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「職場でも家庭でも、食べものの話題はよく上ります。でも世間には間違った情報があふれているのです」と語るのは、科学ジャーナリストの松永和紀さん。2017年5月に、食にまつわる正しい情報を伝えるべく、『効かない健康食品 危ない自然・天然』(光文社新書)を上梓した。

 松永さんは新聞記者として10年勤めた後に科学ジャーナリストとして独立した。

 食物の特定の成分だけが抽出され、「体にいい」として売られている現代。松永さんに、人気の健康成分11種の意外な弊害、知られていない注意点について解説してもらった。

(1)ニンジン

 ニンジンなどに含まれるβ‐カロテンは、体内でビタミンAに変わり、体にいい! といわれているが……
→サプリメントの投与試験で、肺ガンや心臓疾患などの死亡リスクが上昇してしまった!

「フィンランドで約3万人の男性喫煙者を対象におこなわれたもの。米国での大規模試験でも同様の結果に。野菜や果物はいいですが、サプリは過剰摂取につながりがちです」

(2)わさび

 わさびなどに含まれる6-MS-TCは、ガンを予防する! といわれているが……
→人の体内で効くとは限らない!

「肝臓細胞を用いた実験で得られた結果ですが、細胞実験で結果が出ているからといって、人の体内で効くとは限りません。むしろ効かないことのほうが多いのです」

(3)ローヤルゼリー

 ローヤルゼリーなどに含まれるペプチドは、人の体を活性化させる! といわれているが……
→ハチにいいから人にいいという根拠はない!

「ローヤルゼリーとひと言でいっても、気象条件や花粉、蜜により成分は異なります。研究結果もまちまちで、効くのか効かないのか、一定の方向性を見出せない状況です」

(4)赤ワイン

 赤ワインなどに含まれるレスベラトロールは、ガンや心臓疾患のリスクを下げる! といわれているが……
→この仮説は研究で否定されてしまった!

「根拠となっていた『フランス人の心疾患死亡率は低い』という話は、ずさんな統計に基づいたものでした。赤ワインを飲むときの“免罪符”にはなりませんよ」

(5)海藻

 海藻類に含まれるフコキサンチンは、体重減少効果がある! といわれているが……
→米国では「研究が不十分」とされている!

「サプリの情報提供をおこなっている、米国立衛生研究所のダイエターリサプリメント局のウェブサイトによれば、『人での実験結果はひとつしかなく、ほかは動物実験』とのことです」

(6)青魚

 青魚などに含まれるDHA、EPAは、心臓疾患、糖尿病などのリスクを下げる!といわれているが……
→サプリでは魚を食べるほどの効果は得られない!

「ほかの成分に比べて、断トツに健康にいいとされる根拠があります。しかしサプリでは、魚から直接これらの成分を摂取するほどの効果がないと、研究でわかってきました」

(7)シジミ

 シジミなどに含まれるオルニチンは、疲労軽減効果がある! といわれているが……
→確実に効果があるといわれるほど研究が進んでいない!

「大量に摂取すると有害、という説もあり、動物を用いた試験がおこなわれているところです。シジミ何十個といったサプリをもし家族が摂ろうとしたら、私は止めるつもりです」

(8)ウコン

 ウコンなどに含まれるクルクミンは、アルコール代謝を改善する! といわれているが……
→摂取による死亡例がある!

「ウコンの粉末、サプリメントなどの摂取により、死亡例や劇症肝炎になったケースもあります。カレーのスパイスなどとして、少量を食べるなら安全ですが、大量摂取には注意が必要です」

(9)黒酢

 黒酢などに含まれる酢酸・アミノ酸は、血圧を下げる、疲労回復などの効果がある! といわれているが……
→黒酢が原因とされる健康被害も報告されている!

「黒酢を含む錠剤を3、4カ月摂取していた男性が薬剤性肝障害になった、1カ月近く黒酢飲料を飲んでいた女性が全身に紅斑が出た、などの報告があります」

(10)トマトジュース

 トマトジュースなどに含まれる13-oxo-ODAは、痩せる効果がある! といわれているが……
→そんなことは論文に書かれていなかった!

「実験でわかったのは、成分をマウスに与えたところ、血中の中性脂肪が低くなり、脂肪の代謝系が活発になったということ。体重減少効果はなく、人に効くとは限りません」

(11)ブルーベリー

 ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンは、目にいい! といわれているが……
→そんな研究結果はどこにもなかった!

「研究がおこなわれているのはブルーベリーとは別の『ビルベリー』。ブルーベリーのアントシアニン含有量は少なく、吸収率も悪いため、たまに食べる程度では、効果はありません」
(週刊FLASH 2017年7月25日号)