プレシーズンマッチ、カイザースラウテルン戦に出場した宇佐美貴史(アウクスブルク)

 昨シーズンが終わり、日本代表のW杯予選に追加招集の形で呼ばれた宇佐美貴史(アウクスブルク)は、ちょっと不思議な話をしていた。

「最終節の後にスポーツディレクターと監督と話をして、来季は10番的な働きをしてほしいと言われた」

 それはつまり、新シーズンの出場を担保するという意味なのだろうか。

「いや、どうなんでしょう。ちょっとわからないですね」

 本人も、本当によくわからないという表情だった。昨シーズンは11試合に出場、うち先発は5試合で無得点の選手に、なぜわざわざ場を設けて、そのような話をしたのだろうか。

 今季もアウクスブルクはマヌエル・バウム監督が続投する。中盤のハリル・アルティントップが抜けた一方、サミ・ケディラの弟ラニ、ベネズエラ人FWセルヒオ・コルドバ、GKファビアン・ギーファーらを獲得したが、これまでのチームを大きく変えるものではなさそうだ。それは守備から入り、一か八かでゴールを狙う、いわば受け身のサッカー。そこに、チームが1部に昇格したころから変わらない、「とにかく頑張る」という哲学が加わる。

 そして迎えたプレシーズン、練習試合を2試合終えた時点では、宇佐美は昨季と同じ左サイドでプレーしている。ボールを持つ時間、攻撃をする時間はとにかく短い。

「来季は10番のポジションで考えてると言われたけど、2試合は左サイドなので、どういうことなんだろうと、少し疑問というか、あの話し合いはなんだったのかなと、少し思っています。まず自分のプレーのアピールはありますけど、『使う気があるのか』というのはこっちも選手として要求していかないといけないですし。去年のようなシーズンになることは、個人的には許せないので、そういう状況も見ながらというシーズンになりそうかなと思っています」

 わざわざ「10番的な働き」と言うからには、チームは宇佐美に何を求めたのだろうか。

「ボールをもっと触ってほしい、と。ドイツ語でドミナンテ、支配するということをしてほしいし、『それが君には合うと思う』と言われたんです。でもボールを持てれば、支配できれば、左サイドで使われてもよさは出せます。相手に支配されて頭上をボールが越えていくことがないようなサッカーになるのが一番です。でも、サイドでのプレーでそこを変えることはできない。真ん中なら少し自分のところから色は出せるかも、ですけど。

 やはり(ボール支配率は)最低限40(%)くらいはほしいです。去年なんて30対70や20対80の中で、ほぼサイドを飛ばして前に蹴って、こぼれ球勝負をして相手にボールを取られて、ボール支配をされて守って……そういうサッカーではやっぱりきついですし。そのへんのトライもチーム全体でしているところだと思うので、どうなるか」

 とはいえ、どんなサッカーであれ、どのポジションであれ、宇佐美が求めるのは出場機会だ。それがなさそうであれば、移籍期限の8月31日までに何が起こるかわからない。

「もちろんどうなるか、全くわからないですよね。一番はアウクスブルクで残ってやりたいし、試合に出たい。ただ、それはアウクスブルクからの期待というか、信頼がないとできないので、そういうものがあるのかどうか。もちろん信頼を得ていかないといけないんですけど、それ以前にまず、もう少しこうしてほしいというこっちの要求はあります。そういう中で、どう動くかは本当にわからないと思いますね」

 信頼がないと安定したプレーをするのは難しい。ただし、信頼を得るための努力は選手がすべきだろう。「W杯を見据えても大切な1年になる」という思いが強いという宇佐美。2度目となるドイツでの2シーズン目は、そんなベーシックな戦いから始まっている。

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