J1リーグが再開された7月最終週の週末、ハンドボール男子代表の日韓戦を取材した。

韓国との対戦成績は、かつてのサッカーを見るようだ。通算成績は13勝2分40敗と、大きく負け越している。しかも、13勝のうち9勝は1982年までにあげたもので、近年は黒星がズラリと並ぶ力関係だ。昨年のアジア選手権で26年ぶりの勝利をあげたが、韓国はベストメンバーでなかったと聞く。

試合は29対29のドローに終わった。残り4秒で同点に追いつくスリリングな展開は、このゲームが初陣だったダグル・シグルドソン監督のチームへの期待を抱かせただろう。アイスランド出身の名将に率いられ、ハンドボール日本代表は2020年の東京五輪へ強化している。

ハンドボールとサッカーの共通点は多い。フィジカル的な要素では、強さ、速さ、敏捷さが問われる。攻守の切り替えの瞬間はカウンターの好機になるので、集中力を研ぎ澄ましておかなければならない。チーム戦術においては、攻守の切り替えのスピードやインテンシティが必要だ。攻撃でも守備でも、チームとしてのコンビネーションは不可欠である。

フィジカルコンタクトの激しさは、サッカーよりはるかに激しい。ピヴォットプレーヤーと呼ばれるポストプレーヤーを中心としたポジション争いは、ラグビーのモールのようである。「身体をぶつけられる前にボールをはたく」ようなプレーは、ハンドボールのアタッキングゾーンではほとんど成立しない。フィジカルの劣勢をはねのける“抜け道”がないわけで、体格差を受け入れて勝利を目ざすのだから、サッカーよりはるかに過酷である。

もうひとつ大きな違いが、シュートから逃げられないことだ。相手はゴール前を固めている。サッカーで言えばブロックを作られた状況だが、ブロックの外側でボールを回し続けるわけにいかない。どこかで、誰かが、打たなければ、局面は動かないのだ。

守備に人数を割いてカウンター狙い、ひたすら守ってセットプレー狙い、といった戦術は通用しない。カウンターはハンドボールの基本戦術のひとつで、どのチームも狙っている。サッカーの直接FKに相当するものはなく、PKにあたる7メートルスローを獲得するには、当然のことながら敵陣深くまで攻め込まなければならない。

自分で決めるという「自己責任」と、チャンスを逃さない「決断力」と、少ない可能性にも賭ける「チャレンジ精神=ゴールへの意欲」がなければ、ハンドボールのコートには立てない気がする。サッカーでは目的と化してしまうこともある「ボールを大切にする」姿勢が、ハンドボールではゴールを奪うための手段として揺らがないのだ。

エディ・ジョーンズが率いた15年ラグビーW杯の日本代表もそうだったが、ハンドボール日本代表もフィジカルを勝敗の理由にしていない。というよりも、理由にできない環境で戦っている。

サッカーもフィジカルと正面から向き合うべきではないだろうか。ルーカス・ポドルスキーにヘディングシュートを見せられると、日本のフィジカルスタンダードは世界とかけ離れていると思えてならないのだ。