「ひよっこ」74話。シシド・カフカ無双「そんな顔してるくせに秘密をもってるっていうのは罪が重いのよ」
連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第13週「ビートルズがやって来る」第74回 6月27日(火)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:田中正
父の情報を聞いて落ち込むみね子(有村架純)を心配し、何か楽しいことがないものかと考える鈴子(宮本信子)。そんなある日、宗男(峯田和伸)からみね子の元に電報が来て・・・。
富(白石加代子)が、早苗の田舎のお土産を、みね子に差し出す。
富としては、みね子への優しさだったわけだが、その「まずくはないでしょう」に引っかかったのか、早苗は
そっぽを向いてしまう。
炊事場で、焼きうどんを放ったらかしにして、ぶんむくれる早苗に、大家さんに「まずくはないでしょう」と言われたからか、と島谷は訊ねる。と、どうやら、理由はそれではないらしい。
さあ、ここから、岡田惠和得意のワンシチュエーションコメディ劇場だ。
素直でない早苗が、「せっかく友達になれたのになんで(みね子の悩みを)教えてくれないんだ」ってことに対して不満を感じていることをうまく言葉に出来ない状況を、ずいぶんと尺をとって描く。
みね子に対して、なぜ、父の事情を話さなかったのかと、なんだか言いがかりのようなことを言い出す早苗は
素直じゃないだけであることがあらかじめわかっているとはいえ、面倒くさい。
「才能も将来性もまったくない話しまでさせられて」(漫画家ふたりのこと)
「お高くとまってそういうこと絶対にいわない人だから・・・」(島谷のこと)などと、関係ない人たちのことまで悪く(気持ちは悪くないがつい言い方が悪くなってしまう)言い、無駄に皆の気持ちをさかなでする。
その流れに乗って、島谷までが、早苗だって「(漫画家ふたりのように)才能がない将来がないみたいに匹敵するようなこと」を言わないじゃないかと言いだし、漫画家ふたり(岡山天音、浅香航大)は立つ瀬がない。でも、彼らはへこたれないキャラに設定されているので、いやな感じにならないで済む。
早苗は、年齢を25歳と詐称しているらしいが、そのへんの事情を含め、自分のことを皆に話してないことを
「謎めいた雰囲気醸し出してる人はそれでいいのよ」と開き直る。
「この子みたいに、一見なんの秘密もありません、バカ正直です、なんでも話しちゃいますみたいな顔してさ、そんな顔してるくせに秘密をもってるっていうのは罪が重いのよ」
(久しぶりに、勝手に、名台詞の収蔵庫に収蔵決定です!)
これにはみね子が怒り出す。当たり前。
みね子は、アパートの人たちには話したくなかったことを吐露する。ほんと、ごもっとも。
激してしまい、「それがいけませんか」が「それがいかませんか」に聞こえてしまうところに臨場感があった。
結局、焼きうどん食べながら、すっかり事情を話したみね子に、
「働いて、ほとんど家に送金して、そのままずっと生きていくの?」と問いかける早苗。
島谷は、早苗の気持ちの通訳という役割。
早苗は、みね子の気持ちの通訳であると同時に、未だ自立した夢がなく、外面は善良、素朴だが、内面には暗さを隠し持っているという部分を容赦なくえぐる役割。
そして、漫画家は、サンドバッグであり、和ませ役。
一見、ほのぼの空間のあかね荘だが、実は、みね子の内面的成長及び変化をもたらすジムのような場所なのではないか。
鈴子さんは、「とか言って」という斜めに見た言い方をよくする。
4話では、「東京オリンピックとか言って」と言っていた。
高度成長とか、オリンピックとか、となにかと斜めに見たがる視聴者の代弁であろう。とか言ってみたりして。
宗男の髪型が、すっかりマッシュルームカットになっている。ビートルズに影響されているのだろう。
どうやって毛先を絶妙にカールさせてるんだろう。
田舎では、この髪型は、そうとう数奇な目で見られそうだと、余計なお世話ですが心配です。
世界的なロックスター・ビートルズは、1966年、6月30日、7月1日、2日に武道館でコンサートを行った。
余談だが、国中が熱狂した祭りの様子を、コンサートの前後、来日から離日するまでの102時間(5日間)を、その裏側やビートルズを取り巻く状況を、数人のチームで、くまなくレポートして(ビートルズの止まっていたヒルトンホテルの一室を取材部屋にして作業したらしい)、熱狂さめやらぬうちに「ビートルズ・レポート」として出版したのが、ジャーナリスト・竹中労だった。ライターを生業とする筆者としては、ビートルズ当人よりも、こういう仕事をした人に興味がいくが、話が逸れるので、これくらいにしておく。
「ひよっこ」では、ビートルズ来日がどう描かれるのだろうか。鈴子が、「ビートルズ」に、「とか」をつけるかつけないか気になる。
(木俣冬)
第13週「ビートルズがやって来る」第74回 6月27日(火)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:田中正
74話はこんな話
父の情報を聞いて落ち込むみね子(有村架純)を心配し、何か楽しいことがないものかと考える鈴子(宮本信子)。そんなある日、宗男(峯田和伸)からみね子の元に電報が来て・・・。
「謎めいた雰囲気醸し出してる人はそれでいいのよ」
富(白石加代子)が、早苗の田舎のお土産を、みね子に差し出す。
富としては、みね子への優しさだったわけだが、その「まずくはないでしょう」に引っかかったのか、早苗は
そっぽを向いてしまう。
炊事場で、焼きうどんを放ったらかしにして、ぶんむくれる早苗に、大家さんに「まずくはないでしょう」と言われたからか、と島谷は訊ねる。と、どうやら、理由はそれではないらしい。
さあ、ここから、岡田惠和得意のワンシチュエーションコメディ劇場だ。
素直でない早苗が、「せっかく友達になれたのになんで(みね子の悩みを)教えてくれないんだ」ってことに対して不満を感じていることをうまく言葉に出来ない状況を、ずいぶんと尺をとって描く。
みね子に対して、なぜ、父の事情を話さなかったのかと、なんだか言いがかりのようなことを言い出す早苗は
素直じゃないだけであることがあらかじめわかっているとはいえ、面倒くさい。
「才能も将来性もまったくない話しまでさせられて」(漫画家ふたりのこと)
「お高くとまってそういうこと絶対にいわない人だから・・・」(島谷のこと)などと、関係ない人たちのことまで悪く(気持ちは悪くないがつい言い方が悪くなってしまう)言い、無駄に皆の気持ちをさかなでする。
その流れに乗って、島谷までが、早苗だって「(漫画家ふたりのように)才能がない将来がないみたいに匹敵するようなこと」を言わないじゃないかと言いだし、漫画家ふたり(岡山天音、浅香航大)は立つ瀬がない。でも、彼らはへこたれないキャラに設定されているので、いやな感じにならないで済む。
早苗は、年齢を25歳と詐称しているらしいが、そのへんの事情を含め、自分のことを皆に話してないことを
「謎めいた雰囲気醸し出してる人はそれでいいのよ」と開き直る。
「この子みたいに、一見なんの秘密もありません、バカ正直です、なんでも話しちゃいますみたいな顔してさ、そんな顔してるくせに秘密をもってるっていうのは罪が重いのよ」
(久しぶりに、勝手に、名台詞の収蔵庫に収蔵決定です!)
これにはみね子が怒り出す。当たり前。
みね子は、アパートの人たちには話したくなかったことを吐露する。ほんと、ごもっとも。
激してしまい、「それがいけませんか」が「それがいかませんか」に聞こえてしまうところに臨場感があった。
結局、焼きうどん食べながら、すっかり事情を話したみね子に、
「働いて、ほとんど家に送金して、そのままずっと生きていくの?」と問いかける早苗。
島谷は、早苗の気持ちの通訳という役割。
早苗は、みね子の気持ちの通訳であると同時に、未だ自立した夢がなく、外面は善良、素朴だが、内面には暗さを隠し持っているという部分を容赦なくえぐる役割。
そして、漫画家は、サンドバッグであり、和ませ役。
一見、ほのぼの空間のあかね荘だが、実は、みね子の内面的成長及び変化をもたらすジムのような場所なのではないか。
「高度成長とか言って 浮かれてるんだからさ」
鈴子さんは、「とか言って」という斜めに見た言い方をよくする。
4話では、「東京オリンピックとか言って」と言っていた。
高度成長とか、オリンピックとか、となにかと斜めに見たがる視聴者の代弁であろう。とか言ってみたりして。
ビートルズがやって来る
宗男の髪型が、すっかりマッシュルームカットになっている。ビートルズに影響されているのだろう。
どうやって毛先を絶妙にカールさせてるんだろう。
田舎では、この髪型は、そうとう数奇な目で見られそうだと、余計なお世話ですが心配です。
世界的なロックスター・ビートルズは、1966年、6月30日、7月1日、2日に武道館でコンサートを行った。
余談だが、国中が熱狂した祭りの様子を、コンサートの前後、来日から離日するまでの102時間(5日間)を、その裏側やビートルズを取り巻く状況を、数人のチームで、くまなくレポートして(ビートルズの止まっていたヒルトンホテルの一室を取材部屋にして作業したらしい)、熱狂さめやらぬうちに「ビートルズ・レポート」として出版したのが、ジャーナリスト・竹中労だった。ライターを生業とする筆者としては、ビートルズ当人よりも、こういう仕事をした人に興味がいくが、話が逸れるので、これくらいにしておく。
「ひよっこ」では、ビートルズ来日がどう描かれるのだろうか。鈴子が、「ビートルズ」に、「とか」をつけるかつけないか気になる。
(木俣冬)