本格的な夏競馬シーズンが到来。今週は『サマー2000シリーズ(※)』の初戦、GIII七夕賞(7月9日/福島・芝2000m)が行なわれる。
※夏競馬を盛り上げるために2006年から行なわれている重賞のシリーズ戦。6月〜9月に開催される指定重賞での成績をポイント化し、その総合得点を競うもの。芝のスプリント戦(1000m〜1200m)を対象にした『サマースプリントシリーズ』をはじめ、芝マイル戦の『サマーマイルシリーズ』、芝2000m戦の『サマー2000シリーズ』がある。

 注目されるのは、マルターズアポジー(牡5歳)やマイネルフロスト(牡6歳)といった重賞経験が豊富で、なおかつ福島で好成績を残している面々だが、それ以上に人気を集めそうなのが、ゼーヴィント(牡4歳)である。


七夕賞で1番人気が予想されるゼーヴィント

 まだ底を見せておらず、これまでに重賞は4度走って1勝、2着3回とパーフェクト連対。昨秋のGIIセントライト記念(中山・芝2200m)では、皐月賞馬ディーマジェスティと僅差の2着という好勝負を演じている。しかも唯一の重賞勝ちが、昨年のGIIIラジオNIKKEI賞(福島・芝1800m)と福島での実績があるため、その魅力をさらに高めている。

 そもそもゼーヴィントは、父がディープインパクト、母が古馬となってオープン特別で3勝を飾っているシルキーラグーンという血統で、早くから期待が高かった。そして、デビュー3戦目に初勝利を飾って以降は、3勝、2着3回、3着1回と至って順調な成長曲線を描いてきた。今回の七夕賞をステップにして、秋には大舞台での飛躍が期待されている。

 とはいえ、ここまでの道のりは決して数字で見るほど平坦ではなかった。というのも、昨秋以降は、常に脚元の状態に不安を抱えて、連戦することができなかったからである。

 今回も年明けのGIIアメリカジョッキークラブC(2着。1月22日/中山・芝2200m)以来となる、およそ4カ月半ぶりの実戦。十分に間隔をとったと見れば問題はないが、実際のところはどうなのだろうか。

「前走のあとは、左前脚にやはり不安が出てしまって、大事をとることになったみたいです。そこから『じっくり立て直して』ということで、今回の七夕賞になるんですが、正直なところ、ここも”突貫工事”なのではないかな、という印象があります」

 そう指摘するのは、競馬新聞『勝馬』の野口誠記者。急仕上げでも、七夕賞に挑んでくる事情についても続けて説明する。

「いくつか、理由は考えられます。もちろん、昨年重賞を勝って、福島記念(2016年11月13日/福島・芝2000m)でも2着となったように、相性のいい舞台というのが、ひとつあります。ただそれ以上にポイントとなるのが、立地なのではないでしょうか。

 放牧先のノーザンファーム天栄が福島競馬場から近く、すぐにリフレッシュに出しやすい。福島開催で、天栄を利用する(一口馬主クラブの)シルクレーシングやキャロットクラブの関東馬が好成績を挙げやすいのも、そういった背景があるはずです」

 では、野口記者の見立てはどうなのか。今回のゼーヴィントは軽視してもいい、ということなのだろうか。 

「強調こそできませんが、メンバーも強力な相手は限られています。(ゼーヴィントは)約ひと月前にトレセンに戻ってきて調整されていて、先週はかなりビッシリとやりました。もともと素質はありますし、牧場でもある程度乗り込まれているので、これで十分と言えば、十分とも言えます。

 ただ、急仕上げを意識しすぎて今週の追い切りでもビッシリやってしまうようだと、まだ仕上がっていないのではないか、と勘ぐりたくなります。また逆に、オーバーワークという心配も増しますね。そういう意味では、今週が軽めの調整であれば、陣営としても自信を持って送り出せる状態にあると判断した、と見ていいでしょう」

 迎えた水曜日、ゼーヴィントは調教である程度ハードに追われた。野口記者の言葉を信じるなら、七夕賞では思い切って外すことを考えてもいいかもしれない。

 さて、七夕賞の勝ち負けはともかく、今後のビジョンについて、陣営はどう考えているのだろうか。野口記者はこう見ている。

「調教師は『大きいところを狙える馬なので、大事に使いたい』という意向を明言しており、これはオーナーサイドにも伝わっているようです。おそらくここで勝っても負けても、夏競馬はこの1戦のみで、今後はGI天皇賞・秋(10月29日/東京・芝2000m)に照準を合わせて調整されていくのではないでしょうか。ここまで、一度もパンとした状態で使えたことがないのに、この成績。その点がクリアできれば、確かに大きいところでも期待が持てます」 体質もあって、ここまでは無理使いを避けてきたゼーヴィント。それでも、安定した成績を残しており、七夕賞でもそれ相応の走りを見せれば、秋の大舞台では「伏兵」として、いやそれ以上の存在として、脚光を浴びるかもしれない。

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