完結「リバース」がイヤミスではなかった件、何がリバースしたのか

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湊かなえ原作のドラマ「リバース」が最終回を迎えた。

「読んでイヤな気持ちになるミステリー」、原作は“イヤミス”と言われている。イヤな気持ちになるのに、なぜ今作は人を惹きつけるのか。それは、共感にあると思う。

人を殺しまくるだけの殺人鬼には共感はできないが、未来を守るために血痕を谷底に捨ててしまった谷原(市原隼人)と浅見(玉森裕太)。警察よりも先に父親に電話してしまった村井。この行動に全く共感出来ないという人は、おそらくいないはずだ。

どこにでもいそうな普通の人間の、普通の見栄や保身から生まれる嘘と欺瞞が、大きな出来事に結びついてしまう。だから悲しいし、見ている人間は考えさせられる。


広沢の死の真相


10年前、車は鍵が挿しっぱなしだったため、窃盗団に盗まれてしまった。広沢(小池徹平)は、その瞬間を目撃するが、一人では止めることができなかった。さらに、深瀬(藤原竜也)がコーヒーに入れた蕎麦のハチミツで、アナフィラキシーショックを起こしてしまう。窃盗団はそんな広沢を見殺しにしていた。

事故を起こしたのは窃盗団だった。崖から車を突き落とし、火をつけて証拠隠滅を図った。現場に残された血痕も、テントウムシのキーホルダーも、全て窃盗団のものだった

直接的な死因は、転落死だったものの、アナフィラキシーショックを起こさせてしまったのは深瀬だ。車のカギを挿しっぱなしにしたのは浅見、車を置いていこうと言い出したのは谷原。ムリヤリ呼び出した村井(三浦貴大)だ。

窃盗団が広沢を見殺しにさえしなければ、こんなことにはならなかったかも知れない。10年前の4人は、保身のために広沢の飲酒を隠していた。だが、今は違う。罪を認めて広沢の母・昌子(片平なぎさ)と父・忠司(志賀廣太郎)に謝りに行くことを決意する。これは、タイトル「リバース」の意味、再生や生まれ変わりと言ってもいい。

「なんで、由樹が死ななきゃならなかったん。あんたらの誰かが死ねばよかったんよ。なんなん今さら、それが何になるんよ」

昌子は、4人を許すことはできなかった。のちに、小笠原(武田鉄矢)に「由樹は、許してやってくれっていうんやろけど、私は許せん」と、語っている。

これは、美穂子(戸田恵梨香)が谷原家に謝りに行ったことと重なる。ホームに突き落とされて重体を負ったことを、谷原本人は許したが、妻の明日香(門脇麦)は許さなかった。

「七海(古田結凪)はあなたに親を奪われるところだったんですよ」

昌子も明日香も、人を許す事が出来なかった。2人が怒りを表す様は、深瀬ら4人と美穂子にとっては辛い場面になった。許してもらうつもりはなかったのかもしれないが、それでも視聴者としてはショッキングなシーンだった。

最終回は“イヤミス”ではなかった


だが、前述した通り「見栄や保身」が“イヤミス”の定義だとしたら、これはイヤミスではない。ドラマ版は「リバース」を広義に解釈し、希望を付与した。最終回で登場した人物は、昌子と明日香含め、全員が自分の為ではなく、他人の為に動いたからだ。だからこそ、新しい自分に生まれ変わり、新しい人生を切り開くきっかけを掴む事が出来た。


広沢の父・忠司の懐の深さのおかげで、4人はまたお墓参りに行くことが出来る。これを繰り返すことで、いつか昌子も許すことが出来るはずだ。その時初めて、全ての人間の人生が好転、「リバース」すると言えるだろう。(沢野奈津夫 イラスト/Morimori no moRi