ホントに危機的状況なのだろうか。と思う。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表である。

 個人的にハラハラしているのは、ケガ人が出ているポジションではない。右サイドバックだ。

 ブラジルW杯以降の日本代表で、最終ラインの右サイドは酒井宏樹が担ってきた。ドイツ・ブンデスリーガからフランス・リーグアンの名門マルセイユへ移籍し、レギュラーポジションをつかんだ彼に不満はない。先週末に開幕した新シーズンも、この27歳はスタメンで出場している。

 問題はバックアッパーの不在にある。内田篤人の復帰待ちを辛抱強く待ち続けているなかで、右サイドバックを本職とする選手は酒井宏ひとりの編成が常態となっている。

 左右両サイドでプレーできる酒井高徳をスライドさせることで、ひとまず手当はできる。長友佑都を右サイドへまわすこともできる。クラブでセンターバックを務め、代表ではボランチで起用されてきた遠藤航は、右サイドバックにも適応するユーティリティ性を持つ。

 個のクオリティは彼らも高い。ただ、攻撃のダイナミズムは失われるだろう。コンビネーションのスムーズさも欠く。

 すなわちそれは、対戦相手にスキを見せることになる。競技レベルが上がること、勝敗の分かれ目は細部に宿る。スペシャリストではない選手の起用は、リスクにつながりかねない。

 ならば、候補者は誰なのか。これがなかなか絞り込めない。

 今年3月の時点で予備登録されているメンバーを見ると、右サイドバックの後者として室屋成(FC東京)、松原健(横浜FM)、米倉恒貴(G大阪)、川口尚紀(新潟)らがピックアップされている。米倉はハリルホジッチ監督の指揮下でプレーした経験があり、松原はアギーレ監督の日本代表に招集されたことがある。室屋は日本代表の手倉森誠コーチのもとで、リオ五輪に出場した。川口もリオ五輪世代だ。
それぞれにセールスポイントはあるもの、代表招集となると現時点ではためらいを禁じ得ない。当事者たちも、自分が呼ばれるとは考えていないだろう。所属クラブではっきりとしたアピールをする選手に、早く出現してほしいものである。

 対照的に元気なのが、W杯出場経験のあるベテランだ。

 中村俊輔や中村憲剛は、所属クラブで歴然とした違いを見せている。ケガから復帰してきた大久保嘉人も、9日の大宮戦で途中出場から決勝ゴールをあげた。ゴール前での冷静かつ正確なフィニッシュは、国内屈指の点取り屋であることの証明だった。同じ日のJリーグでは、遠藤保仁もリーグ戦今季初得点をマークした。

 攻撃陣に負傷者が多く、来る最終予選への不安が拭えなければ、彼ら経験者の力を借りればいい。すでに今野泰幸の力を借りているのだ。危機的状況と嘆くまえに、ベテランを選考の対象に加えればいいだろう。

 何よりも彼らのプレーが、日本代表の力となれることを物語っている。