サンフレッチェ広島の森保一監督が、7月3日に退任した。監督の辞意をクラブが了承した。

 2012年の監督就任から、3度のリーグ優勝を果たした。クラブのOBでもある指揮官のもとで、広島は安定感と結果を両立させていったのだが、毎年のように主力が抜けている事実は見逃せない。GK西川周作、DF森脇良太、ファン・ソッコ、塩谷司、MF高萩洋次郎、FW石原直樹、ドウグラス、ピーター・ウタカ、佐藤寿人、浅野拓磨らが、森保監督の就任後に移籍している。

 移籍の理由は様々だ。Jリーグの他クラブに引き抜かれたり、海外のクラブへ移籍したり、自らの可能性を探ったりと、選手によって事情は異なる。ただ、Jリーグの他クラブへ選手が加入した場合は、ライバルの戦力がアップすることになる。広島へやってくる即戦力もいるものの、近年は“抜かれるクラブ”との印象もつきまとってきた。

 そうしたなかで、森保監督は結果を残してきた。今シーズンはJ2降格圏に低迷していたものの、彼の評価が傷つくことはないだろう。

 さて、日本サッカー協会は2020年の東京五輪の監督選びを水面下で進めている。現役時代は日本代表として活躍し、若年層の日本代表のコーチも務めた森保監督が、有力な候補として浮上するのは間違いない。

 東京五輪の出場資格は、1997年1月1日以降に生まれた選手となる。だが、上位進出にはオーバーエイジの力が不可欠だ。本大会時点で24歳以上の選手も、無関係ではない。無関心ではいられないのだろう。自国で開催される五輪に出場したいと思わないのは、日本人選手として不自然だ。

 つまり、“オールジャパン”でメダル獲りに挑むのが東京五輪なのである。過去の五輪よりもさらにレベルの高い結束が必要だ。

 チームを束ねるスタッフも、監督を決めたらOKでは物足りない。22年のW杯とその先にまで視野を広げ、日本サッカーの方向性を明確にしたうえで監督を選ぶ。

 個人的には、トロイカ体制でもいいと考える。たとえば、リオ五輪でチームを率いた手倉森誠監督と森保監督がタッグを組んだら、どのようなチームになるだろう。

 手倉森監督には五輪本大会を経験しており、森保監督にはU−20W杯にコーチで、クラブW杯に監督として出場している。二人の経験を持ち寄ることで、ケース・バイ・ケースの柔軟な対応が可能になる。

 戦術的な選択肢も広がる。リオ五輪代表で4−4−2と4−3−3を併用した手倉森監督に対して、森保監督は広島で3−4−2−1を磨き上げていった。ドイツの優勝で幕を閉じた先のコンフェデレーションズ杯でも、戦術的な柔軟性は勝敗に影響を及ぼしていた。2020年の東京五輪では、複数のオーガナイズを使い分けることがごく当たり前になっていることも考えられる。その意味でも、様々な戦い方のできるチーム作りが望まれる。

 東京五輪の監督を巡る報道は、これから本格化していく。国民的なイベントに臨むチームを誰に託すのかは、簡単に決められるものではない。だからこそ、誰かひとりではなく2人、3人のグループで指導部を形作ることを選択肢に加えていい。しがらみに縛りつけられないためにも、である。