決勝までの休憩時間に、引率で来ていた日本工学院専門学校の教員の方にお話を聞いてみました。

「学校の中でもこの大会が浸透しつつあります。8の字巻は基本の技なんですが、ただ練習するより何か目標があったほうがモチベーションにつながりますからね」と、本大会の意義を強調していました。

また残念ながら予選落ちしてしまった生徒さんは、「かなり練習したんですけど、本番は緊張しました。でも楽しかったです」 なんとも初々しい!

■3本を1分で巻く人も! はたして優勝者は?

午後はいよいよ決勝戦。予選会を勝ち抜いた3名と、昨年の上位入賞者3名、計6名で争われました。決勝は20mのケーブルを3本巻きます。

さすが決勝、みなさん速い! 3本を1分ちょっとで巻く人も。もちろん速さだけではなく、美しさも重要なポイント。見事な手さばきでケーブルを巻いていきます。

6名から上位2名が最終決戦へ。残ったのは神尾さんと村上さん。採点は3名の審査点数の合計から、かかった秒数を引いた数が得点となります。

そして優勝者は、ベテランの神尾将也さんに決定! 笑顔で握手を交わす2人。準優勝の村上さんには、副賞としてBoseのBluetoothイヤホンが贈られました。決勝で惜しくも敗れた4名にも、日本音響家協会監修「プロ音響データブック」(リットーミュージック社)がプレゼントされました。

優勝者の神尾さんにお話を聞きました。なんと、この道28年のベテラン。

「ここ4〜5年は現場じゃないのでほとんど巻いていないんですが、昔のクセというか感覚でやりました。賞金の10万円は……うちの部署のメンバーで飲みにでも行きましょうか」

普段は劇場やホールの舞台設備、照明、音響などを扱う「株式会社パシフィックアートセンター」にお勤めされているとのこと。舞台技術の業界では有名な会社です。

昨年も準優勝だった村上さんは、楽器の卸問屋で有名な「神田商会」にお勤めの方。

「最終決戦はちょっと丁寧に巻き過ぎたかな。かといってスピードあげると汚くなっちゃうので、バランスが難しいですね」とおっしゃっていました。

最後に、主催者の日本音響家協会会長・八板賢二郎さんに感想をお伺いしました。

「出演する俳優やアーティストをより良く見せるのが音響の仕事。私たちは目立っちゃいけないんです。でも今日はその逆で、オモテに出ようと。まあ遊びというか、お祭りも必要ですからね。まだ正式決定ではありませんが、来年は2月に開催する予定です」

地味ながらも毎年じわじわと広がりつつある「マイクケーブル8の字巻グランプリ」。プロの音響技術者だけでなく誰でも参加できるので、興味がある方はぜひ来年の大会にチャレンジしてみてください。

取材協力:一般社団法人 日本音響家協会
取材:村中貴士/ イベニア