偉大な方だし、もう1回、ユニフォーム姿を見たい。監督専任になったらどんな采配をしてくれるのか。そこが楽しみです」(33歳/男性)

「古田さんを希望しますが、それが無理なら伊東勤さん、原辰徳さん、小久保裕紀さんなど、OB以外の監督を見てみたい気持ちもあります。チームとしては、とにかく先発を揃えてほしい。あとはトレーニングコーチを充実させて、ケガ人を出さないようにしてほしい」(41歳/男性)

「前回は選手兼任で負担が大きかった。そのなかで2番にリグスを起用。いまで言う超攻撃的オーダーのはしりですよね。監督専任になって、どんな野球を見せてくれるのか。古田さんがキャスターを務める『熱闘甲子園』(朝日放送)を見ていたら、若い子の育て方についての理論が『なるほど』と思えるものばかりだったんです。ヤクルトは高卒の選手が山田哲人のほかに育っていないので、その理論で若手を鍛え上げてほしい」(29歳/男性)

 8月22日の退任会見で、真中監督は「今の僕の力では厳しいという部分はあります。すぐに立て直すのは難しいですし、勝つ自信がない」とコメントした。この言葉を選手たちはどう受け止めたのだろうか。

 4年目の奥村展征(22歳)は、2013年のドラフトで巨人に4位指名されプロ入り。2年目に、FAで巨人に入団した相川亮二の人的補償選手としてヤクルトに移籍した。

「1年目のジャイアンツで(二軍の)試合に結構出させてもらったのですが、『うまくいかなかった』という気持ちが強かったんです。そう感じているなかで、真中監督は僕のことを『欲しい』と、リストから選んでくださった。その恩返しは絶対にしたいと思っています。ケガなどあって思うように貢献できなかったのですが、これから恩返しをしていきたい。残りのシーズンというより、目の前の1試合1試合に、みんなの想像以上の結果を残せるように頑張っていきたいです」

 今季、西浦直亨は開幕スタメンを果たすも結果を残せず、苦しいシーズンを過ごしていたが、ここにきてようやく強い打球が目立つようになってきた。

「試合を見にきてくださるファンの方がいるので、自分としてもいいプレーをしたいですし、結果も残したいのですけど……。言葉にするのは難しいというか……レベルアップしなければダメなのは間違いないので。今はちょっとずつですが、やることが見えてきました。残りのシーズン、やることは変わらないのですが、この苦しさを経験に、がむしゃらにもがいてやっていきたいです」

 山崎晃大朗は真中監督と同じ日本大出身で、背番号も現役時代の真中監督と同じ「31」を背負った。

「監督の前で成績を残したいという気持ちは変わらないです。『(自分を)使い続けてよかった』と思ってもらいたい。そのためにも残り試合でしっかり数字を残したいですね。それが来年につながることにもなりますから」

 午後1時を過ぎると、ヤクルトの選手による早出練習の打球音が聞こえてくる。奥村は森岡良介コーチを相手に「ショートゲーム(短い距離から投げるバッティング練習)」で快音を響かせる。西浦はマシンを相手に黙々とバットを振り、試合後にはベンチ裏の鏡の前で大松尚逸と一緒になって素振りを続けている。山崎は、杉村繁チーフ打撃コーチ、七條祐樹打撃投手の上げる230球のトスを黙々とネットに打ち返す。後半戦、出場機会を与えられたこの3人が、真中監督の「素晴らしい置き土産」になってくれることを願うばかりだ。

 真中監督は前述の退任会見で”3年間の思い出”についての質問を受けると、こう答えた。

「優勝したシーズン終盤は思い出に残っていますけど……喜びは3年間の、ほんのちょっとした瞬間で……難しい仕事だと痛感しました」

 最後に、真中監督と過ごした3年間をファンはどう感じていたのか。話を聞かせてくれたファンの言葉をいくつか紹介したい。

「私は野球を見て40年になりますが、この3年間は幸せな時間でした。今後については、まずはフジテレビONEの解説者になってほしい。ヤクルトOBが少ないんですよ(笑)。そして、いずれはヤクルトの監督として、まだ戻ってきてほしいですね」

「2015年の優勝は本当にありがとう。あのときの映像を見ると、監督、コーチ、選手をはじめ、チームの雰囲気が素晴らしかった。去年、今年と悔しいシーズンになりましたが、感謝しかありません」

「現役のときから真中さんを見ていますが、監督になるとは夢にも思っていませんでした。3年間いろいろありましたけど、外から野球を見て、監督としてまた戻ってきてほしい」

「優勝してくれたし、ほのぼのとしたチームでも優勝できるとわかったこともうれしかった。今年は誰が監督でも気の毒。それほど戦力が足りませんでした。続投したらまた苦しみそうだし、退任でよかったのかも。お疲れ様でした」

「監督は『ファンに迷惑をかけてしまった』とおっしゃっていましたが、全然そんなことないです。神宮に通って初めて優勝を経験できたこと、本当に感謝しています。残りの試合も全力で応援します」

 ヤクルトの新監督を待ち受けるのは”茨の道”だが、チームとファンが喜びをわかち合えるシーズンになることを切に願う。

■プロ野球記事一覧>>