子どもの「お手伝い」をどう生かすか伸ばすか問題

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暑い日が続く。今年の暑さはちょっと異常だな、夕飯の支度をするにもできれば火を使いたくないから、とりあえずサラダと酢の物でも作るか、とボウルに野菜を放り込んで混ぜていると、テレビを見ていた娘が「まぜるのやりたい!」と飛んできた。

お迎えから帰ってくるとかなりクタクタだ、お腹もすいているから早めに夕飯を始めたいが、その一言で瞬時に脳内がフル回転する。

「今から手伝わせたらめっちゃ時間かかるよなあ……」
「お手伝いしたいという自発的な気持ちを尊重せねば……」

さあ、どっちを選ぶ!!

もちろん後者だ。

ぎこちない手つきで、ボウルの中身を混ぜている。混ざっているようで混ざっていないことには目をつぶろう。うまく力を加減できないから、途中途中で野菜がボウルの外へ吹っ飛んで、無残なことにもなる。

時間をかけて、ある程度混ざったところで「できたー!」と嬉しそうに披露してくれる。本人も満足げな様子だし、私も途中で口出しをせずに済んだので、「ありがとう、また手伝ってね」とお願いして、テーブルや床に飛び散った野菜を拾った。

娘がお手伝いに目覚めたのはひとえに保育園のおかげだ。
芋ほり遠足はもちろんのこと、玉ねぎの皮むきやえんどう豆のさや取りなどの調理補助、園庭で茄子やニンジンを育てるなど、食に関心を持てる取り組みを日々行ってくれている。

年長クラスになるとおやつのピザやクッキー作りにもトライするとかで、今から心待ちにしている様子もほほえましい。食べるだけではなくて、作ることに今のうちから興味を持つのは成長する上でも重要なことだ。

女の子だからどうこうという話ではなくて、家事全般は早めに習得させたいし、積極的にお手伝いもしてほしい。

しかし相手は4歳児、お手伝いビギナーだ。
お手伝いをしたいからといって、「これやっておいてね」と丸投げして、放っておいていいわけではない。「ごはん、おちゃわんにいれたい!」と言われたら、炊き立てのご飯をひっくり返さないか、やけどしないか注意を払わなくてはいけないし、「たまごわりたい!」と言われたら、コンコンと打ち付けた後にちゃんとお茶碗の中におさまるかまで見届けなくてはいけない。

野菜やご飯は多少落とされてもリカバリーが可能だが、卵は床に落とされたときのダメージが大きすぎる。後片付けや、失敗した後の処理を考えると、いつでも何でも好きなようにさせてあげようという気にはなかなかなれず、とくに急いでいるときなどは、「もうママがやるからいいよ」と手を止めてしまったり、先回りしてしまって「せっかくの自主的な気持ちを摘んでしまったかも……いかんいかん」と反省した。

しかし、お手伝いというのは失敗も含めて一通り経験することに意義があるのかもしれない。熱いやかんに触れたらやけどをするとか、野菜を切ろうとしたら包丁で指も切ってしまうとか、卵を割ろうとしたら失敗……とか。

「あー、やっちゃった」と身をもって経験することで、次に活かそうと思えるだろうし、そうやって学んでいくことで、徐々に私がつきっきりで見ておく必要もなくなって、ゆくゆくは家庭の戦力にもなってくれるのだろう。

子どもは興味のあることはサポートする体制さえ取っておけばすぐにマスターしていくものだ。

遠足にお弁当を持っていく際に、おにぎりを自分で握りたがったので、ラップを用意してあげると、自分でしゃもじを掴んでごはんを乗せて、キュッキュッと結んで小型のおにぎりをいくつも作っていた。

想像以上にきれいにできていたので、褒めて伸ばそう、という意図ではなしに「わー、上手に握れたね」と自然に声が出た。

どうやらそれが嬉しかったみたいで、その後も休みのたびに近場の公園にお弁当を持っていきたいとせがまれ、毎回おにぎりは娘の担当にさせた。回数を重ねるごとに、おにぎりの出来栄えも上達して、娘も嬉しい、私も嬉しい、まさにWIN-WINってやつだ。

先日、知人に教えてもらったのだが、子どもに「これはあなたの役割だよ」と家事をさせることは、家庭における自分の居場所を確かめられるようになる、自己肯定感にも繋がるということがデータでも証明されているそうだ。

最初はお手伝いからでいいので、何でもいいから習慣づけていくことが大事らしい。
「めっちゃいいこと聞きましたわ! お手伝いさせます!家事させます!!」とスイッチが入った私は、早速何をしてもらおうかと前のめりになっていた。

お風呂掃除かな、お皿洗いかな、中学生くらいになったらお弁当持参になるだろうから、自分で作らせるかな、と皮算用しているが、ここで必要とされるのは教える親の根気と心の余裕だろう。

多少水を流しっぱなしでも逐一注意するのではなく、ある程度はやりたいようにやらせて、でも適宜「もうちょっとやり方を変えるとうまくできるよ」などとアドバイスもしつつ、たとえばお皿の汚れが落ちていなかったりしても、あからさまに洗いなおしたりせず、やる気も伸ばせる声掛けを……と結構やることがたくさんある。

大丈夫だろうか、やっていけるのか、まだ何も始まってないけれど。

自分ひとりで抱え込まずに、えいやっと任せてしまえば各段に楽になるというのは、夫に子育てのあれこれをお願いしてきた経験からも分かっている。自分のやり方がいつでも一番正しいわけではないから、娘のお手伝いが意外と革新的ということもあるかもしれない。「やりたいようにやってみな」くらいの気持ちで一任してしまえばいいのかも?

ああ、でもやっぱり卵は失敗されるとキツいな……ここは見守りが必要だな、と今日もハラハラしながら、卵がお茶碗におさまるまでを見つめている。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。