日本ダービーも終わり、今週末のGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)で6週連続開催となった春のGIシリーズもひと段落する。

 その安田記念、昨年の勝ち馬ロゴタイプ(牡7歳)をはじめ、昨年のマイルCS(2016年11月20日/京都・芝1600m)2着馬で、前走のGIIマイラーズC(4月23日/京都・芝1600m)で久しぶりの勝利を飾ったイスラボニータ(牡6歳)など、今年も実績のある好メンバーがそろった。ただ、日本のマイル戦線は今ひとつ新陳代謝が進んでいるとは言い難い。その間隙を突いて、虎視眈々と頂点を狙っているのが、香港からやって来る2頭の”刺客”だ。


2年連続で安田記念に挑むコンテントメント 1頭は、昨年に続いて2年連続の出走となるコンテントメント(せん7歳)。前走のチャンピオンズマイル(5月7日/シャティン・芝1600m)では、昨年のクイーンズシルバージュビリーC(2016年2月28日/シャティン・芝1400m)以来、2度目のGI制覇を達成。香港の生え抜き馬で、ハイレベルな香港マイル戦線において常に上位クラスで奮闘してきた。

 昨年の安田記念では、12頭立ての9番人気でしんがり負けを喫した。しかしこれは、前年の10月から参戦したシーズン中に9戦を消化した疲労の蓄積が、初の海外遠征によって表面化したもの。現に、レース当日の馬体重は前走比マイナス約21kgと、とても結果を出せる状態にはなかった。

 そして今年、昨年10月からのシーズン中に消化したレースは10戦と、昨年よりも1戦多く使われている。とすれば、安田記念に向けての余力があるのかどうか、昨年と同じ失敗を再び繰り返すのではないか、という懸念が残る。

 だが、今年は昨年の汚名返上が期待できる3つの強調材料がある。

 ひとつは、この馬の”運”が今、上昇していることだ。前走のチャンピオンズマイルにしても、まさにタナボタ的な勝利だった。

 同レースでは、今年の香港4歳三冠シリーズを総なめしたラッパードラゴンが断然と思われていた。ところが、同馬は3コーナーで故障を発症し、競走中止したのだ。しかも、パンパンの良馬場に近い状態にありながら、レースの勝ちタイムが1分35秒23と遅く、コンテントメントにとって都合のいい流れとなった。

 さらに、この勝利によって国際レーティングがアップ。わずかに足りなかった安田記念へのフルパッケージでの遠征費用補助を全額手にすることができた。そうして、無理のない遠征が可能になったのだ。

 ふたつ目は、日本に到着してから調整過程である。来日スケジュールは昨年と同様で、レース前週の火曜日に到着。この月曜日までは、千葉県白井のJRA競馬学校で調整が行なわれてきた。

 その間、昨年は長くても2000m、おおむね1400m〜1800mのキャンターに終始していたが、今年は3000mに及ぶ長いキャンターを連日消化している。それだけハードな調教をこなせているということは、昨年よりも明らかに状態がいい証拠だ。

 3つ目は、日本でも有名なジョアン・モレイラ騎手が鞍上を務めること。同騎手は、今年もすでに海外GIで数々の栄冠を手にしてきた。日本調教馬も、UAEのGIドバイターフ(3月25日/メイダン・芝1800m)を制したヴィブロス、香港のGIクイーンエリザベス2世カップ(4月30日/シャティン・芝2000m)を勝ったネオリアリズムが、彼の手腕によってタイトルをつかんだ。その「マジック」と称される騎乗ぶりは、もはや説明不要だろう。

 今回は、主戦のブレット・プレブル騎手が母国オーストラリアに帰らなくてはいけない事情があっての乗り替わり。とはいえ、もともとモレイラ騎手が騎乗していた時期もあり、この馬の特性は存分に知り尽くしている。味方のときは頼もしいが、今回は日本馬にとって脅威になることは間違いないだろう。

 もう1頭の”刺客”は、ビューティーオンリー(せん6歳)。昨年末のGI香港マイル(2016年12月11日/シャティン・芝1600m)の勝ち馬で、前走のチャンピオンズマイルでも2着と好走した。こちらも香港GI2勝の実績を持ち、香港マイル路線ではトップレベルの馬だ。

 昨年勝った香港マイルでは、1分33秒48という勝ち時計をマーク。香港と日本の馬場差から、これは日本の馬場での1分32秒台に相当する。実際、香港調教馬は日本に来ると1秒は時計を詰めてくることが多く、今年の安田記念のメンバーなら1分32秒48で走れば、十分に勝ち負けの計算が立つ。第一、香港マイルではロゴタイプやサトノアラジンを一蹴している。

 そもそもこの馬に関しては、アンソニー・クルーズ調教師が昨年春の段階から「東京競馬場での適性を感じる。将来的には安田記念へ」と漏らしていた。2006年の安田記念をブリッシュラックで制しているクルーズ調教師が今年、それを実現。それだけ勝算があってのことだろう。

 また、今シーズンからは日本のことをよく知るザカリー・パートン騎手が主戦を務める。そして彼も、「この馬は硬くて、速い馬場が合う。東京でもいい勝負ができる」と太鼓判を押す。

 今回の遠征について、当初同馬のオーナーは乗り気ではなかったという。それが、クルーズ調教師とパートン騎手の説得によって、参戦が決まった。彼らとしては、当然手ぶらで帰るわけにはいかない。つまり、彼らがそれだけ”本気”だとも言える。

 来日後は、1週間ですでに2本の追い切りを消化。コンテントメントと同じく、ビューティーオンリーも順調だ。同馬に帯同し、日々の調教に跨(またが)るコディ・モー助手はこう言って笑顔を見せる。

「左回りもまったく問題ない。とにかく順調でハッピー。何ら不安はないし、レースが楽しみで仕方がない」

 モー助手は、2005年の安田記念とスプリンターズSの際にも来日。スプリンターズSではサイレントウィットネスで勝利を飾っている。 安田記念で香港馬が猛威をふるっていた頃から久しいが、今年の2頭は国際GIを勝ってきた香港を代表するマイラー。モーリス級の主役を欠く今の日本のマイル戦線なら、かつてのような活躍があっても不思議ではない。軽視は禁物である。

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