顔認証システムを搭載した警察車両(写真: NECの発表資料より)

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 NECは11日、NECヨーロッパを通して、英国サウス・ウェールズ警察に顔認証システムを提供したことを発表した。米国国立標準技術研究所(NIST)の顔認証技術ベンチマークテストで4回連続1位の評価を獲得したNECの顔認証ソフトウェア「NeoFace Watch」を活用する。

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 「NeoFace Watch」はカメラ映像向けのリアルタイム顔認証ソフトウェアとして、警察車両などに配置されたカメラに映った人物と、監視リストに登録済みの容疑者や要注意人物、行方不明者など計50万枚の写真を照合、スピーディーで高精度な人物の特定を可能としている。

 既にウェールズ国立競技場で6月3日に開催されたUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦の開催週に活用され、安全な試合運営に貢献した。英国で大規模なスポーツイベントに顔認証システムが使用されたのはサウス・ウェールズ警察が初めてである。今回の導入を機に、空港や大型商業施設など人の往来が多い場所での用途拡大が期待できる。

 NECはグローバル成長戦略の柱として顔認証技術などを用いた「セーフティー事業」を強化。既に顔認証技術の開発には30年の実績を持ち、同技術を用いたシステムが世界40カ国100システム以上に導入されている。ブラジルの空港税関や韓国のロッテワールドタワー展望台、インド・スーラト市の街中監視システム、コロンビアのサッカースタジアムなど、税関業務の効率化や観光スポットの安全性の強化に貢献している。

 技術的には最先端のAIを駆使することで、悪環境の映像においても高精度を実現する顔認証技術を開発するなど、世界的なベンチマークテストにおいて最高評価を獲得してきた。ディープラーニングも活用することで、低解像度の顔への対応も強化。また、顔認証角度を左右45度、上下30度、顔検知角度最大90度まで可能にすることで、人々がカメラを意識しない自然な動作の中での顔認証を実現している。

 昨今、顔認証技術は出入国管理の国家インフラや公共施設のセキュリティ管理、コンサート会場の入場管理など幅広い用途にて活用され始めている。これまでの静止画像による認証システムでは、利用者が指定のカメラ正面に立つ必要があったが、技術開発の向上によりカメラを意識せずに歩いてくる人物を認証できる動画顔認証システムが主流となっている。

 今後は病院や介護施設の見守り、チケット転売防止、重要施設の入退管理や記録など幅広い活用が期待されている。顔認証システムにはベンチャーから大手まで多くの企業が参入しているが、現時点ではNECの顔認証技術が精度と速度共にナンバーワンとされ、顔認証関連銘柄の筆頭銘柄とされている。国家インフラの効率化やセキュリティ管理など、その用途は拡大する一方であることから、顔認証技術の動向には今後も注目していきたい。