日米の株式市場の時価総額上位を比べると、その業容は大きく異なります。この20年間で大きく変化した米国に比べ、日本はその顔ぶれがほぼ20年前と同じ。これは、わが国でイノベーション(経済発展の技術革新)が起こっていないことの表れなのです。

今月の知りたがりテーマ 20年前と変わらない時価総額上位

月末、米国ナスダックに上場するアマゾン・ドット・コムの株価が一時1000ドルを突破しました。ネット通販最大手の同社は、今ではクラウド事業や中小企業向け金融も手がけています。

1997年の上場時、同社の株価は2ドルにも達していませんでした。しかし、その後 20 年で株価は500倍に。通販市場で大きなシェアを占めるだけでなく、自前で輸送網を生み出すなど、成長期待が大きいことの表れです。

時価総額ベースでは、トヨタ自動車の約3倍にもなります。米国内では、アップル、旧グーグルのアルファベット、マイクロソフトに次ぐ4位です。上位には、ITやインターネット企業が並んでいます。ちなみに、米国の約 20 年前の時価総額上位は、エクソンモービル、ウォルマート、GE、AT&Tなど、重厚長大産業やインフラ企業ばかり。現代のランキングとはまったく異なります。それだけ米国ではイノベーションが生み出されてきたといえるでしょう。

一方、日本はどうでしょうか?約 20 年前の時価総額上位企業は、NTT、三菱銀行、日本興業銀行、住友銀行、トヨタ自動車と続きます。それが現在は、トヨタ自動車、NTT、NTTドコモ、三菱UFJフィナンシャル・グルー プ、ソフトバンクと、ソフトバンク以外はほぼ変わらない業種と企業です。なお6位以下には、KDDI、日本郵政、ゆうちょ銀行が続きます。

日本の上位は元国営会社ばかり。お隣の中国に似た顔ぶれともいえるかもしれません。

日米の企業の違いは、まさにプラットフォーマーとしてビジネスを生み出せたかどうかです。このままの状況が続けば、トヨタ自動車ですら自動運転技術を持った米国企業の下請けになりかねないと危惧する声も聞こえてきます。

株式投資は未来への投資でもあります。大企業だから大丈夫という先入観をそろそろ捨てる必要がありそうです。

Masumi Sai 崔 真淑 Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している。