「絶対王者」モーリスが引退し、混迷を極めるマイル戦線。そんななか、春シーズンのマイル王を決めるGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)が行なわれる。

 国内外のGI通算6勝、そのうち4つのタイトルをマイル戦で獲得したモーリス。同馬が引退したことで、この路線の確たる主役はいなくなった。今週末は、その空いた席を誰が奪うのか、という一戦となる。

 とはいえ、レースの行方を占うのは難しい。2014年のGI皐月賞(中山・芝2000m)を制し、前哨戦のGIIマイラーズC(4月23日/京都・芝1600m)を勝ったイスラボニータ(牡6歳)が絶好調のルメールが乗ることもあり最有力候補に挙げられるが、その前走は同馬にとっておよそ2年半ぶりの勝利だった。それだけ勝ち味に遅く、今回も取りこぼしてしまう可能性がある。

 これに続くのは、GI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)2着のステファノス(牡6歳)に、同5着のアンビシャス(牡5歳)、現在5連勝中のグレーターロンドン(牡5歳)や、昨年のクラシックで健闘したエアスピネル(牡4歳)といったところだろうか。しかし、どの馬もGI未勝利で、ここ一番での強さに疑問が残る。

 GI馬であるレッドファルクス(牡6歳)も、タイトルを手にしたのは昨年のGIスプリンターズS(2016年10月2日/中山・芝1200m)。マイルの舞台でも同じパフォーマンスが発揮できるかは未知数だ。さらに、昨年の覇者ロゴタイプ(牡7歳)は、安定感に欠けてアテにしづらいタイプ。絶対的な信頼は置けない。

 王者不在で、まさしく混戦模様の安田記念。見方を変えれば、荒れそうな”匂い”がプンプンする。であれば、過去の歴史を参考にして、混戦の中で台頭する「穴馬」を探してみたい。

 最近の安田記念を振り返ってみると、この舞台での適性、つまり”東京マイルの適性”の高さが重要であることがわかる。

 例えば、2015年。2着に入ったヴァンセンヌは、この年の2月にGIII東京新聞杯(東京・芝1600m)を制していた。同馬にとってキャリア初のGIだったが、そこできちんと力を出せたのは、この舞台への適性があったからだろう。

 さらに、このとき12番人気ながら3着に入ったクラレントも、誰もが認める「東京マイル巧者」だった。東京新聞杯、GIII富士S(東京・芝1600m)を勝っており、この条件での実績は十分すぎるほどあった。

 このレースで、たびたび穴をあけたグランプリボスもそうだ。2012年に13番人気で2着、2014年には16番人気で2着と波乱を起こした同馬だが、そもそもGINHKマイルC(東京・芝1600m)の覇者である。好不調の波が激しいタイプだったゆえ、直前の成績によって大きく人気を落とすことが多かったが、得意の東京マイル戦ではその下馬評を何度も覆(くつがえ)してきた。

 こうしたことから、狙い目となるのは、東京マイルの適性が高い馬だ。



東京マイルを得意とするクラレント そういう意味では、先に名前が挙がったクラレント(牡8歳)は申し分ない。前走のGII京王杯スプリングC(5月13日/東京・芝1400m)でも11番人気で2着に入って穴をあけた。

 すでに8歳と、年齢的にやや狙いにくい面があるが、その辺りが嫌われて今回も人気が上がりそうもない。勝ち切るだけの力があるかどうかは微妙だが、馬連や3連単のヒモとしては面白い存在ではないだろうか。

 他に、コース適性で名前が浮かぶのは、ブラックスピネル(牡4歳)とヤングマンパワー(牡5歳)だ。2頭とも、ここ最近の東京マイルを舞台とした重賞の覇者である。

 ブラックスピネルは、今年2月の東京新聞杯を逃げ切り勝ち。スローペースを見越して逃げの戦法をとった騎手の好判断が光ったとはいえ、今回も人気が予想されるエアスピネルなどを振り切った地力は大いに評価できる。

 前走のマイラーズCでは4着に敗れたが、ここでは逆にスローペースの中で後方からの競馬となり、ポジションの悪さが影響した。評価を落とすのは早計で、この結果でむしろ人気が落ちるなら、思い切って狙ってみるべきだろう。

 ヤングマンパワーは、昨年10月の富士Sを難敵相手に快勝している。条件馬だったときも東京マイルのレースで好時計を出して勝っており、コースへの適性の高さは相当なもの。こちらも、前走のマイラーズCでは3着だったが、得意舞台に変わって大仕事をやってのけてもおかしくない。

 さて、コース適性以外からも安田記念で穴をあけそうな馬の傾向を探ってみたい。過去10年の結果を見てわかったのは、6歳馬の強さだ。4勝を挙げ、2、3着に入って奮闘している馬も多い。

 その中で穴をあけた馬に注目してみると、実績がありながらも近走の成績不振により、人気を落としていたケースが多い。昨年の勝ち馬ロゴタイプはその典型。皐月賞馬でありながら、長らく勝利から遠ざかっていたことで8番人気の低評価だった。

 先述した2015年3着のクラレントや、2014年2着のグランプリボスも同様だ。皆、実績馬であったにもかかわらず、直前では不本意な結果が続いていた。しかも、勢いのある4歳、5歳馬が台頭する中で、6歳という年齢が懸念されて人気を落としていた。

 その視点から浮上するのは、サトノアラジン(牡6歳)だ。

 同馬は昨年、GIIを2勝。GIマイルCS(2016年11月20日/京都・芝1600m)では1番人気に支持された実力馬だ(結果は5着)。春の安田記念でも3番人気で4着と健闘している。

 しかしながら、マイルCS以降は結果を残せておらず、今回は人気落ち必至。6歳馬で、実績がありながら不人気という過去に好走した伏兵馬の例にならうなら、この馬の一発にかけてみるのも悪くないだろう。 王者の座を狙って、各馬がしのぎを削る安田記念。モーリスの次を担うような”絶対王者”が現れるのか。あるいは、混戦の中で思わぬ馬が激走して大波乱を起こすのか。東京競馬場GI5週連続開催の締めくくりとなるレースを大いに楽しみたい。

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