ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 早いもので「夏競馬」も残り2週となりましたね。今週は、札幌競馬場で夏の終わりを彩るWASJ(ワールドオールスタージョッキーズ)が行なわれます。北の大地に、日本のトップジョッキー、さらには海外からの招待騎手が集い、見応えのある熱戦を繰り広げます。

 日本、そして世界のトップジョッキーが魅せる、その巧みな騎乗技術とせめぎ合いは必見。競馬は馬が走りますが、やはり人が動かしているんだな、と痛感させられる舞台です。ぜひ、多くの競馬ファンの方々にレースをご覧になっていただきたいですね。

 さて、そんな注目のWASJが開催される札幌競馬場で、8月27日にはGIIIキーンランドC(芝1200m)が行なわれます。

 WASJに参戦する多くのジョッキーをはじめ、東西のリーディング上位騎手が同レースで騎乗。GIスプリンターズS(10月1日/中山・芝1200m)の優先出走権を獲得できる一戦でもあり、WASJとはまた違った意味で見どころ満載のレースになりそうですね。

 まず注目は、昨年のこのレースで2着となったシュウジ(牡4歳)です。昨年末の阪神C(2016年12月24日/阪神・芝1400m)では見事な差し切り勝ち。今年の出走メンバーの中ではその実績は秀でています。

 ただ、今年に入ってからの3戦は、阪急杯(2月26日/阪神・芝1400m)8着、高松宮記念(3月26日/中京・芝1200m)15着、函館スプリントS(6月18日/函館・芝1200m)10着と不振。しかもここでは別定58kgという最も重い斤量を背負わされ、昨年とは違って厳しい状況にあります。

 唯一の救いは、昨年と同じく名手ジョアン・モレイラ騎手が鞍上を務めること。これは、大きなプラス材料でしょう。

 彼については、日本でももうお馴染みでしょう。「マジックマン」の異名を持つモレイラ騎手は、その華麗な手綱さばきで日本でも数多くの勝利を飾っています。彼が騎乗するだけで、その馬の単勝が売れるほどです。

 とにかく、どんな馬に乗っても鞍はまりが抜群。また、柔らかい手首を巧みに使って馬をコントロールするその技術は、何とも表現できない凄みを感じます。生まれ持ったセンスなのでしょうが、どんな馬でも(勝ち負けに)持ってきてしまう雰囲気があります。

 シュウジの、今年の凡走すべてに共通することは、折り合わずにガツンと掛かって走ってしまっていること。タメがまったく効かないレースばかりしているように思えます。

 そういう意味でも、馬を御(ぎょ)する能力に長(た)けたモレイラ騎手というのは、このうえないパートナーと言えるでしょう。道中、しっかり折り合ってタメが効けば、たとえ58kgの斤量でも勝ち切れる能力のある馬です。モレイラ騎手がどんな騎乗を魅せるのか、楽しみです。

 そのシュウジと、昨夏から過去4回対戦して3度先着しているソルヴェイグ(牝4歳)も注目される1頭です。

 ただ、シュウジに3度先着したといっても、高松宮記念以外の2回は本当にわずかな差でした。唯一先着を許したのも、シュウジにモレイラ騎手が騎乗した昨年のレース。今回は斤量差が4kgあって、人気はソルヴェイグのほうが上回るかもしれませんが、その斤量差を考慮してもこの2頭に大きな差はないと思います。

 斤量と言えば、前走のアイビスサマーダッシュ(7月30日/新潟・芝1000m)で58kgを背負ったネロ(牡6歳)は、その斤量が堪えた敗戦(10着)だったと思います。

 というのも、470kg前後の馬体ゆえ、500kgを超える大型馬に比べて斤量に敏感だと思うからです。まして、コーナーのない直線競馬ではスタートダッシュが勝負を決めるポイント。斤量を背負っていると、本当にダッシュがつきにくいんですよね。

 そして、今回は斤量57kg。たった1kgの違いですが、ネロにとっては大きな差だと思いますし、コースも違う今回は見直せるはずです。

 鞍上は南関東の中野省吾騎手。まだ25歳の若手ですが、こういうチャンスをもらえるほど、南関東では乗れるジョッキーとして知られています。ある意味、最も注目の1頭かもしれません。

 ところで、このネロについてですが、過去のレースで最も高いパフォーマンスを発揮したのは、戸崎圭太騎手が手綱を取った2015年末、オープン特別で2連勝を飾ったときだと思っています。前走は、戸崎騎手がそれ以来となる騎乗でした。そのため、ここへの布石かと思っていたのですが、戸崎騎手は今回、違う馬の鞍上を務めます。


戸崎圭太騎手騎乗で巻き返しが期待されるモンドキャンノ

 手綱を取るのは、モンドキャンノ(牡3歳)。これまた、昨年の函館2歳S(2016年7月24日/函館・芝1200m)以来の騎乗です。

 戸崎騎手には他にも、昨年のこのレースで騎乗して勝利を挙げたブランボヌール(牝4歳)や、前走のバーデンバーデンC(7月16日/福島・芝1200m)で手綱を取って鮮やかな勝利を飾ったフミノムーン(牡5歳)など、騎乗してもおかしくない馬が多くいます。

 そんな中、このモンドキャンノに乗るということは、この馬を選んで騎乗しているか、もしくは他馬の出走が決まる前から早い段階でオファーがあったか、どちらかの理由でしょう。

 仮に後者の場合、選んでいるわけではありませんが、そんなに早くオファーがあったということは、モンドキャンノ陣営から勝負気配を強く感じます。また、戸崎騎手サイドとしても、ノーチャンスの馬だと思えば、時と場合にもよりますが、おそらくキャンセルして他の馬を選ぶはず。それなりの手応えを感じているのでしょう。

 この2戦、スプリングS(10着。3月19日/中山・芝1800m)とNHKマイルC(9着。5月7日/東京・芝1600m)では見せ場なく惨敗。早熟といった懸念はなきにしもあらずですが、昨夏に函館でデビュー勝ちし、2戦目の函館2歳Sで2着と、洋芝適性はあります。さらに2歳時とはいえ、GII勝ちがあって、GI2着という実績は、メンバー中、最上位とも言えます。

 今回は、実績のあるスプリント戦。加えて洋芝のレースと、ここ最近とは一変したレースを見せてくれる可能性は十分にあるでしょう。

 戸崎騎手もそれを見込んでいるかもしれませんね。ということで、このレースの「ヒモ穴馬」には、このモンドキャンノを指名したいと思います。

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